久美は朱鷺家本家の長男友義と杉本依子(よりこ)の間に生まれた娘だった。 依子はクリスチャンのため、二人の結婚は友義の母紀江(のりえ)から許されず、 出征して死んだ友義のあとを追うように死んだ依子、残された久美。  依子は久美の手を引いて太鼓谷稲成神社へ毎日登った。その結果衰弱した。 当時の友義と依子の悲しい恋愛を、東京で助けて津和野で再会した教会のシスター後藤宣子(のぶこ)から浅見は聞く。 依子と久美を世話していたのが下の朱鷺家の勝蔵と木本レン(後に茶店の老婆として久美と再会)だった。 勝蔵は、両親が亡くなった孤児久美を、朱鷺家の召使いのような竹内栄一の養女にする。 やはり孤児だった依子の遺骨は、見るに見かねた(初男の祖父)大学教授が自分の家の墓に入れてくれた。 神津初男の父正和と朱鷺友義はともに帝大の学生で、大学教授が世話していた依子と友義が結婚を誓いあったのだった。 朱鷺家の跡取りは長男友義が亡くなったため次男友徳が嗣いだが一人娘しか持たなかった。 その一人娘真紀の婿養子が慶四郎であるが、子供はさずからず真紀は死んでしまった。 困った朱鷺紀江は,死んだ友義の娘久美を探し出すよう勝蔵に依頼したのであった。 朱鷺勝蔵は、依子を預けた竹内栄一に久美・実加代母娘を朱鷺家の跡継ぎになるよう話すが、 怒った竹内から拒絶され、墓で殺されてしまう。 そのとき、二人は墓から出したロザリオを確認している。 竹内は墓から出した依子の遺品のロザリオを利用して,朱鷺友義の遺族の偽の母娘を知り合いに頼んで、 偽母娘が朱鷺家に名乗り出る。 慶四郎と関係の深い使用人日隈啓子が死体で発見された。土蔵の白壁に血で書いた「寛一」という文字。 岡の朱鷺家の寛一が紀江と相談のうえ、友義の遺族の偽の母娘を跡継ぎに推薦していた。 (偽の母娘のほうから名乗り出た) 謎を解いた浅見が説明するために、みんなの前に現れた。 日隈啓子は慶四郎を守るため自殺したという。 木本レンを殺したのは寛一、彼はレンが久美・実加代のことを知り、偽の跡継ぎの母娘のことを言いふらすのを恐れたから。 それを浅見に指摘され、激しく否定するが。 すべてを知って説明する浅見が朱鷺家に乗り込み、真の跡継ぎになるはずの樋口久美・実加代のことを知らせる。 だが、いまところ久美・実加代の意志は朱鷺家の跡継ぎを受け入れないという。 神津洋二がどうして殺されたのだろう。どうしてロザリオが偽の跡継ぎに利用されたことを知ったのだろう。 彼も墓の中を確認して事情を知ったのだろうか。 この作者はときどき、説明不足の書き方をする。あとは読者が推察しろ,考えろというかもしれないが。 作者の説明不足、書き方不足を感じる。 西村京太郎や山村美紗なら見られないこと。   まあ、お前が書いてみろと言われても書けないけれど。