堆積学的にみた地球の大気組成の変遷

八木下晃司:堆積学的にみた地球の大気組成の変遷 人間環境科学1997、175〜188頁

教育学部の八木下先生からいただいた論文です。
平成9年度は全学の学生協議会委員長でしたので、教育学部の学生委員長の八木下先生と近づきになれたのでした。
最近、地球の温暖化が問題になっていますが、地球の歴史を調べると、
大昔から二酸化炭素が大量に増え温暖化が進んだ時期があったことがわかります。
その反対に、二酸化炭素が減り酸素が増えて、寒い氷河期が訪れたこともあります。

データ量を少なくするため図を小さくしてあります。よく見たいときは図をクリックしてください。

海中の生物群が多種にわたって爆発的に出現したカンブリア紀以後、
大気中の酸素濃度の変遷は図−2のようであったとされる。
      
図−2では、古生代後期の石炭紀〜二畳紀の酸素濃度が急激に変化していることに注目できる。
たとえば石炭紀後期では35%であるのに対し二畳紀末では15%、現在は21%である。
酸素濃度の急上昇は、植物群の陸上への進出、その後の石炭紀におけるシダ植物群の
大繁殖、その結果引き起こされた光合成による大気中の二酸化炭素の消費と酸素の
放出が主な原因であったと思われる。

酸素濃度の急上昇により、石炭紀の昆虫類の進化が進み、逆に二畳紀末に海中の
酸素濃度が激減(35%→15%)したため腕足類などは絶滅したと考えられる。
呼吸器系のより進化した二枚貝などはこの変化にたえることができたようだ。

カンブリア紀末から現代まで、全部で6回の生物群の絶滅期があった。
図−3の★印がそれらである。

      
白亜紀末のものは地球外物質の衝突による環境変化であるが、地球の表層部の環境
変化によるものもある。たとえば、デボン紀後期のものでは、造礁性サンゴなどが
壊滅的な打撃をうけたことが知られている。その原因について、次のような説がある。

デボン紀末に維管束をもったシダ植物群が陸上へ進出した。このシダ植物群が
それまで砂漠であった陸地を次々に土壌化していった。やがて栄養分に富んだ藻類
などが海洋表面に異常に発生し、この結果酸欠状態になった海洋底では多くの底棲
生物が絶滅したと考えられる。

図−2では、石炭紀〜二畳紀において大気中の二酸化炭素の濃度が減少している。
二畳紀末には超大陸パンゲアが完成された。石炭紀〜二畳紀ではこの超大陸の完成
によりプレートテクトニクスの不活発化→海嶺などの海底火山の活動の衰退により、
大気中の二酸化炭素の減少が起こったとする従来からの説がある。
そしてプレートテクトニクスの不活発化による二酸化炭素の大気中の減少が地球の
寒冷化をもたらしたという。事実この時期には氷河期が訪れている。

しかし、地球の寒冷化はプレートテクトニクスの働きによるのではなく、
石炭などの膨大な化石燃料のもとになった植物群の光合成による二酸化炭素の取り
込みと土壌化の進んだもとでのマグネシウムやカルシウムの珪酸塩好物を含む岩石
の風化たとえば
      CO+MgSiO=MgCO+SiO
により、寒冷化が起きたという説もある。

プレートテクトニクスの不活発化が地球の寒冷化をもたらすという一般的な考え方
を述べたが、その反対にプレートテクトニクスの活発化は、大量の二酸化炭素の
大気中への放出を促し、地球の温暖化を加速させることになる。

よく知られたことだが、白亜紀における南太平洋、サモア諸島北方にある巨大な海台
オントンジャワの形成はマントルプルームの異常な活動を物語るものである。
示準化石の有孔虫を含む層の下位にある海底玄武岩層は、わずか100万年〜300
万年の短い期間に噴出し、この海底火山による二酸化炭素の放出が地球温暖化を
もたらし、海水準の上昇量が75mになったという説がある。

プレートテクトニクスの活性化は、何も海底火山の活動のみを引き起こすのではない。
プレート間相互の衝突による圧縮作用は、地殻やマントル最上部を構成する岩石を
変成させ、新たな変成鉱物を生じさせる。この変成鉱物の生成が、徐々にではあるが、
地殻中から大気圏へ向かって大量の二酸化炭素を吐き出すことになる。
      
図−4における始新世の古気温の上昇は二酸化炭素量の増大に求められるとした
上で、これをインド半島を含むプレートのユーラシアプレートへの衝突にその原因
を求める説がある。すなわち、この2つのプレートの衝突は石灰岩や苦灰岩を含む
膨大な量の堆積岩に対して広域変成作用を引き起こし、このとき大量の二酸化炭素が
発生したというのである。
たとえば緑色片岩相では
  5dolomite+8quartz(石英)+HO=tremolite+3calcite+7CO
また
  3anorthite(灰長石)+calcite+HO=2zoisite+7CO
といった反応を引き起こす。

インド半島のプレートとユーラシアプレートの2つのプレートの衝突により地塊が
上昇し、今日のヒマラヤ山脈が形成されたことはよく知られた事実である。

まとめ
プレートテクトニクスの不活発化(火山休み)→二酸化炭素の減少→地球の寒冷化
プレートテクトニクスの活発化(火山爆発)→二酸化炭素の増大→地球の温暖化

この論文は私には難しすぎて、理解できたのはこんなところでした。