宮本流メディア論

     

平成8年に「マルチメディアと私たちのくらし」という題で3回も講演をしたので、
少し独断と偏見をまじえて、現代メディア論をここで述べてみたい。

マルチメディアとインターネットとはほとんど同じ意味で使われていると
TOPICの岩本先生から聞いたので、
安心してマルチメディアとインターネットについて書いてみましょう。
なお岩本先生は東北学院大学の情報工学の先生です。

メディア
 ニューメディア マルチメディア マスメディア
メディアとは、情報を伝える手段、媒体のことである。
 medium 単数 media 複数
 例)Air is the medium of sound.  空気は音の媒体である。
わかりやすくいえば「何か情報を伝える手段」
 音、光、手旗信号、烽火(のろし)、言葉、文字、記号、絵、
 テレビ、ラジオ、映画、漫画、アニメ、歌、踊り、
 黒板、スライド、ビデオ、OHP、マイク、プリント、模型
 手話、筆談、ジェスチュア、ボディラングウェッジ、顔の色、声の調子
  要するにコミュニケーションに使えるものなら何でも。

送り手と受け手の間に、何か情報が伝わることが大事である。

印象深く伝えるテクニックも必要!  ← ここはNetscape なら点滅する。

古くからあるメディア
烽火(のろし)
 BC770 古代中国の周 幽王と妃(褒じ JISにない漢字なので)
 そのころ周王朝を中心に諸侯の国がこれを支援する体制をとっていた。
周王朝が敵から攻撃を受け危険になったとき、
烽火を上げて諸侯に知らせることになっていた。
 あるとき
誤って上げられた烽火を見て周王朝の危機とばかり集まった諸侯が、
それが間違いだとわかってがっかり虚脱の顔をしたら、妃は笑った。
実はこの妃はそれまで全然笑わない女だった。
 笑わなかった妃が始めて笑ったので幽王は嬉しくなり、
部下に命令してわざと偽の烽火を上げさせた。(しかし、妃は2度と笑わなかった)
 こういうことが何度が続くとそのうち、
みんなばかばかしくなり誰も烽火を見てもとんでこなくなった。
 そして本当に敵が攻めてきた。
慌てた幽王が烽火を上げさせたが、
諸侯の援軍はなく幽王は殺され妃も連れ去られたという。
当時最先端のメディアも使い方を誤れば何の役にも立たなかった。

 万里の長城の烽火台
 観光客の押し寄せる万里の長城は明代に修復されたものである。
たいていは北京郊外の万里の長城(八達嶺)を見学する場合が多い。
 ここは私も何度か行ったが、1992年の10月に訪れたときは、
ちょうど天皇陛下が1週間後に訪れることになっていた。
 そのせいか私が行ったときは、長城の上には明代の服装をした兵士が並んでいて、
付近の山々にはモンゴル族のテント(包パオ 外モンゴルではゲルという)が張られ、
烽火すら上がっていた。
一週間後に天皇陛下一行に見せようという演出みたいで、
中国もここまでやるのかと思ったほどだった。

太鼓や釣鐘が昔の時計。 中国では bell tower → 鐘楼。 昔は時刻を知らせた。

小説「モンテクリストゥ(岩窟王)」
 手旗信号手の買収、商品取引(株)情報
 右の信号機が送ってきた信号文を正しく左の信号手に伝えるのが信号手の役目。
それなのに金で買収された信号手は偽の信号を送ってしまう。
 その結果、主人公を昔陥れた金持ちダングラールは、
主人公の仕返しにあって偽情報をつかまされ大損してしまう。
こうして復讐は一歩ずつなされていく。

スタンダールの「パルムの僧院」
 時はナポレオンが活躍した頃の北イタリアの話。
パルム城塞の牢獄の塔にとらわれた青年と、管理する将軍(牢獄の所長)の娘の恋。
 脱出のため伯母の命を受けた人々が、遠方から主人公に光通信でメッセージを伝える。
 やっとみんなの力で牢獄を出られたが、
主人公にすればあの塔での生活のみが生きがいを感じる場所であることに気がつき、
自分からわざわざ牢獄に戻ってしまう。
 たとえ明日の命が保証されない捕われの身であっても、
恋人の姿も垣間見ることのできた一時で、
それは何ものにも代えがたいものであったのだろう。
 生きがいとは、価値観とは人に決めてもらうものではなく自分で決めるもの。
もちろん主人公は生き延び、パルムの僧院の聖職者になるのである。
気になる方は原作をどうぞ。

文字メディアと記号と絵
例その1) トイレの表示 (Damenの略)と(Herrenの略) ← ドイツでの表現
 女の絵と男の絵 スカートと帽子
  デンマークのレストランでも、男性トイレにH文字だけ書かれてあった。
  言葉の知らない人には、絵の方がありがたい。
例その2) ドアの開け方 (drueckenの略)と(ziehenの略) ← ドイツでの表現 
 推と拉 ← 中国での表現 pushとpull 中国のドア(拉) キプロスのドア(わかりやすい)
  略した1つ文字なら言葉がわからないと理解できない。絵なら誰でもわかる。
例その3) コミックちびまる子(日本語版) 櫻桃小丸子(中国語版)
 簡単な絵なら理解できる。内容がこみいってくると言葉を知らないと理解できない。
だから翻訳が必要になる。
  香港旅行記その10に櫻桃小丸子(中国語版)の紹介記事があります。

  ピクトグラム

ニューメディア: 電子工学の成果を利用したメディア
 コンピュータ機器、ネットワークによるメディアの活用
ニューメディア、マルチメディア
マルチメディアとは簡単に言えば
「TVと電話とFAXとPC(あるいはWS)とを一緒にしたようなもの」
文字や音声のほかに画像や映像まで扱えるものである。
一昔前なら、使う機械によって機能は限定されていた。
(だから安心して、その機能に専念できる)
 電話は音声しか送られない。ワープロは文書の編集だけ。
ビデオはビデオだけ。
しかし、コンピュータと通信は手をつないで、ユーザのために
広い広い、無限の活用世界を作ってくれた。
マルチメディアは電子通信工学の発展によりできた
現代のメディアをまとめて使える総合システム

インターネットとは何か。
 interchange  高速道路のインターチェンジで、他の交通機関との乗換駅
 interface  境界面、相互作用(伝達)の手段
 international  国家間の、国際的
  change はバスや汽車の乗換え駅だが、interがついて
  interchangeになると、違う交通機関との乗換え駅になる。
  face は単なる表面で、interface になると、あるものの表面と
  別のものの表面が接触して、相互に作用を及ぼす領域となる。
  national は(ある)一国のという意味だが、interがついて
  international になると、国と国の間の関係をさす。
internetwork は、1つ1つの組織にネットワークがあって
それぞれ違う組織のネットワークどうしをつないだもの。
たとえば、A大学、B大学、C研究所のネットワークをつないだものを internet という。
歴史的に発展した足跡をたどると
 米国国防総省高等研究計画局のARPANETプロジェクト(1969) →
 大学院生が作った貧乏人のARPANET(バケツリレー) → 草の根BBS(1977) →
 インターネット分散処理(1983) → フリーソフト → 
 成果を無償公開 → 非営利目的 → 商業ネットも取込む
インターネットを 仮想空間、電脳空間 cyberspace と呼ぶ人もいる。

仮想商店街
 商品販売、ゲーム、カラオケ店、喫茶店、劇場空間

自宅で海外のゲームソフトや原書を安く早く買うことができる。
 支払は電子マネー クレジットカード番号で引き去り 
 パスワードとセキュリティの問題がおこる。 新しい商取引と規制ができてくる。

大学の研究室にいて、ルーブル美術館の絵を見たり、明治村の由緒ある建物の映像を見たりできる。

離れた場所にいるまだ見ぬ人とのひとときの会話を楽しむことができる。

情報のやりとりでは、利用価値が問題になる。
相手が欲しいと思う情報を流してやることが大切。
(自分だけ満足していないか。人のカラオケを聞く人は少ない。ジャイアンの歌?)

 ホームページを作ったのはいいが、半年も1年も更新しないと魅力が無くなる。
(このホームページもそうならないようにしなくては)

自分の感動、喜び、憧れを世界に伝える。

コンピュータを人間の自己理解、再発見のために使う。

人間同士をお互いに理解するためのツールである。

職場以外の人間関係、出会いのメディア、教える喜び、生きがいを体験できる。
 今はやりの自己実現ができる。

コンピュータ通信:インターネットとパソコン通信
 パソコン通信はホスト機と端末との親子関係なのに、インターネットは対等な関係。
 <コンピュータ通信は、時間と空間を越える>
マスメディア(マスコミ)とインターネットの違い
 一方通行のコミュニケーションと双方向のコミュニケーション
(インターネットは民主的)
インターネットはギブ&テイクで始まった。

アドレス(世界に一つの住所)

電子メール  電子の郵便         世界の郵便ポスト

電子メールを送るときの心得をちょっと紹介しましょう。
電子メールのマナー 五カ条
・あて先確認慎重に
・簡潔で内容がわかる題名をつける
・あて先と差出人は冒頭に
・適度なところで改行する
・署名では連絡先を明記する
(日本経済新聞 1998.3.25)
某元国立大学教授のヒント
1)伝えたい内容を的確に、かつ簡潔に記述する。
2)会議の論議と結論を会議が終わったらすぐにまとめめて記述する。
3)相手の質問や要望にできるだけ早く、簡潔に答える。

FTP  ファイルの転送

WWW(ワールド・ワイド・ウェッブ) 世界の画像が見られる。
WWWを活用するためには
・何をどのような目的で、誰に向けて発信するのかコンセプトを明確に。
・WWWは立ち上げることよりも、日々の内容の更新が大切。
・相互主義、分散処理、自分の詳しいことを発信し、知っていることを
分かち合う。手をつないで世界規模の百科事典を作る。

便利さと、その裏がえしの落し穴。(すべてのものには裏と表がある)
 電話 距離を越えるが、迷惑にもなる。しつこい電話(犯罪)
 カード社会 キャッシュレス(海外旅行で便利) 使い過ぎて個人破産
 盗まれたパスワード、身に覚えのない請求書。
 データベース 交通事故で死んだ子どもの誕生日に、毎年お菓子屋からハガキが届く。
 誰が教えたデータベース。
 電子メール 時間と空間を越えるが、書き方が悪いと誤解をまねいたり気忙しくさせる。
 WWW 仮想の世界にひたりっきり現実逃避

メディアは使い方しだいで、毒にも薬にもなる。(テレビ、漫画、携帯電話)
 テレビ放映を盲信しないこと。 CMを批判的に見る。
猿岩石(実は猿回し、テレビ局のスタッフが猿使い?)
 コミックは思考を弱体させるか? 文章以上の情報を伝えるか?
 マルチ人間は誰でもなれるわけではない。運転中の携帯電話は事故のもと。
たまごっちの音に気をとられ交通事故。

使う人間がしっかりしていないといけない。
 情報の管理・整理整頓
 人間性の尊重
 インターネット時代の表現力
 インターネット時代のコミュニケーション技術

電子メールと面談の使い分け。電子メールは送る前にもう一度読み直そう。
若い人のメールにいちいち目くじらを立てない。

 機械は機械でしかない。人間が偉い(はず)。

 メディアは道具。大事なことは、それを人間が使いこなすこと。

 何のために、どう使うか、そこが大事である。

 人間としての倫理観を育てて、素直な感動をのばすような教育。
大学でもそういう教育が大切であろう。

翻訳に苦労した圧縮・解凍       届かなかったメール

鹿児島大学の板倉先生
ネットワーク時代では、
・伝達速度が速い
・伝達範囲が広い
ため、より大きな社会問題となりますが、
「不幸の手紙」も「当たり屋グループのデマ」も昔から
あったわけです。

情報であれ、物であれ、人であれ、
・肩書き、名前、パッケージに惑わされず中身をしっかり見る
・自分自身の価値観をしっかり持つ
(テレビに放映されていたからとか、人が言うからなどに流されず)
というところが大事であると感じています。

日本の子供たちが、
・危険回避の技術
だけではなく、
・他人に迷惑をかけない、自分が人として尊敬されるようなモラル
そして、
・人としてのidentity
をしっかり身につけることができる時代になればいいな、と思っています。

新・コンピュータと教育(佐伯胖、岩波新書)から

これまででも、声に出して人と話す、文字に書いて誰かに訴える、
電話やファックスを使って遠くにいる人とつき合う、
なんていうコミュニケーションはできた。
その基本的な人づき合いができないままで、
インターネットになると突然世界と交流できるなどというのは、幻想であろう。
(大前研一、朝日新聞、1995年12月25日から一部引用)

たぶん英会話を習っても、言うべきことを持たなかったり、
伝えたい感動がなければ、ただのおしゃべりで無意味な会話が続くであろう。
文法が間違っていても、自分の思いを表現したいと願う者が
たどたどしく話すほうが相手を感動させるだろう。
そしてやがて、言葉も上達するはず。
学ぶ者の内なる欲求をゆっくり大切に育てたいと思うのだが、なかなか教育は難しい。

最近、地方公共団体や会社でホームページを開いている例が多くなった。
しかし業者まかせで、いったん作ったホームページもそのままほおっておくと、
役に立たないものになる。
こまめに内容を更新して、日頃から育てていく姿勢をもたないと
何のためのインターネットであるかわからないという警告が、
心あるインターネットのユーザの中からわき起こっている。
はやりでWWWに参加している場合もないとはいえない。

しかし、データ更新はデータベース更新の例でもわかるように、
人手と時間を相当かけないといけないものである。
良い内容にするには本気でやらないといけないのではないだろうか。
(これは自分の反省もこめて)

平成10年2月26日に仙台の東北通産局主催の
インターンシップ研究会で、若い学生たちに実習体験をさせながら、新鮮な感性を
七夕ホームページに活用した事例研究の発表を聞きました。
これぞインターネットの価値ある実施例。
リンク自由とのことですから、ここにリンクしておきます。
七夕ホームページ1997

96PCカンファレンス特別講演 インターネットの問題点

岩手大学情報システムのセキュリティ対策から

人材輩出の環境

           三和総合研究所取締役理事

長年情報産業にかかわってきた筆者の体験によれば、
「徹底した基礎教育」
「フィールドワークに代表される現場での体験」
「異文化に接触することによって受ける刺激」
の3つが創造性のある人間の形成につながっている。
(紙面批評、産経新聞、1998年3月29日)

印刷メディアにおけるグーテンベルクの意味

最近のインターネットセキュリティの講演メモ(センターY先生)
スバムメール 大量広告 あなたのメールサーバがねらわれぬよう。
犯罪者クラッカー(クラキングはパスワード解析からはじまった)は罰せられる。
コンピュータウィルスにはウィルスチェッカーをあてよう。
大学のセキュリティ対策として、組織作り、規則作り、連絡体制作り、技術的対策、
そして学内ユーザの啓蒙教育を考えている。
サーバの登録制の実施。責任体制。

不正アクセス禁止法(他人の識別符号の入力、制限を免れる情報入力などの禁止)

セキュリティ対策12の心得
パスワードを大切に。パスワードを他人に教えてはいけない。
他人のパスワードを不正に入手しない。不正に入手すれば罰せられる。
サーバを立ち上げると責任がともなう。クラッカーに狙われる。
著作権を守ろう。不正コピーは罰せられる。
悪戯メールを送ってはいけない。イダスラメールを送ると警察に通報され罰せられる。
他人を誹謗中傷する記事は罰せられる。
不正アクセス、システム破壊を行うと罰せられる。
コンピュータウイルスに注意。フロッピーディスクや添付メールに注意。
(偽の)コンピュータウイルスやセキュリティ情報に注意。あやしい情報は教官に相談。

IT時代、日本は不利という分析
日本もインターネット時代。IT革命と言われる。
しかし、IT革命にバラ色の未来が広がっていると限らない。
むしろ、日本にとっては、とんでもない時代になりそうである。
米国では、伝統的なビジネスが行き詰まり「破壊的な影響」が起きている。
CD−ROM百科事典の登場で200年以上の歴史を持つブリタニカが行き詰まった。
米国には「創造的破壊」が起きている。米国は労働市場が流動的で、まったく新しい
分野にリスクマネーを流入させる仕組みが存在するなど、社会制度が流動的な
特徴をもっている。インターネットは本質的に、流動的・分権的な社会に向いている。
日本では、創造的破壊により新しい主役が登場するのではなく、古い伝統的な企業が
新しいITという技術を取り入れて、既得権を守りながら生き残ろうとしている。
日本で「創造的破壊」が起きるのは難しい。再販制度がある限りオンラインで安く
販売することは不可能だ。そういう規制がまだまだ多い。
企業間の電子商取引も、日本のような系列が強固な社会では難しい。
日本人の言葉のハンディも大きい。国際社会で負けずに競争するには書く英語の
能力が必要である。
(2000.6.23日本経済新聞 野口悠紀雄先生の論説を参考)

コンピュータの落とし穴振り込まれなかったボーナス

怖いウィルスかなり被害が出たのです

 ニアミス管制官とコンピュータ衝突防止

 静岡大学の卒業研究インターネット上の巨大匿名掲示板  その可能性と問題
   (指導教官よりリンク許可をいただきました)

総合情報処理センター創立記念ふれあいシンポジウム2002.4.20

チェーンメールに気をつけよう    おもしろいスーパーコンピュータの説明

デジタルストレス

何も知らない幸せなユーザ         BBSをめぐって小学生の殺人

パソコンの歴史         名刺を作る         かたられたメール

紙テープ時代のミニコン     カードそしてフロッピー     CDとDVD     音響カプラー