中国の「孔子鳥」が日本の公立博物館5カ所に密輸入されていた

国内業者を通じ購入
展示取りやめ?

 中国政府が貴重な文化財として国外持ち出しを法律で禁止している古代の鳥の化石を、 大阪や茨城、愛知など国内の複数の公立博物館が購入し、収蔵していることが4日、 朝日新聞社の調べで分かった。これらは有名な始祖鳥に匹敵する鳥の先祖の化石である。 各博物館は「化石販売業者が中国側の許可を得ていると思った。問題ないという業者の 言葉を信じた」などと説明している。しかし、いずれも中国政府の公式な許可を得た 証拠はなく、不正に輸出された恐れがある。中には購入はしたものの、問題になること を懸念して展示を避けたり、取材後に急きょ展示を取りやめた博物館もある。 原産国の法に触れる資料を所持することについては、日本の法律には触れないが、 世界各国の博物館の国際ネットワーク「国際博物館会議(ICOM)」の定める 倫理規定に反しており、所管の文部省は近く各博物館から事情を聴く方針という。     問題になっているのはジュラ紀後期(約1億6千万年前〜1億4千万年前)か、 続く白亜紀前期(約1億4千万年前〜9千8百万年前)ごろに存在したとされる 「孔子鳥こうしちょう」の化石。1990年代に入り中国東北部の遼寧省で化石が 相次いで発見された。95年、中国の研究者が「鳥の先祖とされてきた始祖鳥より 現在の鳥に近い古鳥類」と発表。「鳥の先祖をめぐる定説を揺るがす大発見」として、 世界中にその存在が知られるようになった。  孔子鳥の化石を購入していることが確認されたのは、鳥取県立博物館(鳥取市、 購入98年4月)、大阪市立自然史博物館(同96年1月)、笠岡市立カブトガニ 博物館(岡山県、同95年12月)、茨城県自然博物館(岩井市、同93年12月)、 豊橋市自然史博物館(愛知県、同96年2月)の計5博物館。鳥取と大阪、笠岡は それぞれ2個、他は1個ずつ、いずれも国内の化石販売業者を通じて購入した。 価格は個々の標本の状態により異なり、約45万〜150万円だったという。このうち、 大阪市立自然史博物館の購入したものは中国から持ち出された年代が古いため 別の古鳥類の表記があるが、納入業者は「孔子鳥だ」としている。中国・国家文物局 によると、中国は82年に制定した国家文物保護法で[古脊椎動物」や「科学的価値の ある化石」の国外持ち出しを禁じており、孔子鳥もその中に含まれる。共同研究などの ために例外的に持ち出しを許可することもあるが、日本の博物館が購入した化石には 許可証などはついていないようである。 1982年より前に中国国外に持ち出されたものを日本で購入したのなら 法律的には問題はないだろうけど。それが後で孔子鳥だと判明したのなら。 孔子鳥 ドイツで発見された始祖鳥とほほ同じ時代に生きていた鳥類の先祖の一種。 ニワトリぐらいの大きさで、胸の骨が発達していて始祖鳥より飛行能力が高かった。 始祖鳥がくちばしがなくて歯があったのに対し、孔子鳥はくちばしを持ち、 歯はなかった。中国の学者が95年、「恐竜に近かった始祖鳥より現在の烏に近い鳥類だ」 と発表した。この鳥の化石の意義からして、中国を代表する思想家孔子にちなんだ名前が つけられたのか。  国際博物館会議(ICOM)の倫理規定 世界の約8千の博物館・個人が参加するICOM(本部・パリ)が86年の総会で 満場一致で採択した。資料の収集については、「直接・間接を問わず不法取引を 博物館が支持することは非倫理性大である」「原産地の法律に違反しないで取得 することを確信しないならば、資料の取得をすべきではない」「正規のものとして 保管・展示できないようなものを取得すべきではない」などと定めている。 資料を管理する博物館の国際的基準として位置づけられている。


(平成10年7月5日 朝日新聞を参考)