カン水

ラーメンにこしを与え、細くのばしてもちぎれにくくするカン水。
カン水は小麦粉のタンパク質を固く引き締める効果がある。
日本ではカン水のことを、鹹水と書かれるが、これは誤りである。
ほんらい、鹹水とは塩水のことで、
アルカリ性の水をあらわす意味なら、鹸水という字を使わなくては いけない。
ということが ラーメンのカン水の説明(岩手県の歴史散歩 その80)に書かれてある。

夕べ(1999.5.8)見たテレビで、中国の古来からの発酵食品の作り方
を説明していたが、鹹水つまり塩水に野菜や魚をつけ込んで、発酵させ
美味なる食品を作り出していた(その臭いはひどいらしいが)。

中国には塩水の湖も多い。そういう塩水の湖を鹹湖というのだが、
鹹湖の岸辺や干上がった川の川岸に、アルカリが結晶して固まる。
それを鹸という。
中国人はそれを切り出して洗濯に使う。
石鹸という言葉はこれから来ている。

何かのきっかけで、鹹湖の塩水を使って麺をうつと美味しい麺ができることを
発見した中国人は、麺製造の際に、鹹湖の岸辺に固まった鹹石を使うようになったらしい。
中国の元代初期の文献に、鹹石の名前が見えるという。
大正11年に札幌北大前に開店した竹屋食堂でも、横浜から送られてきた
鹹石が使われていた。

カン水の役割
・饅頭用に作る生地を発酵させたとき、酸味を中和させる。
・麺に伸びと弾力性を与え、いわゆる「こし」がでることになる。
・干物を茹でて戻すとき柔らかくする。
・野菜を茹でるとき鮮やかな色を保つため。

カン水とは天然ソーダ水のこと。
炭酸カリウム、代用品として炭酸ソーダ(洗濯用)や重炭酸ソーダ(重曹)も
使われたという。病気にならなかったのだろうか。

今は食品衛生法で、カン水には炭酸ナトリウムNa2Co3、炭酸カリウムK2Co3重合リン酸塩
だけが含まれることを許されている。

カン水をつくるとき鹹石が手に入らないときは、ヨモギや草木を燃やした灰を
利用した。

漢和辞典を見ると、
鹹 カン しおからい
鹸 カン ケン しおけ、 セン あく、水に灰を浸してとったうわずみ
となっている。

鹹湖、鹹湖、鹹石という言葉が中国にあって、鹹石を麺製造時に使っていたのだから、
天然ソーダの意味で鹸の字を使うべきではあっても、鹹の字を使ったことは
誤りではないだろう。当時の中国人ですら厳密に区別していなかったのだろう。
鹹水は塩水の意味と鹹石を溶いた水の両方の意味で使っていたのではないかと思われる。

鹹と鹸 これらは日本で使う漢字だが
中国では今どんな字を使っているだろうか。
   
    下の字はアルカリをさす。
どちらも発音は jianである。

シルクロードのカンスイ

カンスイの意味はドイツのプレッツェルにも存在していた。