建設環境工学通論 平成14年度 応用化学科&材料物性工学科3年生

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電子メールできた [環境ホルモン]
環境ホルモン
 「環境ホルモン」とは化学物質の事で、「外因性内分泌撹乱化学物質」を簡単に呼んだもの。
これは生物の体内に取り込まれると、あたかもホルモンのように作用し、
本来のホルモンバランスを崩すことからつくられた用語です。 
 「環境ホルモン」は女性ホルモンの受容体と結び付き、女性ホルモンと同じ作用を
引き起こします。つまり、不必要に女性ホルモン作用を生じさせるため、
生殖異常などが起こりやすいのです。 実際に、マウス実験では、生まれたばかりの
マウスに女性ホルモンを投与したところ、メスは妊娠しにくくなり、
子宮がんや膣ガンができやすくなり、オスは精子数の減少、無精子、前立腺の増殖、精巣ガ
ンなどが見られたとの事。なかには骨の異常や免疫力の低下、異常な生殖行動を
起こすマウスも見られたらしい。

 野生動物の生殖異常の例 
1.イボニシ(巻き貝)のメスにペニス
 国立環境研究所の堀口敏宏主任研究員が、1996年3月までに全国97個所で海岸に
生殖するイボニシを採取調査したところ、 94個所のメスのほぼ100% に
ペニスや輸精管が見つかった。この原因は、船の底に汚れをつかなくするための
「有機スズ化 合物」の塗料が原因と特定されています。
2.フロリダのワニのペニスに発育異常
 フロリダ州にあるアポプカ湖のワニは、1980年におきた化学工場の事故によって、
DDT等の化学物質で汚染され、多くの卵に影響がでました。しかも生き残ったワニの
オスは、正常なオスに比べて、ペニスが半分から4分の1程度しか発育していませんでした。
3.多摩川のコイの精巣が小さくなっている
 井口教授の研究室が行った多摩川に生息するコイの実態調査では、
コイ38匹のうち、11匹の精巣が極端に小さく、しかも 卵巣と精巣
を持った雌雄同体魚だったそうです。どの環境ホルモンが作用したのかは
特定されていませんが、多摩川からはノニルフェノールを含
む数十種類の化学物質が検出されています。

 人間についても例えば精子数の減少が指摘され、デンマークでは
1938年から1990年の間にほぼ半減というデータが示されま
した.この報告には反論と支持が出されましたが、他の国でも類似の
データが示され、動物実験での確認例もあって減少傾向は否定で
きないようです.日本でも、若者34人の精子濃度等の検査で、
世界保健機関の基準を満たしたのが1名だけという報告がありまし
た.
 また、胚や胎児の段階での環境ホルモン暴露の影響は大きく、
事故などで高濃度に曝されて生まれた子どもには、成長の遅れや行動
上の問題が指摘されています.あとで述べるように、環境ホルモンは
極めて微量でも作用するため、とりわけ様々なホルモンが重要な
働きを示す胎児・乳児の時期に摂取した影響が、成長に伴ってあるいは
次世代にどのように発現するのか、長期的な調査が必要です.
 環境ホルモンの作用は、以下のように考えられています.生物の
からだの中で正常なホルモンは、発生や発育などの諸段階において
適宜特異的な生理活性を示します.ホルモンレセプターを刺激して
遺伝子を活性化し、必要な生体反応を起こすのです.いわば細胞と
いう工場のラインを動かす、スイッチの役目を果たしているわけです.
ところが環境ホルモンは、レセプターに対してホルモンと同じ
ような働きをして、不必要なときに工場を稼働させたり、正常ホルモン
の働きを阻害して必要なときに工場が動かないようにしてしま
います.この結果、不要なものが過剰にできたり、必要なものが不足して、
生体の正常な機能が果たせなくなります.中でも問題なの
が、エストロゲン(女性ホルモンの一種)と類似した作用を示す化学物質が、
エストロゲンレセプターと結合してタンパク合成を引き
起こしたり、他のホルモンバランスを乱したりすることです
(ホルモン類似物質).男性ホルモンのレセプターに結合して、男性ホル
モンの働きを阻害するものもあります(ホルモン遮断物質).
 もともとホルモンは、必要な時期に(早過ぎず遅すぎず)
必要な濃度で(多過ぎず少な過ぎず)存在して、はじめて正常な働きをす
るようにできています.これは、生物が極めて微量な化合物を、
繊細にコントロールしてその機能を維持するシステムを築き上げてき
たこと物語っています.
環境ホルモンの問題は、その生命システムを根幹から揺さぶる重大なものなのです.