アイソスタシーホメオスタシス (地質学と生物学の似ている用語)

アイソスタシー

地殻がマントルの上に浮力によってつり合っている状態をさす。
地殻の均衡ともいう。

 1850年ころインドにおいて測定された鉛直線偏差は、
ヒマラヤ山脈の質量分布から予測される値と大きく異なり、
ゼロに近い値をとった。ヒマラヤ山脈のような大きい質量分布があれば、
ジオイドはその上でもり上がり,鉛直線偏差は山麓において
大きい値をとるはずであるのに。

 アイソスタシーはこの事実を説明するために考案された地殻・
マントル構造モデルである。

 エアリー(1801‐1892)は、海水に浮かぶ氷山が海面上に
現れている部分は小さくても、海水中に隠れている部分は大きく、
浮力によってつり合っていることを例に、これと同じように、
ヒマラヤの比較的密度の小さい山体は,比較的密度の大きい(溶岩)の
上に浮いていると説明した。つまり、地殻はマントルの上に浮いている
という考え方である。

 たとえば人工衛星の軌道は重力異常の存在によって摂動を
受けるので、逆に摂動を観測することによって重力異常を求めることが
できる。もしアイソスタシーが成立していなければ、人工衛星重力異常
はヒマラヤ山の上で数百mGalに達することが予想される。しかし
実測された人工衛星重力異常の値はきわめて小さく、山体の影響
がみられないことから、この説の妥当なことが証明されている。

 地球全体としてはアイソスタシーの状態に向けて作用していると
考えられている。スカンジナビア半島の隆起やカナダ東部の
ローレンタイド隆起は,氷河期におおわれていた氷床が溶けて、
その荷重から解放された地殻とマントルが、新しいアイソスタシー
の状態をとり戻そうとする回復運動であるとみなすことができる。

ホメオスタシス

生物の生理系(たとえば血液)が正常な状態を維持する現象を意味する
言葉で,(等しい)とか(同一)という意味の homeo と,(平衡状態)
(定常状態)の意味の stasis を結びつけて,アメリカの生理学者
キャノンが1932年に提唱した言葉。
恒常性とも訳される。

 直接外環境の変動にさらされているバクテリアや単細胞の動植物と
ちがって、多細胞生物は体表に外被(皮膚,樹皮など)があり、
体内に体液、樹液があるので、細胞にたいする外界の影響は
多少とも間接的なものになっている。

 多細胞生物の細胞にとっては、生体内の液体が直接の環境であり、
その恒常性を維持することは、細胞が正常にはたらくために
有利な条件である。

 動物の体液について、このような恒常性の重要性を最初に指摘したのは、
フランスの生理学者ベルナールであり、体液を内部環境と呼んで、
その固定性を生物の独立生活の条件とみなした。

彼の概念をキャノンがホメオスタシスという語で生体の一般的原理として
発展させたのである。

 多くの多細胞動物は、内部環境である血液の性状、すなわち酸素、
二酸化炭素、塩類、ブドウ糖などの濃度やpH、粘度、浸透圧、血圧などを
一定の範囲に保つ調節能力を備えている。

 また定温動物では,体温を調節する機構が発達している。

 このような調節は,一般に神経とホルモンによって行われ(神経性調節と
液性調節)、中枢神経系の中に特別の調節中枢が存在する場合が多い。

 たとえば,われわれの血液中の血糖濃度を低下させる
インシュリンと、血糖濃度を上昇させアドレナリンなどが、
拮抗的にはたらき、健康な人の血糖値を一定に保っている。

 定温動物の体温調節では、血液の温度や皮膚温の変化に応じて
間脳にある体温調節中枢が自律神経系を通じて、皮膚毛細血管の
拡張・収縮、皮膚の緊張・弛緩などを変化させて、体表からの
放熱量を調節させている。

 ホメオスタシスは元来上記のような個体の生理系の維持を
表す語であったが、その適用の範囲は生理学の分野以外にも
広げられ、生物系の種々の階層における安定した動的平衡状態を表
すのに使われるようになった。

 たとえば,生物群集における種の構成の安定性を生態的ホメオスタ
シスとよび、また、同種の個体群における遺伝子分布の安定した
平衡状態を遺伝子ホメオスタシス、発生過程で一定した表現型を
発現する現象を発生的ホメオスタシスという。

stasy も stasis も、釣り合いが保たれている状態をさす言葉であろう。
バランスがとれている状態を表す言葉だから、類似語のstatics(静力学)、
static(静的な)などの言葉があるのだろう。

エコロジー