化石の頁

            

 私は1981年8月から1982年10月まで構造工学の研究をするため、
ドイツ留学をしたのですが、もともと子どもの頃から 化石を見る趣味がありました。
上野の 国立科学博物館の恐竜化石など見るのが楽しみでした。   国立科学博物館友の会会員証
  国立博物館の本館のドーム    最近は英中韓の説明文も    恐竜    若者と恐竜
  国立博物館の新館   鳥類に近い恐竜デイノニクス   デイノニクス   同じく新館   アンモナイト

そういうことで当時の国立科学博物館の古生物の部長だった小畠郁生博士に手紙を書いて、
ヨーロッパの見るべき博物館リストを教えていただき、ドイツ滞在中にできるだけ
自然史博物館を見てきました。

もっとも日本にいても世界中から貴重な化石を借りて展示しているから
東京に行ったりすれば見ることができます。

その後ヨーロッパを訪れる機会もあり、博物館めぐりは続けてきたのです。
ドイツのフランクフルトのゼンケンベルク博物館や
バイエルンの山の中のアイヒシュテットの博物館や
シュツットガルトの南ホルツマーデンのハウフ博物館や
ベルリンのフンボルト自然史博物館を見たし、
スイスのバーゼル自然史博物館で海ユリ化石や魚竜化石をたくさん見てきたし、
ウィーンの自然史博物館も見てきた。

 昨年1996年10月には土木学会東北支部ヨーロッパ長大橋梁調査団の団長として
イギリスにも行ってきたので、自由時間を利用して  ロンドンの自然史博物館も見学してきました。

世界に貴重な始祖鳥の化石を見たかったからです。   ロンドンの自然史博物館HP

このロンドンの自然史博物館は、大英博物館に所蔵されていた
生物や化石などの標本を移転して開館されたものです。
建物が教会のようなネオ・ゴシック様式でとても立派です。

恐竜はなぜ滅びたのかというテーマを、子どもにも
わかりやすくしかも科学的に標本やテレビ画面を使って
上手に説明していたり、
イギリスいや世界で最初に恐竜の化石を見つけた学者の説明パネル
を整備したりして、実に丁寧に作られていると思いました。

恐竜を最初に発見したのはオックスフォード大学教授の ウィリアム・バックランド
そして 開業医ギデオン・マンテル夫妻でした。

バックランドが論文に書いたのはメガロサウルス。でも実際に
彼は発見したのではなかったようです。

メガロサウルスは1822年にオックスフォードシャーで発掘された最初の恐竜化石で
外科医のパーキンソンが、その大きな化石動物にメガロサウルスと命名したといわれます。
 当時のことだから、パーキンソンは、化石はノアの洪水の証拠と解釈していたようです。
この恐竜化石の科学的記載は2年後にバックランドがしており、メガロサウルスといえばバックランドということになっています。
(パーキンソン病はこのパーキンソンによって発見されたのです)
  (小長谷正明:医学探偵の歴史事件簿  岩波新書1474)

一方。マンテルはイグアノドンを自分で発見したのです。
(彼は1825年にイグアノドンを学術的に報告した)
しかし、第一発見者はマンテル夫人の方。

マンテル医師の妻メアリーは夫が往診している間、夫について行って
夫が診察が終わるのを外で待っていたそうです。
ある時その待っている間に、道路工事の砂利の中から
動物の歯らしいものを発見したと言います。

はたして夫に見せたら、これはすごいということになった。
夫もそこらを探したが見つからない。
それで工事現場の監督に
砂利をとった採石場の場所を聞いて、そこからイグアノドンの
骨や歯を発見したということです。

夫が化石採集の趣味があって、彼女も感化されたようです。
もともと科学に興味があった女の人だったのですね。
自然史博物館内に、このマンテル夫妻の写真が掲げられてありました。
ヨーロッパ旅行記(7)の45回目の記事に マンテル夫妻の写真を載せました。

しかし、
私が一番見たかった「始祖鳥」のオリジナル化石は
展示されていませんでした。
展示されていたのはコピーだったのです。
コピーだったら上野の科学博物館にもあります。こちらはデジタル画像
  2017年に上野の科学博物館で展示されたロンドンの始祖鳥化石をやっと見ることができました。

 世界で最初に発見された始祖鳥の化石は高い値段でロンドンに買われ
それがドイツ人に悔しく、
2番目に発見された始祖鳥化石は
ともかくドイツ政府が高額を出して買いとり、ベルリンに置いたという
話を聞いています。

   

アイヒシュテットの博物館ではオリジナル化石を見ましたが(アイヒシュテットの始祖鳥)
せっかく行ったベルリンでは始祖鳥のオリジナル化石を見られなかった
ので、ロンドンでも大事にして一般開放していなかったのかもしれません。

ベルリンの始祖鳥の標本は東京で読売新聞社が開催した展示会で見ました。
(昭和59年7月7日−10月14日 新宿駅南口のイベント広場)
これは本物だろうかと思うほどハッキリした化石で、羽根も見えました。
この展示会は、フンボルト大学創立175周年記念ということで、
他にも巨大恐竜ブラキオサウルスの展示がありました。

羽根の化石はミュンヘンの州立古生物収集館にもありました。
偶然、そこを訪れたら貴重な化石と一緒に見学できました。
(見学したので記帳ノートに私の名前を書いてきました)
この羽根の化石は羽根の特徴がきれいに残っているもので
反対側の化石はベルリンのフンボルト大学にあるそうです。

この州立古生物収集館には、ヴュルツブルクの偽化石(クモの巣の化石)もありました。
ヴュルツブルクの偽化石とは、ヴュルツブルク大学のベリンガー教授の真面目な化石研究
を友人がからかって、手作りの石膏製の化石を裏山に埋めて教授に発見させた事件です。
教授は発見した化石を本に出版した後(1726)、友人たちは教授の名前の入った化石を埋めて
また教授に発見させました。さすがの教授もだまされたことに気がついた。
教授をだました友人たちは大学を追放された。化石は、聖書にある神様の失敗作
あるいはノアの洪水の遺跡などと考えられた昔の時代ですから、現代なら考えられないこともあった。
そんな昔にもうドイツで化石を研究する人がいたのですから、ドイツの学問はたいしたもの。

始祖鳥の化石 はこれまでに確認されたものは5つです。
 ロンドンの自然史博物館
 ベルリンのフンボルト(大学)自然史博物館
 ゾルンホーフェンの博物館
 アイヒシュテットの博物館
 オランダのテイラー博物館(これは不完全品)
 だと記憶しています。

しかし、 文献「始祖鳥の化石」によると全部で7つです。
上にあげた他に、ゾルンホーフェンで発見された2体が
それぞれ個人の所有になっているようです。

2000年9月にドイツから送ってきた奨学財団の会誌に
始祖鳥の最新情報が載っていました。
第7番目の始祖鳥を買い取って、ミュンヒェンの博物館で公開しているとか。

つまり7つ全部を認定年代順に整理すると次のようになりそうです。
 ロンドンの自然史博物館 1861発見
 ベルリンのフンボルト(大学)自然史博物館 1876発見
 マックスベルクの標本 1956発見 個人の所有 1991から行方不明
 オランダのテイラー博物館(これは不完全品)1855発見(1970 始祖鳥と認定)
 アイヒシュテットの博物館 1951発見(1973 始祖鳥と認定)
 ゾルンホーフェンの博物館 1987認定
 ゾルンホーフェンの標本 1992発見 ミュンヒェン州立古生物博物館
 なお、羽根は1860に発見されている。(羽根の痕跡の岩石の片側はベルリンに、もう片側はミュンヒェンにある)

ここをクリックすると ドイツで発見された始祖鳥の産地地図が見られます。
2000年9月にドイツから送られて来た本に載っていたもので
カラーも入っていて鮮明です。

 鳥類は小型肉食恐竜から進化したというのは、もはや定説。
始祖鳥(ジュラ紀後期 約1億5000万年前)
最古の鳥類、体の造りから考えてあまり上手に空を飛べなかった と思われる。

しかし、始祖鳥と現代の鳥類の間を埋める鳥類化石があまり
発見されていなかった。飛行能力の進化を表す証拠が見つからなかった。

最近、中国、アルゼンチンなどから鳥類化石が次第に発見され、
進化のすき間が少しずつ埋まってきた。

スペインで発見された鳥類の化石(白亜紀後期 1億2500万年前)
最古の小翼が保存されていた。 エオアルラヴィス(暁、小翼、鳥)
小翼とは鳥の羽根の先端にあり、飛行を調整するのに役に立つ。
飛行機に例えると、小翼があると、低空で飛ぶとき翼の部分に起こる
空気の乱流を整え、飛行機が失速しないですむ。
発達した胸骨などからも進化した鳥と考えられている。
(子供の科学 第59巻第10号 1996.10)

こはくの中から世界最初の鳥の後羽化石が 発見された。
鑑定人ポール・デイビス
理学博士(国立科学博物館特別研究員)によると、この化石は約8700万年前
にも現在の鳥と似た羽毛を持った鳥が存在したことを証明する貴重な資料。

久慈琥珀博物館の佐々木和久館長が5年前に種市町の漁港工事現場から持ち
帰った約10キロのこはくの中から偶然発見したという。
工事現場の人から
「こはくが出ている」との情報をもらって、海岸付近の土を2メートルほど
掘ったところから出たもので、持ち帰って調査した。
(毎日新聞 1997年3月25日)

中国で発見された始祖鳥の化石

中国から密輸入された始祖鳥(孔子鳥)の化石

キルギスで発見された始祖鳥の化石

恐竜と鳥類の境界線 最新の研究 その1 その2(同じ著者によるものです)
鳥類と一部の肉食恐竜だけに見られる特徴:羽毛(外皮)、叉骨(骨格)、抱卵(行動)
飛べなかった恐竜、飛べた鳥類
約6500万年前の大絶滅を生き残れなかったのが恐竜、生き残れたのが鳥類
いやいや飛べたときが鳥類の起源なのではなく、鳥類の基本形の完成ではないのだろうか?

 身近なところでは岩手県立博物館や仙台の斉藤報恩記念館などに
化石が展示されていますが、
私の好みでは大船渡市立博物館が地元の貴重な化石を展示していて迫力があります。

やはり他所から発掘した化石をたくさん陳列されているより、
地元で採れた化石を見たほうが感動します。

金持ちが経済力で外国の珍しいコレクションを集めたものより、
そこの人々が自分の回りで心をこめて集めたもののほうが
血がかよっていると思うのです。

大船渡市立博物館には地元で発見されたシルル紀の化石が展示されている。
シルル紀のことを昔はゴトランド紀と呼んでいた。
私も高等学校で習ったのはゴトランド紀でした。

土木技術者と地質学

チャート(成因が長い間わからなかった堆積岩)

地球の温暖化とプレートテクトニクス(八木下博士の論文)

氷河期(高山植物と高山蝶)

ヴェゲナーの大陸移動説

ゴンドワナ大陸(国立科学博物館の大恐竜展)

アイソスタシーとホメオスタシス (地質学と生物学の似ている用語)

フォッサマグナとマグナカルタ

お雇い生物学者デーデルライン

山内丸山遺跡

公式ガイド世界最大の恐竜博2002 7/19(金)〜9/22(日)    世界最大の恐竜博2002レポート    驚異の大恐竜博2004レポート

恐竜博2005 3/19(土)〜7/3(日)     

ラスコー遺跡

博物館では、物を集め、分類研究し、整理する中で、
人間の生き方や思いも同時に収集しているのである。
(手書きのラベルのついた標本を見ると、それを作った人間のことがしのばれる)
博物館は直接展示するものの博物館だけではなく、それらを収集したり
整理したであろう人間の行いを示す社会史や人間史の博物館でもある。
国立科学博物館ニュース第358号の平朝彦東大海洋研究所教授の文章を
読んで私もそう思った。

技術史資料の保存の意義

国立科学博物館ニュース

  やさしい地学