やさしい生物学

カビの話 発酵と腐敗

カビとは学問用語ではない。
外見的な形態によって一群の菌類に対して与えられた一般名称。
キノコやイーストという名称と同様に、分類学的な意味はもたない。

日本の梅雨ごろの湿度の高いとき、いわゆる〈かびる〉といった現象を起こす菌類(主として糸状菌)を指す。

菌類は分類学上、鞭毛菌類、接合菌類、子嚢菌類、担子菌類、不完全菌類の5つに大きく分けられるが、
カビといわれるものはこの各グループの大部分に含まれている。

乳酸菌とは
糖を分解して乳酸を産生することによってエネルギーを獲得する細菌の総称。
乳酸菌は、食品工業、発酵工業の分野で、乳酸飲料、チーズ、バターなどの生産
その他に関与しており、糖を分解して主として乳酸を産生する細菌をすべて乳酸菌と呼ぶ傾向がある。

少し専門的になるが たとえば、ビフィズス菌属 Bifidobacterium は、
分類学上は放線菌目アクチノミセス科に属しているが、乳酸菌製剤として市販されている。

酵母とは
通常の生育状態が主として単細胞で、出芽または分裂により増殖する菌類の総称。
酵母菌ともいう。
いずれも分類学上の用語ではない。
子嚢胞子を形成する○○(あまり専門的なので省略)などは子嚢菌類に由来し、
冬胞子を形成する◇◇(こちらも専門的なので省略)などは担子菌類に由来すると考えられている。
また、胞子を形成しないため、その由来の明らかでないカンジダ Candida 
のような無胞子酵母がある。

酵母の生化学的特徴はアルコール発酵に見られ、
ブドウ酒、ビール、日本酒などの酒類の醸造に用いられている。
発酵にともない炭酸ガスを生成するので、
この性質はパンの製造に用いられている。
 パン酵母(イースト)  サッカロミセス・セレビジェ
 日本酒酵母  明治28年 サッカロミセス・サケ・ヤベ

酵素(enzyme)は、キューネが1878年に、酵母(zyma)のなかにあるという意味でつけられた。
といっても、酵素は発酵の働きをする酵素だけではなく消化酵素もある。
あの血友病の凝固因子のうちのいくつかはまさしく酵素である。
ホタルの発光でも、ルシフェラーゼという酵素が活躍する。
(酵素とは、生物の細胞内でつくられるタンパク質性の触媒をさす)

ビールの醸造過程     日本酒の醸造過程

パンについての話     焼酎の話     豆腐ようとチーズ

納豆     味噌と醤油     魚醤

酵母菌はすばらしい。
 酸素がないところで アルコール発酵
   C6126→2C25OH+2CO2+2ATP
 酸素があるところで われわれ人間と同じ酸素呼吸
   C6126+6H2O+6O2→6CO2+12H2O+38ATP
ATPって、エネルギーの貯金、つまりエネルギーのお金ですね。これが多いと金持
ち。いざというときエネルギーを発揮できる。

酵母菌は、(酸素の少ない)醸造過程の中で、無理無理アルコールを作らされている。
人間なら5%のアルコールでも楽しく酔っぱらえるのに、酵母菌は殺人的30%の
アルコール濃度でも酔わない(?)
しかし、酸素が沢山あると、アルコール醸造なんてやめて、人間と同じように糖を
分解してせっせとエネルギーを生産し、仲間を増やす。

酵母のライフスタイル
単細胞で丸い形をしている酵母は、雄型と雌型のものがある。
雄型と雌型の酵母はいちおう接合し二倍体となる。この二倍体は出芽増殖する。
つまり親細胞の一部から芽を出すようにして、自分と同じ形質をもった子細胞を作るが、
その子細胞は最初は親細胞につながったまま成長し、十分大きくなったら親細胞から
離れていく。独立した子細胞は今度は親細胞となって、子細胞を生み出す。
こういうことを繰り返して、あっという間に酵母は増えていく。
ところが酵母の場合は、雄型と雌型の酵母(一媒体)でも同じように出芽増殖する。
そして、雄型酵母も雌型酵母も接合した酵母も、みな無限に出芽増殖でき、発酵作用
が可能である。つまり、酒を作ったりパンを膨らませることができるのだ。
餌となる糖を食い尽くした接合酵母(交雑体酵母という)は、細胞内に1〜4個の
胞子(一媒体)を作る。この胞子を作った接合酵母(交雑体酵母)は生涯を終える。
この胞子は栄養条件が整った環境におかれたら、殻がやぶれて雄型酵母や雌型酵母と
なって出てくる。これらの雄型酵母や雌型酵母が接合すれば再び交雑体酵母となる。
普通の有性生殖の場合、雄型と雌型の酵母(一媒体)が一緒になり(受精)二倍体と
なって、その接合された酵母が親として、数個の胞子(一媒体)を作り、子孫に
命を伝えていくのだが、酵母の場合は、そのほかにも大きくなった胞子と言える
雄型と雌型の酵母(一媒体)だけでも、それぞれ出芽増殖できることが強みだ。
しかし、出芽増殖の場合は親細胞のクローンなわけだから、親にはない新しい形質を
もつことはできない。これに対して雄型と雌型の酵母(一媒体)が一緒になり(受精)
できた接合酵母(交雑体酵母)は二倍体であり、親にない形質をもつことができ、
環境の変化に生き延びる可能性がある。つまり進化の可能性を秘めている。
だから、酵母は無性生殖と有性生殖の間に存在する生物なのであろう。

チーズ
 フランスのカマンベールチーズやロックホールチーズの生産には青カビが利用されている。

カビ 菌類 学問的には必ずしもきちんと定義されている言葉ではないようだ。
また、この分野の研究はこれから進むことが考えられるので、本に書かれていることは
書き直されるだろう。
      
微生物の働きで人間の生活は、豊にもなるし、病気のもとにもなる。
腐敗と発酵。その判断は実は人間の勝手な物差し。微生物はそんなことを考えず、エネルギーを求めて自己の命を生きる


藻菌(藻類と菌類の中間的存在)
 ミズカビ(水中でハエの死体にはえる)
 ジャガイモのベト病菌
 糞などにはえるケカビ
 パンなどにはえるクモノスカビ
子嚢菌(子嚢の中に胞子がつくられ、これが発芽して菌糸を伸ばしてふえる)
 (2本の菌糸が接合するとき受精する)
 有用なもの
  酵母菌(パン・酒・ビール)
  アオカビ(ペニシリン)
  コウジカビ(味噌・醤油・酒)
 有害なもの
  サクラ・モモなどのテング巣病菌
  キリ・クワブドウのウドンコ病菌
 その他
  セミタケ・アミガサタケ(冬虫夏草 子臥菌類バッカクキン目の中の昆虫寄生菌)
担子菌(キノコから落ちた担胞子nは、発芽して菌糸をのばし、2本の菌糸が接合して
 2次菌糸2nとなり、キノコをつくる)
  食用キノコ
   マツタケ・シイタケ・クリタケ・ハツタケ・シメジ・ナメコ
  毒キノコ
   テングダケ・ツキヨタケ・ドクベニタケ
  植物に害を与えるもの
   クロボ菌(コムギ・オオムギなどに寄生)
   ムギのクロサビ菌・マツノコブ菌

   大胆な○○菌の分類(真菌と真正細菌) 

ある学者による分類
葉状植物は大きく3つに分けられる。(1.菌類 2.藻類 3.地衣類)
さらに 1.菌類は次のように分けられる。
 1a 分裂菌類【細菌、放線菌】
 1b.粘菌類
 1c.真菌類【カビ、酵母、キノコ】
         (小笠原和夫:カビの科学、地人書館)



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