大陸が移動するという説を最初に唱えたのは、ドイツのヴェゲナーだった。
彼は独創的なアイデアで、今世紀のはじめに、この説をうちたてた。

その理由は、南アメリカの東側とアフリカの西側の海岸線の形がよく似ていること、
ペルム紀頃(約2億5000万年前)の氷河の跡や同じ種類の陸上動植物の化石が、
南アメリカ、アフリカ、インド、南極大陸などから見つかっており、
これらがひとつの巨大な大陸を作っていたとすれば、その分布がきれいに説明
できるからであった。

しかし、大陸を移動させる原動力が何なのかが説明できず、
やがてこの学説は忘れられてしまった。
(手塚治虫のジャングル大帝では、この大陸を移動させる力はアフリカにある
月光石に秘密があるとなっていた。手塚治虫の科学をとりいれる才能はたいしたもの。
1950年ころのことですから)

 その後、1960年代から1970年代にかけて、地球物理学や海洋地質学が進歩した
結果、大陸を動かすメカニズムが分かってきた。

地殻の下にあるマントルはいちおう固体だが、1〜数億年程度の長い時間スケール
で見ると、液体のようにゆっくりとした対流をおこしている。

地殻の一部である大陸はマントルより軽いので、その上に浮いており、
マントルが対流すると大陸もいっしょに移動することが分かった。

こうしてヴェーゲナーの大陸移動説はみごとに復活した。

 ペルム紀から三畳紀にかけての時代(約3億〜2億年前)には、
すべての大陸がひとつにまとまり、パンゲアとよばれる超大陸を形成していた。

その後、約1億7000万年前頃(ジュラ紀中期)にパンゲアは分裂を始め、
まず南北ふたつのブロックに分かれた。

それはジュラ紀の終わり頃(約1億50社万年前)だった。
北側のブロックがローラシア大陸で、現在の北アメリカ、アジア、ヨーロッパ
が含まれる。

南側のブロックがゴンドワナ大陸で、アフリカ、南アメリカ、オーストラリア、
南極大陸、インドなどが含まれる。

ローラシアとゴンドワナの両大陸はその後も分裂と移動を続け、
現在にいたっているのである。

 陸上に生息している動物の分布は、大陸の移動に直接影響を受ける。
陸がつながっていれば、同じ種類の動物は分布を広げ、その進化も全大陸的に
進む。

しかし、大陸が分裂すると、陸塊ごとに分断された種族はその中だけで独自に
進化が進むため、時間とともに次第に異なった種類が出現してくるのである。

 恐竜は三畳紀の終わり頃(約2億3000万年前)、つまり超大陸パンゲアの時代
に出現し、ゴンドワナ大陸の時代を経て、ほぼ現在と同じ大陸に分裂し
白亜紀の終わり(約6500万年前)に絶滅した。

したがって、はじめは世界中どこへ行っても同じような種類が生息していたのが、
しだいに地域ごとに異なった進化をするようになり、大陸ごとに違う恐竜が生息し、
やがてすべて絶滅したのである。

 恐竜の研究は、1822年に世界ではじめて公式に恐竜の名前がつけられて以来、
170年以上の歴史があるが、その多くはヨーロッパ、北アメリカ、アジアの化石
であった。

つまり、私たちがよく知っている恐竜の歴史は、ローラシア大陸の恐竜を中心に
編まれたものである。

一方、ゴンドワナ大陸の恐竜の研究はこれまであまり進んでいなかったのだが、
1980年代の後半以降、とくに1990年代に入ってからは急速に進んだ。

そして、ローラシア大陸の恐竜を中心に編まれた従来の恐竜の進化史を、
これらの成果によって検証することができるようになった。

これらの研究成果を国立科学博物館では特別展示により公開することになった。

パンゲア超大陸 → ローラシア大陸、ゴンドワナ大陸
 ローラシア大陸 → 北アメリカ、アジア、ヨーロッパ
 ゴンドワナ大陸 → アフリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸、(インド)

 

大恐竜展
失われた大陸ゴンドワナの支配者
平成10年7月11日−10月11日
国立科学博物館

大恐竜展の速報

恐竜とほかの爬虫類との違い