建設環境工学通論 平成14年度 応用化学科&材料物性工学科3年生   教育に利用

通論というのはなかなか教えにくいもの。広範な内容の建設環境工学を
わずかの時間でかけあしで説明するようなものだから。
聞く方だって理解するのに苦労しそう。

第1回目

全体的な話
社会資本と土木工学

出席となるアンケートから こちらはまとめ

第2回目

土木の歴史

中世から現代まで、力学や橋梁を例に土木の歴史をざっとながめる。

出席となるアンケートから こちらはまとめ

第3回目

構造物の強さ

材料の力学的強度を実験によって説明し、さらにCGを使って水の入ったコップの変形を拡大して見せ、
橋の形をいくつか例にあげて構造形による応力の違いを説明している。

出席となるアンケートから こちらはまとめ

第4回目

黒四ダム建設 
厳冬 黒四ダムに挑む(プロジェクトX)のビデオは、強い印象を与えた。
昔の人はえらかった。今から45年くらい前の大土木工事。

出席となるアンケートから 感想文を紹介します。

第5回目

土木工学のユニーク性の論文を読ませて、問題に答える試験をした。
英語の履歴書を参考に、自分の履歴書を書く試験もした。

解答の中から 比較的よいものを紹介します。

第6回目

土と基礎
土の粒子のこと。骨格と間隙。
土の強度を高めるには、土の密度を上げることが大切。締め固め。
塑性力学による荷重載荷時の土の破壊面。すべり抵抗。
粘土層から短期間に水をぬくバーチカルドレーン工法。

次回は英語でこの通論のことを手紙に書く問題を出す。
そのためキーワードとなる建設環境工学の科目の英訳をいくつか紹介した。
さっそく質問があって、試験の時には辞書を持ち込み可能かと聞かれた。
試験なので英語の辞書の持ち込みは不可。しかし、事前に調べたノートの持ち込みは可。
11月27日は化学の学生は工場見学で欠席なので、そのとき試験はさけてほしいとの要望。

出席票に電子メールができるかどうか書かせたら、携帯電話もふくめて
たいていメールは使えることがわかった。
次回は練習のためメールで回答する宿題を出してみよう。

第7回目

地盤と災害
広域地盤沈下 降雨による斜面崩壊 地震による砂地盤の液状化

外力Q=骨格R+水圧U
地盤沈下の場合
 外力は不変 地下水の汲み上げによる水圧低下
 骨格にかかる力が増加 バネモデルのバネが縮み地盤沈下
 地盤沈下は粘土層に起こる

斜面崩壊の場合
 すべり抵抗τr≧滑らせる力τb
 τr=C+(σ−U)tanφ
 C:粘着力 σ:土破壊面に作用する垂直応力 U:水圧
 tanφ:摩擦抵抗
 降雨により水圧が増加 骨格に作用する力の減少 摩擦抵抗力も減少

砂地盤液状化の場合
 地盤の振動により砂の粒子間がずれ拘束がはずれる
 骨格の受ける力Rはゼロとなる 土は液状化する
 水圧Uが増加して砂をまき込み地上に吹き出す
  地表面に近く砂層が厚く堆積
  砂がゆる詰めの状態
  地下水位が高く地表面に近い
 礫層は水が容易にぬけ水圧が消えるから液状化しない。

地盤沈下、斜面崩壊、液状化のビデオはわかりやすかった。
実験ビデオを使ったりアニメ表現がよかったようだが、
簡単な式を用いたのも理解の助けとなったと思う。

地盤の安定を公式で説明していたが、土の種類によりRの数値も変わるようなので
そのときは数値をどう決めるのかという質問は、するどい。
簡単な公式で説明されても、実際の土は様々な材料要素から成り立っているので
設計時に数値をどう仮定するのかは本当は難しいこと。

11月27日は化学の学生は工場見学で欠席なので、見学レポートを英語で書いて提出。
他にも英語の試験を全員にすると言ったら、なぜ英語なのかという質問があった。
英語の文献を読んだり、海外に行って仕事をすることもあるから。
公務員試験にもでるし、会社の入社試験にも出ます。
そして、実は来年にありそうな留学生のための概論の準備にしたいからなのです。

A22 B9 O11 AB1 化学
A14 B14 O10 AB1 材料
日本人の平均  A型40% O 型30% B 型20% AB 型10
電子メールは携帯でもいいから、少しずつ宿題を出してみよう。

第8回目

構造力学入門 公務員試験問題を例に
応用化学科は工場見学なので、材料物性工学科学生のみ対象

力学の他に数学や測量の問題も紹介したら なかなか評判が良かった。
つまり演習的な内容なので、勉強したという実感があったのだろう。

第9回目

水の循環
このビデオは、川の洪水などの防災面と、水道や下水などの水質の面を
扱っている。そのため少数の者がわかりにくいという感想を書いた。
しかし、大多数はこのビデオの淀川水系(木津川、宇治川、桂川)の下流大阪市は、
上流から下水処理した水が流れてくるので、
その水を浄化しても厳しい状況であることを認識して、
盛岡の水がきれいなことを実感した。
応用化学科の学生は浄水場の見学直後だったので、このビデオはタイムリーだった。
水の汚れ具合で水生動物の種類が変わることに驚いた者もいた。それは常識です。

公害と環境ホルモン
学会の発表を優先して、社会の警告を後回しにする研究者
学会での業績という名誉心
カネミ油症事件
「その事実は知っていたが、学会で発表しようと思った」
最初は鶏の大量死 農水省の対応を厚生省は知らない。
米ぬか工場 パイプ穴からPCB入る。

1994韓国の電子部品工場 半導体を溶剤で清浄
従業員の3分の2 生殖障害症状 溶剤2ブロモプロパン

環境ホルモンでなくても、生殖・脳神経・免疫機能への影響があると問題

有機スズ化合物 巻貝イボニシ ペニスをもつ雌ばかり バイガイ
使用自主規制でバイガイ復活した秋田の海

先天異常の尿道下裂の男児を持つ母親の(ビスフェノールA)血中濃度が、
一般の妊婦より約2倍高いという実測結果。
尿道下裂児の母親30人と一般妊婦790人の血液採取
 1ミリリットル当り0.82ナノグラム 1ミリリットル当り0.4ナノグラム
ビスフェノールA:食器や缶詰の内側のエポキシ樹脂 女性ホルモン作用
(2002.11.29 新聞)

仏ヴィッテル市のミネラルウォーター「ヴィッテル」
ローマ皇帝ヴィッテリウスは痛風、肝硬変、腎臓結石などこの水で治る。
鉱泉保養地 水源周囲5000ヘクタール環境保護
地域指定 農薬化学肥料使わず。テントウムシで害虫駆除

* セべソ事件 イタリア都市セベソ 隣町のスイスの化学工場 トリくろろフェノール * ドイツの廃棄物処理法 * DSD(デュアルシステムドイツ社) * ビオトープ / Biotop     良い回答 * アスベスト * ごみ焼却炉とダイオキシン * 母乳中のダイオキシン * 塩ビの利点欠点 * 環境ホルモン ひとつの回答 * 製鉄の歴史 * 電子材料の公害      この講義の感想

建設環境工学(土木工学)と応用化学との比較 建設環境工学(土木工学)と材料物性工学との比較  その場合、通論としての学問全体を比較をするのが望ましいが  できないときは特定の科目をいくつか選んで比較をしてもよい。

                                  

教室の楽しい写真

土木 かつては普請 フランス語 ポンゼショッセ ponts et chausses   橋と道路 オランダ語 waterstaart  水利  Ministerie van Verkeer en Waterstaat「交通と水利」省 土木工学 土木技術(地域開発、災害防御、環境創造、地域住民の文明の発展)の 学問的な基礎として計画、設計、施工、維持管理をするための工学 それを実践する土木事業は性格上、公共事業が多い。 土木工学の対象 1.土木構造物 2.土木構造物を主体に必要機能をもつ施設 3.構造物と施設の建設による地域の開発と保全 土木施設の分類 ・交通施設(鉄道・道路・港湾・空港)・エネルギー施設(発電所・送電施設・パイプライン) ・都市施設(上下水道・ゴミ処理場・都市ガス施設) ・国土保全施設(河川堤防・治水ダム・防波堤) 江戸時代まで 土木技術 建築技術 鉱山技術 平城京・平安京 ため池 大仏建立 築城 干拓 江戸の水道 都市建設 水運 江戸時代から日本の文明開化にひろく貢献したオランダ人たち 明治 お雇い外国人 鉄道 イギリス人エドモンド・モレル 新橋横浜 水利 オランダ人ファン・ドールン 安積疏水(猪苗代湖から安積平野に) 技術自立 井上勝 鉄道建設 田辺朔郎 琵琶湖疎水(英国土木学会テルフォード賞) 水工技術の発展 治水・港湾・水道 信濃川の大河津分水(新潟平野を水害から守る放水路事業) 米の安定生産 利根川の洪水主流を銚子へ導く治水事業 港湾整備 明治20年 横浜の水道鉄管使用の近代水道 大正から昭和 ダムによる水力発電 朝鮮半島や中国東北地方の巨大ダム建設 昭和18年 水豊ダム 大正12年 関東大震災 耐震設計 昭和9年 丹那トンネル完成(温泉余土 16年間工事) 第2次大戦後 荒廃した国土の復興 治水工事 ダム建設 機械化工事 高度成長期 都市土木 道路・鉄道・地下鉄・上下水道・ニュータウン建設 東海道新幹線 名神高速道路 安定成長期の環境問題 昭和48年 オイルショック 四大公害裁判(水俣病、四日市、イタイイタイ病、第二水俣病) 自然環境や社会環境との調和が求められる 環境アセスメント

土木工学通論 ・社会資本と土木工学 ・土木の歴史 ・構造物の強さ ・構造物に作用する外力 ・構造物の設計・工事・管理 ・土と基礎 ・地下空間の利用 ・地盤と災害 ・海岸の自然・利用・保全 ・河川の現象と自然 ・交通施設と運用 ・都市計画と都市施設 ・水の循環 ・都市廃棄物の管理 ・都市環境の改善 (放送大学教材 1991.3)

--------------

土木技術史 時代により土木技術の形態は異なる。 社会、経済、技術は、それぞれ互いに深く関係しあっていて、 その相互関係において土木技術の発展の歩みを考えることが重要である。 土木事業の特性 ・自然を直接に対象とする 地球の表面の改造 地震、地滑り、洪水などに対応  自然との共存、新たな環境の創造 ・不可逆性 やり直しがきかない ダムによる河川や土砂の流れの変化 狭軌鉄道 ・公共性、社会基盤整備 鉄道、道路、港湾、空港 宅地造成 日本の自然特性 ・気象特性 大量の降水と降雪 高温多湿のアジアモンスーン地帯 ・土壌特性 沖積層(約1万年前〜現代) 洪積層(約200万年前〜約1万年前) ・地形特性 7割の山地 急流河川 火山帯  ・日本の自然特性と開発史 江戸時代までの土木技術 弥生時代の登呂遺跡 かんがい設備 大和時代 淀川周辺の河川事業、平城京、古墳、東大寺大仏 戦国時代 信玄の治水工事 牛類による水制 江戸時代 参勤交代のための道路整備江戸の水道 九州の石橋 伊能忠敬の日本地図 19世紀 スエズ運河などの運河網の整備、マカダムによる道路建設、鉄道 鉄鋼とセメント 欧米の土木技術の大発展が明治維新前夜に集中的に発生 明治維新は土木技術革新の時期とシンクロ 明治維新から第二次世界大戦までの土木技術 お雇い外国人 英国人928 米国人374 仏国人259 中国人253 独国人175 蘭国人87  鉄道のモレル 安積疏水のドールン 砂防ダムのデ・レーケ(レイケ)(31〜60歳在日)    水源涵養林  淀川、木曽三川の工事  灯台のブラントン 北海道開拓のケプロン トンネル技術 鉄道の父井上勝 逢坂山トンネルの国沢能長と生野銀山坑夫 留学生 フランス留学の古市公威(工科大学長、京釜鉄道総裁、土木学会初代会長) 琵琶湖疎水の田辺朔郎 廣井勇 丹那トンネルの難工事 破砕帯と薬液注入 青函トンネル、ドーバー海峡トンネル 信濃川の大河津分水 越後平野を洪水から守る 青山士と宮本武之助 関東大震災 震災復興事業 耐震設計 大ダム時代 水力発電、洪水調節 朝鮮の水豊ダム 南満州鉄道 アジア号世界最高時速110km 関門トンネル 土木学者の著作  廣井勇:英語のプレートガーダー設計法(1888) 日比忠彦:鉄筋混凝土の理論及其応用(1922)  林桂一:独語の弾性床上の梁の理論とその応用(1921) 鷹部屋福平:架橋新論(1928)  鷹部屋福平:独語のラーメンの具体的解法(1930) 妹沢克惟:振動学(1932)  物部長穂:水理学(1933) 林桂一:高等関数表(1941) 第二次世界大戦後の土木技術 大型土木機械による佐久間ダム 全国総合開発計画 北上川総合開発計画 黒四ダム 東海道新幹線と名神高速道路 東京オリンピック1964 住民運動 筑後川上流ダム 蜂の巣城紛争 環境問題 四大公害裁判 オイル・ショック1973 アメニティ 用・強・美 山陽新幹線 東北・上越新幹線 国土開発幹線自動車道建設法 関西国際空港 青函トンネル 瀬戸大橋 環境問題 大気汚染 水質汚濁 振動騒音  欧米に遅れている貧弱な生活基盤(下水道普及率、住宅面積など) 高齢者幼児などの弱者対応 国際化 情報化 高齢化社会対応 国民のニーズ配慮 学際化 総合工学としての土木工学 −−−−−−−−−−− オランダ人技術者ファン・ドールン 安積疏水 猪苗代湖のファン・ドールン銅像 埋められ供出まぬがる 野蒜港 台風の激浪で突堤決壊 北上川までの運河  オランダのような水深の浅い海で発達した築港技術 日本のような潮流の流れが速く急に水深の深くなる海岸にはそぐわなかった。 日本の急流河川は土砂が流れ込むから。 オランダ流の河川開発港湾(艀方式)から イギリス流の横浜築港 大防波堤建設 繋船岸壁埠頭 英国人技術者パーマー オランダ人技術者デ・レーケ(レイケ) オランダ堰堤(えんてい) 山から流れ出す土砂を防ぐ砂防ダム 低水制工法 洪水を起こさない 河川を水路として使う オランダのような川の流れの緩やかな地形向き 日本のような急流河川では大雨で洪水になるから向かない 高水制方式 洪水を起こさない 河川交通もすてる 高い堤防 ダム 粗朶工法  柿本人麻呂「明日香川 しがらみ渡し せかませば 流るる水も のどかにあらまし」 編柵工もしくは粗朶柵工 オランダ人技術者 粗朶沈床(洗掘を防ぐマット材)和蘭式粗朶沈床 間伐材利用 生態系に良い影響 里山保全 明治3年 オランダから治水と築港の技術者として ファン・ドールンが招かれた。 彼は協力者としてオランダから ジョージ・アーノルド・エッシャーとヨハンニス・デ・レイケを呼ぶ。 エッシャーは貴族出身で正規の高等教育(王立アカデミー卒業)を受け オランダ内務省土木局のキャリア技師だった。 デ・レイケは父を堤防職人にもつ、学歴のない敬虔なカルヴァン信者だった。 日本政府はファン・ドールンに長工師として月給500円、 エッシャーには一級工師として月給450円、 デ・レイケには四級工師で月給300円を払った。  当時の日本人指揮官は最高でも250円の給料 エッシャーは学歴のないデ・レイケの人柄とその高い技術力に感心し、 日本政府にデ・レイケの給料を上げるように働きかけた。 その結果再契約の時、デ・レイケの給料は400円になった。 エッシャーは帰国したが、デ・レイケは日本に残った。 二人の文通は34年間続く。 明治13年松方正義はデ・レイケに会って、山の木を切るな という主張を聞いて 誠実な人柄や技術やものの考え方に感銘を受けた。 やがてデ・レイケは勅任官になった。 これは天皇から任じられた官吏で、技術者としては最高の地位になった。 デ・レイケが60歳の時、日本を離れる。 山県有朋は彼の誠実さと正直さを高く評価し 彼に日本政府は5万円(現在の金なら4億円相当)の退職金を贈ったといわれる。 デ・レイケやエッシャーは、英国の技術者とは違っていた。 仕事の中で自国の利益を図ることはなかった。 英国は鉄鋼を輸出していたので、英国人は工事に鉄鋼を使おうとしていた。 オランダ人は粗朶(そだ)で十分だと言い、できるだけ安上がりな工事を心がけた。 英国人はオランダの田舎技術者は粗朶ぐらいしか使えないのだと嘲笑をあびせ、 英字新聞で盛んに攻撃した。 オランダに帰ったデ・レイケは女王によって準爵位の称号が贈られた。 オランダ人技術者デ・レイケが日本の河川工事の恩人であった。 井上省三 国産最初のラシャ工場 明治13年 千住製絨(せいじゅう)所 軍服 ドイツ・ザガン市のカール・ウルプリヒ織物工場で学ぶ 明治4〜8年 企業秘密の染色技術 工場の娘と結婚する約束で父親から教わる 養子先井上家の娘カメと結婚する約束だったのを グスターフ・ヘードビヒと結婚 明治11年 (明治9年帰国して工場建設計画 渡独 夫人と帰国) 明治19年急逝 明治21年 陸軍が工場所轄 軍用ラシャ地や毛布生産 日清日露戦争に使われた 小西一郎編:土木工学通論、森北出版(1985.3) 高橋裕:現代日本土木史、彰国社(1991.5) 中村英夫:土木工学 −社会資本の技術−、放送大学教材(1991.3) 清水慶一:建設はじめて物語、大成建設(1994.1) 椹木亨・柴田徹・中川博次編:土木へのアプローチ、技報堂出版(2000.2) 合田良実:土木文明史概論、鹿島出版会(2001.4)