推理小説の部屋 3号室

皇帝のかぎ煙草入れ、八墓村、本陣殺人事件、砂の器、成吉思汗の秘密、樽、
奥の細道殺人事件、高層の死角、ABC殺人事件、不連続殺人事件 (こちらは前の前のページ)

そして誰もいなくなった、伯林 一八八八年、清少納言殺人事件、 天使の傷痕、金沢殺人事件
ノストラダムス大予言の秘密、マラッカの海に消えた、邪馬台国の秘密、五十万年の死角
死媒蝶(こちらは前のページ)

殺意の演奏、ペトロフ事件、黒いトランク、盗まれた手紙、ゼロの焦点、幻奇島、津和野殺人事件、
オリエント急行殺人事件、天竜峡殺人事件、京都 恋と裏切りの嵯峨野 アクロイド殺し 人間の証明 
だれがコマドリを殺したのか?

 ようこそ 推理小説の部屋ヘいらっしゃいました。

 推理小説やこの種の映画やテレビドラマについて、
最後まで見ていない人に犯人を教えたり結末を話すと、
その人の楽しみが奪われついにはを見ることになります。

実際に外国で、テレビドラマの筋書きを、求めてもいないのに話した人が、
怒った家族から暴行を受けた事件がありましたね。

ということで、ここでは推理小説の見どころ(のさわり)を私の独断で紹介します。

 なぜ推理小説なのか。それは単に私の好みだからです。
推理小説はパズルのようなもの。
読者は作者の出した問題を解くことができるか?
作者と読者との知恵の戦い。

大谷羊太郎:殺意の演奏

まず作者はこの小説の先頭で、上田敏の訳詩集「海潮音」の序文を紹介する。
「一編の詩に対する解釈は人各々或は見を異にすべく、要は只類似の心状を喚起するにありとす」
すなわち詩の解釈が、その読者の感じるままに、(類似であれば)何通りもあってよい。

これをもし推理小説にあてはめたらどうなるだろうか。
一編の推理小説に対する解釈が、読者の好みにしたがって、少なくとも二通りに
分かれる。そして、どちらの解釈をとっても、作者の訴えたいテーマは読者に伝わる。
そういった解釈が成り立つ推理小説を書けないものだろうか。

事実はひとつなのだから、推理小説の謎の解き明かしを二通りにできるなんてと
思うのだが、この作者の挑戦ははたして成功するのか。それは読者の読んでのお楽しみ。
という新たな試みも楽しめるアイデアも盛り込んだ意欲的な推理小説なのである。

有名大学を卒業してテレビアナウンサーになることを夢見た杉山だったが、
J大の受験に2度失敗して悩み、音楽喫茶の司会者募集の張り紙を見て、
芸能ショーの司会者として身を立てる決心をする。そして、細井という芸名で
司会者の仕事はある程度成功していたはずなのに、細井(杉山)は11月末に
アパートの部屋でガス中毒の死体となって発見される。

発見したのは高校時代の友人の村田だった。
村田はクラスでも目立たない存在で、自分の能力にあったL大に進んだ。
あまりにも性格も能力も違うから、かえって二人は仲が良かった。

司会者細井は舞台芸としてクイズを出すことを思いついた。彼は自分で考えたクイズ
をノートにいっぱい書きつけていた。約束の日に訪れたのに部屋に鍵がかかっていた
ので、鍵を開けて彼の部屋に入った家主と村田は、彼の暗号遺書を発見する。
睡眠薬を飲んで鍵のかかった部屋で死体が発見されたので、結局警察は自殺と判断した。

それから数年たって、細井の弟は大学を卒業してから、ラジオ局のアナウンサー
になった。聴取者からのリクエスト曲をかける新番組ヤング・ウエスタンを
はじめて、ある聴取者からの投書がきっかけで、弟は兄の死が殺人ではないかと
疑いを持つ。

戦後の日本でウエスタン音楽のブームの時期があった。やがてロカビリー時代が訪れ
ウエスタンバンドはロカビリーに看板替えをした。そして、このロカビリーが
やがてグループサウンドへと系譜を伝えていく。

アメリカの開拓時代に、イギリス系民謡が持ち込まれ、南部の山岳地帯に根を
おろし、マウンテン・ミュージックとなる。その後に文明の発展とともに、
電気楽器が普及してくるようになった。その方向に進んだのがC&W(カントリー・
アンド・ウエスタン)派である。一方、伝統を守ったのがブルーグラス派であった。

C&W派の流れは、ロカビリー、グループサウンドにつながっていく。
そして、ブルーグラス派の流れを受け継ぐのがフォークソングである。
という説明には、なるほどとうなづかされる。

作者大谷羊太郎は、中学生の時からギターが上手で、家庭の事情で慶応大学を
中退したが、ハワイアン・バンド、カントリー・アンド・ウエスタン、
ロカビリー・バンド、歌謡曲演奏バンドと器用に移っていき、最後は芸能
プロダクションの実務の仕事をするようになる。したがって、自分の経験を
おりまぜながら、日本のギター系演奏バンドの歴史も紹介している。

作者は4度の挑戦をして、ついにこの作品で第16回江戸川乱歩賞を受賞した。

鮎川哲也:ペトロフ事件

作者は子どもの頃から約20年間、旧満州ですごした。
父親が南満州鉄道の測量技師だった。そんなわけで彼の一家は長い間大連に
住んでいたのである。

大連の夏家河子(かがかし)駅の南の山の手のロシア人村のイワン・ペトロフ老人が
自宅で殺された。
ペトロフ老人には甥が3人いた。がそれぞれ彼の意向に従わないことをしていた。
第一発見者のアントンもそうであったが、ほかの2人(ニコライとアレクサンドル
の兄弟)も伯父の忠告に従わないときは遺産が分けられないことになるのであった。

中国人のご用聞きの小僧がペトロフ老人の声を聞いたことから、
ペトロフ老人は午後3時45分頃に殺されたと推定されるが、
その頃には3人の甥はみなアリバイがあった。

犯人のアリバイをくずすのが大連沙河口警察署の鬼貫警部である。

ペトロフ事件

鮎川哲也は2002年9月24日に亡くなりました。

            

鮎川哲也:黒いトランク

昭和30年、いわば第0次乱歩賞ともいえる講談社の書き下ろし探偵小説全集の懸賞に応募して、
江戸川乱歩が強く推したので受賞した。
クロフツの樽を意識して書いたもので、これでもかこれでもかとアリバイ・トリックが
仕掛けられている。

そのため、私は最初読んでなかなか理解できなかった。犯人のしくんだトリックの意味がわからない。
2つのトランクが東京と九州の間を行ったり来たりする。
やはり、この作品でも犯人のアリバイをくずすのは鬼貫警部である。

読者は篠栗線(若松−博多)の駅の位置関係を理解しておく必要があろう。
おおざっぱな位置関係は次のようになる。
  若松→二島→遠賀川→博多
あるいは次のように書き直したほうがいいかもしれない。
  博多←遠賀川←二島←若松

事件は汐留駅に送られてきた小口貨物のトランクが死臭くさいので
警官立ち会いのもとに開けると、中から死体が出てくる。それは羽織袴の男だった。

警察の調べて次のようなことが判明する。

Zトランク
 11/25 膳所(ぜぜ)氏が原宿駅から二島(ふたじま)駅宛に送る 19.8キロ
 11/28 二島駅に届く
 11/29 近松氏が二島駅で受け取る 自宅に持ちかえる
 12/1  近松氏が二島駅に一時預かりに預ける 73キロ
 12/4  近松氏が二島駅の一時預かりから受け取り、汐留駅に送る 73キロ
 12/7  汐留駅に着く
 12/10  トランクの中から死体発見

警察はトランクを送った近松氏の家を捜査すると、物置として使っていた防空壕から
殺された男のもとの思われる眼鏡のレンズの破片を見つける。しかも、近松氏は旅行して家にいない。
警官は近松氏を容疑者とみなすが、数日後近松氏は兵庫県別府(べふ)町の海岸に遺品を残し
水死体が岡山県児島市下津井で発見される。彼の妻は近松が犯人とは信じられず、彼らの友人である
鬼貫警部に真相追求を頼む。ここで鬼貫警部が真犯人を捜して懸命の捜査が始まる。

鬼貫警部は、近松氏がなぜ一時預かりに預けてから、数日後にそれを受け取って改めて
汐留駅に送ったのかと疑問を持つ。
また、近松が二島駅でトランクを送った後、神戸に行くのだが、乗車券は福間駅からのものである
ことにひっかかる(どうして二島駅から神戸行きのキップを買わなかったのか)。
当日の近松氏の行動を確認するため、ラジオに頼んで近松氏を乗せて運転手がいないか放送してもらう。
その結果、次の事実がわかった。

Xトランク
 11/30 佐藤氏が新宿駅から若松駅宛に送る 73キロ
 12/3  若松駅に届く
 12/4  X氏が佐藤氏を名乗り若松駅で受け取る
 12/4  X氏が佐藤氏を名乗り遠賀川駅から新宿駅留で送る 19.1キロ
つまり、2つのトランクのことを順にならべると次のようになる。
 11/25 Zトランク、膳所氏により原宿駅から二島駅宛に送られる 19.8キロ
 11/28 Zトランク二島駅に着く
 11/29 Zトランク二島駅で近松氏に受け出される 近松持ち帰る
 11/30 Xトランク新宿駅から若松駅宛に送られる 73キロ
 12/1  近松氏が運んできたZトランク二島駅に一時預かり 73キロ
 12/3  Xトランク若松駅に着く そのまま若松駅留
 12/4  Xトランク若松駅から受け出される X氏受け取る
     (Xトランクを運ぶトラックの荷台にX氏乗る)
     (二島駅近くで近松氏現れ二人はXトランクを二島駅に運ぶ)
 12/4  Zトランク二島駅の一時預かりから近松氏受け取り、汐留駅に送る 73キロ
     (二人はトランクをかかえてトラックに戻ってくる)
     (遠賀川駅でX氏だけ降りてトランクを駅に持っていく)
 12/4  XトランクX氏に遠賀川駅から新宿駅留で送られる 19.1キロ
     (福間駅で近松氏トラックを降りる)
     (X氏博多の宿屋前で降りる)
 12/7  Zトランク汐留駅に着く
 12/7  Zトランク開けられ馬場氏の死体発見される

調べていくと、なんとこの事件に関係する人間はみな鬼貫警部の大学の同級生であった。
そして彼らのアリバイ調べが始まる。

       X氏       近松氏       膳所氏      蟻川氏
4日 午後6時に若松駅に  午後7時50分  高松で午後1時から 前夜から東京発
   現れ、二島、遠賀川、 福間駅から門司行 4時までに時計を  長崎行に乗車中
   福間を経て9時20  乗車、更に門司発 すられたと称する
   分博多駅前旅館投宿  神戸方面列車に乗
              継ぎ

5日 対馬に渡り、午後2  午前1時43分  宇和島でスケッチ  柳井駅で盗難に
   時に旅館に投宿    三田尻駅発車直後 をしていたと称する あった旨午前2
              救急薬品所望             時半に徳山公安
                                 官に届出
                                 午後3時大分に
                                 投宿

6日 早朝に旅館を出て、  兵庫県別府町で  宇和島でスケッチ  午後9時20分
   以後の足取不明    深夜から翌日暁  をしていたと称する 大分港出航
              にかけて服毒自殺

7日 不明         11時頃遺留品  宇和島でスケッチ  午後6時大阪港
              発見       をしていたと称する 着

鬼貫警部は、トランクのすり替えが、12/4 に二島駅で行われたはずと推理するが、
矛盾につきあたってしまう。
実は、私はまだよくわからない。トリックにトリックを重ねているので、整理するのがむずかしい。
読むたびに頭の痛くなる小説である。

つまり、犯人は殺人は近松氏の防空壕で行われたと見せかけるが、死体の体内から出てきた
白いんげんは当時関東にしか配給されていないものだとか、トランクにつめてあった藁が東京の特定の
人間しか持ち得ないという事実から、殺人は東京で行われそれからトランクに詰められ九州に
送られてきたことは否定できない事実である。
しかも、遺体の入っていたトランク(Zトランク)は膳所氏のもので、それを乞われて蟻川氏に
譲ったものという。膳所氏宅から蟻川氏宅に運ばれ、蟻川氏宅において改めて運送業者の手で
荷造りして原宿駅から九州に送られたのであった。
そして、そのトランクにはラッカーでぬりつぶしてあるが下にZZZZという膳所氏のイニシァルが
書かれてあるのである。つまり膳所氏のトランクが死体運搬に使われたということ。

二島駅から汐留駅に送られたZトランクの中に死体が入っていたのだから、このZトランクがそれ以前に
死体の入ったまま東京から送られてきたはずである。つまり 11/30 新宿駅から若松駅宛に送られた73キロの
Xトランクに死体が入っていたのである。そのXトランクと近松氏が二島駅に一時預かりしていた73キロの
Zトランクが二島駅で交換されたと考えるしかない。
ということは近松氏が自宅から持ってきて一時預かりしたトランクは、ZトランクではなくXトランクで
なければならない。なぜならZトランクにこそ死体が入っていたのだから。
そして、 11/25 膳所氏により原宿駅から二島駅宛に送られた19.8キロのトランクは
Zトランクであったことを膳所氏本人が証明するのだから、大きな矛盾となる。
ここが鬼貫警部を大いに悩ませたことである。

エドガー・アラン・ポー:盗まれた手紙

推理小説作家の創始者とも言われる。
盗まれた手紙は、隠すテクニックがテーマ。

デュパンのもとに やってきた警視総監
さるやんごとないお方の夫人が人に見せたくない手紙を
偶然そこに来た D大臣に持ち去られる。
それをもとに無理な政治的注文を受け、困って警視総監に取り返してくれるよう頼む。

警視総監は D大臣の留守をねらい、家捜し専門家集団の部下を使って探す。
しかし、いくら探しても D大臣の邸にはない。
絶対あの邸に置いているはず。

デュパンに、5万フランの小切手を書けば 探し物を渡すと言われて
半信半疑で5万フランの小切手を書くと
探し物は 引き出しの中から取り出されて 彼の手に渡された。
その手紙を確認して嬉しそうに外に飛び出す警視総監。

デュパンは私に語る。
(総監は、D大臣が何か人目につかない穴や隅に当然かくすものだと思っている。
だが、こうした面倒な片隅にかくすことは普通の人間が行うことなのだ。
品物をかくす場合、こんな面倒なやり方で処理された品物は
すぐ推測されやすいし、また実際推測されるものだ。
盗まれた手紙がどこか総監の検査の範囲にあったら、その発見は疑いなかったのだが)

推理する者が相手と同じ知能の水準に立つこと。
それが成功の秘訣だ。

たとえば、地図を広げてやる字探しの遊戯がある。
何か、市とか川とか州とか国とか
どんな名前でもいいけど
それを、ごちゃごちゃとややこしい地図の上に見つけることを
一方が相手に要求するんだ。
ゲームに慣れない者は、とても細かく記された名称をたずねようとする。
しかし上手な者は、大きな字で地図の端から端までわたるような名称を選ぶ。
このような文字は、あまり大きな字で書かれた街頭の看板や立て札のように
はっきりしすぎてかえって人目につかないのだ。

すでにこの盗まれた手紙のことを知ったデュパンは
緑のメガネをかけて D大臣の邸を訪問。(メガネは部屋を探る彼の目を相手に読まれないため)
さすがに隠す者と同じレベルにあるデュパンはたちまち見つける。
そしてわざと忘れ物をして 翌日取りに行く。
窓の外でちょっとしたさわぎのすきに、彼は用意した同じような手紙とすり替える。
無事 D大臣の邸を出た彼は、いつか相談に来るはずの警視総監の来るまで
自分の机の中に鍵をかけて手紙を保管していたというわけ。

この心理的トリックは、後にチェスタトンが
「木の葉は森へ、死体は戦場へ」と表現して応用している。
この小説は、ホームズの「ボヘミアの醜聞」で、手紙が写真に置き換えられて
模倣されている。

松本清張:ゼロの焦点


松本清張「ゼロの焦点」に出てくる能登半島の鉄道は
昭和33(1958)年当時の小説ですから
 金沢−津幡−羽咋−七尾−和倉温泉−田鶴浜−輪島
の国鉄健全時代でした(JRになったのは1987年から)。
そして、この小説の大事な舞台となる
 羽咋−高浜−三明
の北陸鉄道能登線があったのでした。(1972年廃止)

クライマックスの舞台はどこか?
失踪した夫を探していくうちに、すべての事実がわかったヒロインは
社長夫妻の泊まっている和倉温泉に行きます。

しかし、社長夫人が羽咋に行くと言って突然出かけ
それを知った社長も夫人の後を追って出かけたと知って
ヒロインは急ぎのコースをたどることにします。

社長夫人たちは、おそらく和倉温泉から羽咋に行き、そこから北上して高浜方面に向かうはず。

(時間がないから急ぐ)ヒロインは和倉温泉からタクシーで西に向かい峠越えをして
福浦の港に着いてから、高浜方面に南下するというコースをたどるのです。

小説「ゼロの焦点」を読み直してみると
クライマックスの舞台となる場所の手かがりの
重要な文章は下記のようになります。

●和倉温泉から羽咋に行く社長夫人、その夫人を追って後から出かけた社長
●話を聞いたヒロインは、タクシーで雪の峠を横断し、和倉から福浦へ急ぐ。
●タクシーは福浦の港から南に向かい高浜の方に行く。

(テレビドラマの)クライマックスの舞台は「ヤセの断崖」と言われていますが、そうではないと思います。

地図では
「ヤセの断崖」(能登金剛)
そのずっと南に「厳門」(能登金剛)
それからさらに南下して
「福浦港」
さらに南に下がると
「赤住」
さらに南下して
「高浜」
もっと南下して
「羽咋」
です。

夫は 牛山という海岸の断崖から身を投げた
その遺体は 田沼久子が 確認して引き取った。
牛山は能登金剛にある。

赤住の断崖
警察からの連絡で ヒロインが行って見ると 自殺者は夫ではなかった
警察で遺体の写真を確認した。

おそらく
松本清張は能登金剛の厳門まで来て
その付近に小説の舞台を考えていたと思います。

映画をつくるとき
一番絵になるのはどこだろう、それならヤセの断崖だ
ということになり、ヤセの断崖が選ばれたのでしょう。

そういうわけで小説の文章とは整合性がとれませんが
映画と小説は別のもの
ということで、そうなったのだと思います。

厳門には、ここを旅行した松本清張の短歌の説明板があります。

西村京太郎:幻奇島

 『四つの終止符』 1964年
 『天使の傷痕』  1965年、第11回江戸川乱歩賞受賞
このあと鉄道ミステリーのシリーズにいきつくまで,作者は試行錯誤的に色々な作品を書く。
この一種のトラベルミステリーもその中の一つ。
   幻奇島 1975年

『寝台特急殺人事件』1978年  鉄道シリーズのはじまり

御神島(おがんじま)
地図で見ると蝶の形をした島だが、この島に蝶はいない。
 マングローブがあってハイビスカスがあって、ハブがいるのに。

内科医の西崎は、雨の夜に酒気帯び運転で、いきなり車に飛び込んできて重傷を負った女を救急病院に運ぶ。
治療を終えて安静にしているはずの女が、謎めいた言葉「ニライ」を残して主人公の車を無断で運転し、茅ヶ崎の海に消えた。

彼は病院長の一人娘との結婚をひかえていたが、こうなっては小心の病院長は
彼に沖縄の果ての島の診療所勤務を命ずる。
自分の将来のことを考えると、さからえない主人公

こうして、西崎は小さな島の診療所へ追われた。
石垣島から漁船を改造した離島連絡船で島に向かう西崎、その船には民族学の教授と女の助手もいた。
島でたった一人の吉田医師は、西崎に診療所のことや島の情報を伝えたら本土に帰ることになっていた。

南海の果て、滅亡を予告された幻奇の島。 島の長老たちの語る、島の滅亡する兆候の言い伝え。
島民は穏やかだが、独自の文化と信仰を持っており、その独特の風習に目をそむける主人公。

この島の風景が、自分の車に飛び込んできた女が持っていた写真とそっくりなことに西崎は気がつく。
その女の写真を、村長の娘ナツに見せると姉だという。

そんな中、同じ船で島を調査に来た民族学者の教授が何者かによって殺害されてしまう。
警察をという主人公に、本土とは電話不調で連絡できないと村長が言うが、島民は全く動じることはない。

そうこうしてるうち、事件は立て続けに起こってしまう。犯人はいったい誰なのか?
ここは日本なのか。異文化を感じさせる神秘的な孤島ミステリー!

トラベルミステリーといいなが、この作品は通常のものとはぜんぜん違う。
島という閉鎖された空間での奇妙な慣習などに関係する事件を書いている。

八墓村や獄門島にヒントを得たのだろう。

内田康夫:津和野殺人事件

 
誰かが書いていたが
この作品は読みにくい。
だから、テレビドラマはわかりやかく変えてある(らしい)。

この作品は、筋が入り組んでいるから、わかりにくいと思う。
こみいった内容を、読者が考える暇を与えず、次から次と述べているようだ。
 もっと、スッキリした書き方もあったと思うが、作者のそのときの力量か。

 「浦上四番崩れ」は明治元年の話 浦上のキリシタンを各地の各藩22カ所に配流(はいる)した。
  津和野に送られた153名のうち36名の殉教者を出す。 乙女峠とキリシタン

昭和の世の中なのに、この推理小説は歴史を背景としたキリスト教信者の女性の悲恋

今回の舞台は“山陰の小京都”と言われる島根県・津和野。

その津和野の旧家・朱鷺家の一人が染井の墓地で殺害され、
偶然その第一発見者が光彦の母・雪江だったことから、この事件とかかわることになる。

旅の途中で出会った女性・久美が何度も夢で見ていた「赤いトンネル」とは?
そして家督問題で揺れる朱鷺家当主・紀江の視線が意味することとは…!?
親子の愛と旧家の家督問題が絡み合い、事態は悲しい連続殺人事件へと向かっていく…。


ルポライター・浅見光彦の母・雪江は、染井霊園で男の死体を発見する。
男は津和野きっての旧家である朱鷺一族の長老・(下の朱鷺家)朱鷺勝蔵。
勝蔵は神津家の墓の前で倒れており、その台座には不自然に動かされた跡があったことから、光彦は勝蔵が神津家の副葬品を取り出そうとしていたのではないかと推理する。

早速、光彦は神津家の墓の持ち主ある神津初男を訪ねるが、彼は心当たりがないと答え、叔父神津洋二あるいは(父の妹)叔母治子なら知っているかも知れないと言う。

神津洋二は、洋二の父が大学教授で戦中に津和野の学生を世話したことがあると言うが、それ以上は知らないと言う。

だが間もなく、神津洋二が津和野の近くのダム湖で死体となって発見される。

事件解決の糸口を探すため、津和野に向かった光彦は、道中で樋口久美・実加代の母娘と親しくなり、一緒に町を巡る。
光彦は、樋口母娘と話をするうち二人が津和野に訪れた理由を知る。

実は母・久美には行ったことのない、太鼓谷稲成神社の記憶があるという。
その記憶を確かめるため、東京から津和野にやってきていたのだ。
そして赤い鳥居まで来たところで、久美は突然激しく怯え始めるのだった…。

茶店の老婆(木本レン)が樋口久美・実加代を母娘を見て驚き、自分の息子は本郷区に住んでいたと言う。
久美・実加代がホテルのレストランでコーヒーを飲んでいると、元郷土館長の森泉泰晴が声をかけ名前を聞く。(茶店の老婆が電話で知らせたのだ)

翌日、もう一度会いたいと思う久美・実加代に、茶店の老婆木本レンが自宅で青酸カリ毒殺されたことを知る。

久美・実加代は東京に帰るが、残った浅見は次々と津和野の人たちから聞き出して、朱鷺家の跡継ぎ問題に迫るのだった。

津和野の由緒ある名家でおこる事件。
醜聞をさらさないよう関係者が口を閉じてしまうことで被害者が増え、解決が遅れてしまう!

横溝ワールド現代版という印象をもった読者もいる。
 『犬神家の一族』 『八つ墓村』  『獄門島』

アガサ・クリスティー:オリエント急行殺人事件

 
シリアのアレッポ駅からイスタンブールに向かうタウラス急行に乗るポアロ
フランスの名誉にかかわる大事件を極秘のうちに解決し,帰るところだった。

インドから来たアーバスナット大佐、バグダッドから来た若い婦人デベナム
二人は食堂車で初対面にもかかわらず、たちいった話をしていた。

食堂車の下から火が出て列車が止まった。
デベナムは(イスタンブールで)9時のオリエント急行に乗らなくてはいけないと言う。
しかし列車は5分遅れて出発した。

ポアロが イスタンブールのホテルに入ると、電報が届いていた。「すぐ帰国せよ」
しかたなく ポアロは9時のオリエント急行に乗ることにする。

ポアロはオリエント急行の一等寝台車を希望したが満席だった。
幸い 国際寝台車会社の重役(知人)ブークの口利きで、ハリスの乗るはずのふたり部屋の二等寝台に案内された。
出発まであと4分だが、ハリスは現れない。
しかし、同室になったのは、ハリスではなく(ラチェットの秘書の)ヘクター・マックィーンだった。

ラチェットはポアロに大金を払うからボディガードになってくれと頼むが、顔が嫌いだからと断られる。

列車がベオグラードについたら、ポアロはブークのいた一等寝台の一号ベッドに移る。
ブークはアテネからのふつう車両に移動した。

大雪で、列車はビンコブチとブロッドの間で立ち往生してしまった。

ポアロの隣の部屋のラチェットが夜中に殺された。
ブークから、ポアロは指揮を取って殺人犯を見つけるよう依頼される。

まず秘書のマックィーンから聞き取りをする。


この推理小説は,中学生の時に読んだのだが、こういう書き方もあるのかと思った。
 その後、これに倣った推理小説が出てくるのだが。

津村秀介:天竜峡殺人事件

 
被害者Aは平塚の七夕で殺された。死亡推定時刻は夜の10時頃。そのとき雨だった。

だんだん調べていくと、犯人はどうもBのようである。
男性AとBは豊橋で、横浜の女性グループ3人と一緒になり5人で小旅行のあと
本長篠から飯田線に乗る。

しばらく列車の旅は続くが、みんなは中部天竜駅で降り、Bだけそのまま飯田線に乗っていく。
その列車は16時50分に中部天竜駅を出た。(十数駅先の天竜峡駅にはBの実家がある)

みんなはタクシーで佐久間ダムを見学してから、一時間後に中部天竜の駅に戻り飯田線の上り17時44分発の列車に乗り、豊橋には19時35分に着く。
そして豊橋から19時44分発のこだまで横浜に向かう。
途中の小田原で21時16分にAが下車し、残りの3人の女性たちは21時35分に新横浜に到着。

Bはみんなと別れて、18時25分には天竜峡の駅に着いたはずだが、どうも夜の10時頃には平塚の犯行現場にいたようなのだ。
しかし、Bがその頃に平塚にいるには、みんなの乗った豊橋発19時44分のこだまに乗るしかない。
その後のこだまでは小田原に21時46分に着くので、東海道線上り22時4分発では平塚には22時24分になってしまう。

だがみんなの乗った飯田線の17時44分中部天竜発の上り列車に乗っていなかったし、豊橋19時44分発のこだまのホームでも見かけなかったことを女性たちが証言している。
(17時44分中部天竜発の上り列車の次の列車に乗れば、豊橋19時44分発のこだまには間に合わず、結局平塚に10時に着くのは無理だ)


なかなかローカルの交通事情に詳しい作家の苦心作 足で調べた鉄道トリック?

西村京太郎:京都 恋と裏切りの嵯峨野

十津川警部は仕事に疲れた時は 小さな旅に出る。
京都の宿屋に泊まったとき 寂し気な女が泊まっているのを見かける。

十津川警部が「何か、寂しい顔をしているのが気になってね」と言うと
女将が「苦しいから旅に出るんです かしら?」と応じたので
「ああ、太宰治ね。 そういう旅なのかな? あの女性は」と答えた十津川警部

女将から 化野(あだしの)念仏寺の先にある愛宕(おたぎ)念仏寺を教えられ
十津川警部は
愛宕念仏寺で 旅館で見た あの女性が じっと石仏を見ているのに気がつく。

  直指庵. ( じきしあん.)  大覚寺  大沢池  野宮神社  落柿舎  祇王寺  滝口寺


どうやら
作者は あの地下鉄サリン事件を意識して 新興宗教団体のことを書いたらしい。

京都住まいの作者は、京都人の行動が気に入らないらしい。

「京都では、怒ったり焦ったりした方が負けなんですよ。相手が喜ぶだけです」と京都府警の石野警部に言わせる。

「商店やデパートで店員の対応が遅いとか、接客態度がなっていないなどといって怒っているのはたいてい観光客です」
「京都人だって腹の立つことはありますよ。でも、そこで相手を怒鳴りつけたり、殴ったりしてどうなります? 
一時的には溜飲が下がるかも知れないが、相手には憎まれるし、次にその店やデパートに行きづらくなるでしょう。
結局、自分の生きる世界を狭くしてしまう。負けです。京都人はそんなバカなことはしません」

「じゃあ腹が立っても、じっと我慢するだけですか? 私にはとても出来ませんよ」と亀井刑事が言うと
「その代わりに、一緒に行った友だちとか、店に来ていた人に話しかけるんですよ。それも店員の対応が悪いとはいいません」
と石野は笑って言う。
「例えば、ここの店員さん、ゆっくりゆっくり仕事をしやはるけど、どこぞ身体が悪いのと違いまっしゃろかとか、
この店に来ると待つ時間が長いのでゆっくり出来てよろしいわ、とかね」

十津川も笑って言う。
「なるほど。そうですね。一つの文化なんだ」
「ええ、文化です。生活の智慧です。当人も傷つかないし、店員も反省する」

アガサ・クリスティー:アクロイド殺し

 
事件の全体は、シェパード医師の手記に記載されている。
しかし、この小説を読んだ読者は騙されるので、このトリックはフェアでないと批評されてたらしい。
今では古典的なトリックとなり、同じようなトリックが使われる推理小説はいくつかある。

いつもなら、ポアロのかたわらで、事件を記述するヘイスティングズが今回はいない。代わりにシェパード医師が事件を記述しているのだ。

キングズ・パドック屋敷の所有者・フェラーズ夫人が亡くなっているのを
シェパード医師は、死因を睡眠薬であるヴェロナールの誤った過剰摂取だと診断するのだが
医師の姉のキャロラインは、良心の呵責による自殺だと決めつける。

フェラーズ夫人の夫は一年前、大量の飲酒による急性胃炎によって亡くなったが、
キャロラインは、フェラーズ夫人が殺害したのだと信じていて、今回、彼女は自分のしたことに耐えられずに自殺したのだと言う。

この村にはもう一つの大きな屋敷があり、持ち主はロジャー・アクロイドという地主である。

彼には妻がいたがアルコールの飲みすぎで早くに亡くしていて、その代わりに、妻の連れ子のラルフを大事に育ててきた。
しかしラルフは義父との仲が悪く、口論がたえない。

またアクロイドは、弟の未亡人・セシルとその娘のフローラと一緒に暮らしている。
どうやら アクロイドはラルフとフローラが結婚してくれたらいいと思っているようなのだが。

村ではアクロイドとフェラーズ夫人がいつ再婚するのかとずっと言われてきたが、今回の一件で状況は大きく変わった。

そんな時、シェパード医師はアクロイドと出くわし、相談したいことがあると夕食に誘われる。

夜になって彼の屋敷に向かうと、フローラからラルフと婚約したことを伝えられる。

食事が終わるなり、アクロイドによって書斎に連れていかれるシェパード。
アクロイドは誰も聞いていないことを確認すると、フェラーズ夫人の夫は毒殺されたこと、毒をもったのは夫人であると打ち明ける。

シェパードは疑うが、夫人本人が明かしたのだとアクロイドは言う。
アクロイドはフェラーズ夫人に婚約を申し込んだが、悩んだ彼女は、耐えきれずにこのことを打ち明けたのだという。
そして、その秘密を知っている人物が一人いて、彼女はその人物からゆすられて大金を巻き上げられ精神的に参っていたのだ。

その人物の性別は不明だが、アクロイドは男だと断定する。
彼はフェラーズ夫人が何か遺言を残したはずだと言うが、その時、彼女からの手紙が郵便で届き、開封して読む。(すごい展開)
アクロイドは読み上げるが、肝心の相手の名前が出てくる前に一人で読むと言いだし、シェパード医師は仕方なく部屋を出て帰宅する。

帰宅したシェパード医師のもとに、アクロイドの執事・パーカーからアクロイドの殺害を知らせる電話が来る。

シェパード医師は慌てて屋敷を訪れるが、パーカーは電話をしていないと言う。
シェパード医師は部屋にいるアクロイドに呼び掛けるが返事はなく、非常時ということでドアを壊して中に入る。

すると電話の通り、アクロイドは死んでいる。
彼は背後から短剣で刺されて死んでいた。
鍵穴には鍵がさしこまれたままドアは閉まっていて 窓が開いていた。

容疑者のラルフは行方不明、誰も彼がどこにいったか知らない。

森村誠一:人間の証明

 
 黒人青年ジョニー・ヘイワード 東京ロイヤルホテルのスカイダイニングルームで(エレベータから降りた直後)死ぬ
 清水谷公園で彼を乗せたタクシー運転手の証言(彼はストウハと言った)

日本からの依頼で ケン・シュフタン刑事の真面目な調査
 ニューヨークのハーレムに住む 父と息子(ジョニー・ヘイワード)  父の高級車飛び込み事故の保険4千ドルで日本へ

日本のキスミーに行く この言葉から 霧積(きりずみ)を思いつく棟居弘一良(むねすえこういちろう)刑事

ジョニーがタクシーに残した 西条八十詩集  麦わら帽子は清水谷公園で発見
などの手がかりで 棟居刑事が霧積(きりずみ)を思いつく

八杉恭子と群陽平は夫婦
  息子恭平はマンションで朝枝路子と同棲 車で人身事故起こす そのとき熊のぬいぐるみ紛失
  被害者文枝の遺体を隠すが のちにアベックに発見される。

小山田武夫は妻文枝の不倫に気づく 不倫の相手は 新見部長(東洋技研)とつきとめた。
新見は (轢き逃げ現場に残された)熊のぬいぐるみを持って 恭平を追ってアメリカへ 恭平が車で文枝を轢いたこと確認

おたね婆さんの死
 種は 恭子を八尾出身と知っていて 泊まりに来た黒人の家族連れをよく覚えていた。

ケン・シュフタン刑事は行きずりの男にナイフで刺され死ぬ。
 彼は若いとき日本人の若す女(八杉恭子)をはずかしめ 止めに入った棟居弘一良を殺した。 (作者は偶然すぎる配置をする傾向) 	 

フィルポッツ:だれがコマドリを殺したのか?

将来を嘱望される若き美青年医師、ノートン・ペラムは、海水浴場で大執事の父親と散歩していた
美貌のマイラ(ミソサザイ)とダイアナ(コマドリ)の姉妹に出会い、妹のダイアナと互いに一目惚れしてしまう。

しかし、ノートンの伯父のジャーヴィスは、お気に入りの秘書のネリー・ウォレンダーと結婚しなければ 
遺産相続しないと意思表示していた。

一方のダイアナも 準男爵のベンジャミン・パースハウス卿が求婚をしていた。
それでも ノートンとダイアナは互いの相手を振り切って結婚を決意する。
激怒したジャーヴィス伯父は ノートンを遺産相続人から外すことを彼に言い渡す。

結婚してから 伯父の遺産相続ができない と知ったダイアナは、ノートンを激しく憎悪するようになる。

ダイアナに振られたベンジャミン卿は、自分に好意を寄せていた姉のマイラと結婚し、南仏のマントンで新婚生活を送っていた。

ところが、事故に遭ったマイラが膝を骨折して 、自分の足で歩くのもままならないようになる。

生きる気力を失ったマイラを励ますために ダイアナはマイラにつきっきりで看病する。
そうしてようやくマイラが快復するようになったころ、ダイアナに異変が訪れる。
顔色が悪く気分がすぐれない日が何日も続くようになる。

日に日に衰弱していくなか、ダイアナは 夫が自分に毒を盛っているとマイラに告げ、
自分が死んだら ノートンを告発する手紙を 父親に渡すよう姉夫婦に頼む。
母親の危篤の知らせを受けたノートンがイギリスに戻っているとき、謝肉祭で町がにぎわう中、ダイアナはマイラに看取られて死を迎える。

手違いでノートンに知らせが届かないまま葬儀を終えた後、ベンジャミン卿夫妻は、
ダイアナの手紙をコートライト大執事に渡すかどうかを相談するが、
ノートンの人柄を知るベンジャミンは、彼が妻を毒殺するとは信じられず、また波風を立てることを嫌い、
手紙を大執事には渡さなかったため、ダイアナの死に誰も疑問を抱かなかった。

それから1年以上経った頃。ジャーヴィスの死後、遺産を相続したネリー・ウォレンダーと兄のノエルは、
チズルハーストに引っ越してきてノートンと親交を深めていた。

ノートンはダイアナの死後、鬱ぎ込む日が続いていたが、ノエルのお膳立てもあり、元々好意を寄せ合っていたネリーと婚約する。

一方、コートライト大執事の家を訪れていたベンジャミン卿夫妻が、ダイアナの手紙をめぐって口論していたところを大執事に聞かれてしまう。

ダイアナの手紙を読み すべての経緯を知った大執事が ダイアナの遺体を発掘させたところ、致死量のヒ素が検出された。
こうして、ネリーと結婚式を挙げたその場で ノートンはダイアナ殺しの容疑で逮捕される。

ノートンの友人で私立探偵のニコル・ハートは、夫の無実を信じるネリーとその兄ノエルから依頼を受け、真相究明に立ち上がる。