やさしい物理学

物理学が苦手だった私がいつのまにか構造力学を教えるなんて。
 (古いやつこそ、新しいものをほしがるもんでございます)

大学生の時、物理実験は同じ実験を3度繰り返した。
つまり、土曜日に(アルバイトなどで)実験のできなかった者のために、
特別に実験装置を使うことができた。本番の実験(水曜日が正規の時間)でよくわからなかったことを
この実験でやり直して納得することができた。
さらに次週の実験もあらかじめ、この土曜日にリハーサルすることができた。

物理実験の他に、化学実験もおさらいがしたかったが、化学の先生は試薬が高いから
同じ実験を2度することは認めてくれなかった。

私は地学実験も生物学実験も同時に履修した。
生物学実験などは回を重ねる度に受講者が減り、ついに私一人になってしまった。

     physicalの意味

「角運動量保存則」「ケプラーの第二法則と水素原子」
フィギアスケートの選手がスピンをする。
腕を伸ばして回転運動をしている時より
腕を体に密着した時の方が回転速度がグンと早まる。

あの華麗な演技は角運動量保存則の応用である。

氷とスケート靴の摩擦はわずかなので無視できる。
このような場合に、腕の質量、腕の長さ、体の回る速さ
の3つの量で定義される角運動量は変わらない。
(一定である)

腕の長さを短くするほど体が高速回転をすることになる。

角運動量一定の法則は
回転している物体について
 (半径)x(速さ)=一定
と言い換えてもおなじである。

円運動を考えると
円周上の物体が1秒間に進む長さ(速さ)の両端を
中心と結んで小さな三角形を作ってみる。

この三角形の面積を面積速度という。
面積速度は
 (半径つまり高さ)x(速さ つまり底辺)x(1/2)
に等しくなる。
(1/2)を省いて
 (半径)x(速さ)が一定と考えてもよい。

このことから
角運動量一定とは面積速度一定と
言い換えても内容は同じになる。

面積速度一定は
太陽を焦点とする惑星の運動
つまり
ケプラーの第2法則として有名だ。

ケプラーはチコブラーエの膨大な観測データを元に
これまた猛烈な計算をして得たものだ。

チコブラーエは地球を中心に太陽が回り
その太陽の周りを惑星が回転するという
おそろしい説を考えていたらしい。

弟子のケプラーは先生の心を知ってか知らずか
現在の太陽の周りにすべての惑星が回る説を
考えて、そのモデルでもって計算して
ケプラーの第2法則を導き出したわけだ。

この第2法則がなぜ成り立つかは
ニュートンによって証明された。

水素原子は
中心にプラスの電気を帯びた原子核(陽子)があり
その周りをマイナスの電気をもった電子が公転している。

水素原子の場合にも
角運動量一定の法則が成り立っている。

この場合、任意の角運動量をとることができない。
電子がとり得る軌道は、角運動量が
プランク定数hの1/(2π)の整数倍に相当する
軌道だけに限定される。

ハンマー投げやフィギアスケートの場合
角運動量は連続的な量(アナログ量)をとれるが
水素原子のような場合には
角運動量は飛び飛びの離散的な量(ディジタル量)
になるというわけだ。

天体の動き
フィギアスケートのスピン
水素原子
みな相似の関係があるのが不思議だ。

物理学者は みな物理法則が成り立つから
あたりまえだと言うかもしれないけれど。

「共振」
簡単な実験をします。
おもりを糸でつるし、手を左右に動かしてみます。

はやすぎても、ゆっくりすぎても
おもりはほとんど動きません。

ところが、あるタイミング
つまり振り子に固有な周期と一致したタイミングで
動かすと振動は大きくなります。

                      

外力の振動周期と物体の固有振動周期が一致したとき
激しく振動する
いわゆる共振(共鳴)現象が起きるからです。

                              

関東大震災のときの建物の被害を調べると
つぎのようになりました。

            地盤の硬い山の手  地盤の軟らかい下町
木造全壊 %     1〜2          10〜15
土蔵全壊 %     10〜20        0〜1
地震の卓越周期    約0.3秒       約0.7秒

建物を建てるときは、共振しないような設計をすることが
大切です。
当然、橋の設計にも共振をさけることが大事です。

振り子を振動させるには共振させたらよいように
ブランコもこぐことで共振させているわけです。

オーディオ製品も共鳴させるように作ります。

橋や高層建築の設計では地震のとき共振させないように設計します。

物理現象は1つですが、それをどうとらえるか
目的をどう持つかで対応が違います。

「オームの法則」
1827年にオームは
  E=IR
を発表した。
 ここで I:導線を流れる電流
     E:電圧
     R:電気抵抗

電気抵抗の単位オームΩは
彼の名前から取られている。

しかし、発表された当時は、理解されなかったという。

オームはドイツ人。
彼の画期的な業績もヘーゲルの自然哲学が支配していた
ドイツでは認められなかった。
むしろ、イギリスのローヤル・ソサエティから最高メダルを
受賞してから、ドイツ国でもようやく認められたという。

くわしい実験をすると、導線の抵抗は一定ではない。
銅や白金のような金属は、温度が上がると抵抗が増加する。

電流とか電圧は直接目に見えない。
計測器を使えば測定できるが。
ここから私の電気嫌いが始まった。

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aumは聖なる音。
密教では、a は法身(ほつしん)、u は報身(ほうじん)、
m は応身(おうじん)の三身を表す。
この聖音を唱えると成仏できるのでしょう。

法身:宇宙の真理としての仏陀(たとえば毘盧遮那(びるしやな)仏)。
    大日如来、奈良の大仏のこと。
報身:たとえば盧遮那(るしやな)仏や阿弥陀仏などとして具象化された仏陀。
応身:衆生済度のために種々に身を変化して姿を現した仏陀。
   古代インドで生まれたお釈迦様はこの応身に含まれる。

ヒンドゥー教では、宇宙の創造のブラフマー神(梵天)、宇宙の維持のビシュヌ神、
宇宙の破壊のシバ神を指していたらしい。

素人には、仏教をはじめたお釈迦様も、阿弥陀如来も大日如来も
地蔵菩薩もみんな同じと考えてよいと思います。
人間のために姿を変えているが、みなお釈迦様の変装(?)した
ものだから。と説明する私はばちが当たるか。

本来aumは密教の聖音なのです。真面目な仏教用語か。

「ものの大きさと強さ」
体長が2倍になると、体積は8倍
でも、それを支える足の面積は4倍

豆腐を積み重ねたら、どのくらいでつぶれてしまうか。
豆腐にも色々な種類があるでしょうが、
スーパーで買った豆腐を測定したら
 重さ 390グラム
 体積 380立方センチメートル
 密度 1.03(グラム/立方センチメートル)
となりました。

まず、豆腐におもりを乗せてみました。
おもりを増すと、豆腐から水がどんどん浸みだして
縮んでしまいます。どこで崩れるかは不明確でしたが、
一応5キログラムで壊れたことにします。

換算すると約60センチメートルになります。
つまり、豆腐はこれ以上高く作れば、
自分の重さに耐えられず崩れてしまうわけです。

丈夫にしようとして太くしても、崩れる高さは変わりません。
太くしただけ重くなり、豆腐の底面の単位面積当たりの力
つまり圧力は同じになるからです。

いま大きな象と小さい象がいると考えます。
大きな方の象は小さい方の象の体長が2倍とします。
そうすると体積は2*2*2=8倍になります。
体の平均密度を等しいとすると、
大きな象の体重は小さい象の8倍になります。

しかし、足の断面積は4倍にしかなりません。
相似形のまま全体の長さが2倍に大きくなると、
足は体重を支えるために2倍の負担を受けることになります。

象やカバのように大きい動物は体のわりに
太い足をもっていないと、自分の体重を支えきれないのです。
蚊やかげろうのプロポーションと比べると興味がわきます。

           

                                        

だから、恐竜も大きくなると自分の体重を支えるのがやっとで、
きっと陸上よりも水中にいる方が楽だったのではないかと
想像されます。

そういうわけで、ほ乳類の鯨は海の生活を選んだのでしょう。
陸上にいたら自分の大きな体の重さで、体のあちこち無理が
かかるでしょうから。

模型実験でも寸法を1/2倍にすると、体積は1/8倍、底面積は1/4倍になる。
したがって底面積当たりの力、つまり圧力(応力)は1/2倍になる。
この1/2模型を使って、自重による圧力(応力)は求めようとすれば
このままでは1/2の大きさの圧力(応力)しか求められないから、
自重の2倍に相当する力を作用されなければならない。
模型の大きさを小さくすると、そのままだと圧力(応力)も小さくなるから、
それだけよけいに力をかけないと求められなくなる。
そんなに大きな模型を作られないときは、遠心力を使って実験をすることがある。
たとえば1/100の大きさの模型を作り、100倍の遠心力をかけると
(模型の100倍の大きさの)実物の自重による圧力(応力)が得られる。
    参考 地盤工学会:地盤工学ハンドブック

「ものの圧縮と伸び」
石は圧縮にはきわめて強いが、引っ張られると
とても弱いのです。

ギリシアの神殿を見ると、たいてい柱だけ残っていて
水平な梁はありません。

私はぼんやりと、これは戦争などで破壊されたから
と思っていましたが、間違いでした。

最初は柱と柱の上の方に、水平の梁が置かれていたのです。
しかし、この梁にも自重(自分の重さ)が作用するため、
年月がたつと曲がってきます。
目には見えないかもしれませんが、梁の上側には圧縮力が
働き、梁の下側には引っ張り力が働きます。

圧縮力には耐えられても、石は引っ張り力を受けて
いつしか下側に亀裂が生じます。一旦亀裂が生じると
有効な断面が減少し、ますます抵抗力を失い、
亀裂が大きくなっていきます。
そして、ついには石の梁は破断して、自然に落下したわけです。

これに対して、南フランスやイタリア、スペインなどに
ローマ人が造った石のアーチが残っています。

アーチは石のブロックを積み上げて、アーチ形に
したもので、石は互いに圧縮しあって、自重などを
支えています。そのため、引っ張り力などが生じにくいので
長い年月に耐えて今日も残っているのです。

アーチダムもこの圧縮力が作用するアーチの原理を
うまく利用しています。

      これに関する質問と回答

「地球の温暖化」
最近、地球規模の環境問題として、地球の温暖化があります。
先進工業国の化石燃料の消費と、焼畑農業などの森林破壊による、炭酸ガス(CO2)の増加が原因とされています。

炭酸ガス(CO2)の分子は、4*10**14, 1.23*10**14, 4.8*10**13(ヘルツ)の振動数で振動します。
CO2の分子は太陽光のうちの3つの波長の赤外線に共振し、赤外線を吸収し、再び外へ放出します。

つまり、CO2が太陽の赤外線を取り込んで共振し、やがて放出された赤外線は
ほかのCO2を振動させるのに使われたりして、なかなか
大気圏に放出されない。

結果的に大気中の赤外線が増加して、温度が上昇する。

そもそも、CO2が赤外線を取り込まなければ、赤外線は
宇宙のかなたに飛んでいってしまうのに。(CO2はよけいなことをする)

CO2を減らせば、それに応じて赤外線の取込み量も減るから、
温暖化がおさえられる。

だから、積極的に植物を植えましょう。海の海草もCO2対策に
効果があるといいます。

この場合の赤外線は、化学反応の触媒のようなもので、
それ自体は(CO2分子を振動させても)減らないのでしょうか。

さて、化石から我々は過去に地球の歴史で
温暖化が起こったり、氷河期になったりしたことを知っています。

はるか人間の現れる前から、CO2が大量に存在し、
そのあと植物の大繁殖時代(石炭紀)もありました。

この盛岡でも今より暖かった時代もありました。
化石を見ると、今より暖かく南方の植物が棲息していた
こともわかっています。

その反対に、早池峰や奥羽山脈に高山性の蝶が
分布していますが、これらは当時日本中が寒くて
至る所に棲息していたのが、だんだん暖かくなり
山の上に追いやられていった結果なのです。

高い山の上にコマクサがはえているのも同じ理由。
高山を飛び飛びに移動したわけではなく、昔寒いとき
いたる所にあったのが、それから暖かくなり
山の上に追いやられた。

氷河期に大陸からやってきたチョウセンアカシジミのこと。

ということで、人間の力を越えた、地球の何かの力による
温暖化、寒冷化の現象がありました。
(化石からわかる)
なにやらフーリエ級数で表せる振動現象があるかもしれません。
(地球物理学や天文学の世界か)

地球の温暖化とプレートテクトニクス

地球のきまぐれはそういうわけで存在するのですが、
人間がわざわざ温暖化に協力して、自分たちも
苦しむ必要はないと思います。

温暖化というテーマで、物理、化学、生物、地学の
知識が必要だということがわかります。
自然科学は対象は1つなのに、考え方のアプローチが
違うことが問題です。

「観察結果の整理」
「ゾウについて」という課題が出された。イギリス人とフランス人はそれぞれ動物園
に行ってゾウを観察し、それぞれ「ゾウ飼育の収益性」「ゾウの恋愛」という論文を
書いた。ドイツ人は動物園に行かずに図書館に行って万巻の書を読み、「ゾウの本質」
という論文を書いた。
日本人も動物園には行かずに図書館に行って万巻の書を読み、「ドイツにおける
ゾウ本質論の系譜」という論文を書いた。(長尾龍一『法哲学入門』より)

1次資料を集めてくること(現地調査)も貴重ですが、その整理も大切です。
考察を加えることで、ものの本質が見えてくる。
デンマークの天文学者チコ・ブラーエは生涯を天文観測にささげた。
その膨大なデータを整理したケプラーはケプラーの法則を作った。
ケプラーの法則をさらに整理し直し、すっきりした力学体系を作り上げたのが
ニュートン。 

「フックとニュートン」
ロバート・フックは実験が得意で、ニュートンは数学や理論に優れていた。
フック 1635−1703
1663 オックスフォード大学マスター・オブ・アーツ(修士:教授資格)
当時の大学は基本的に牧師、官僚、医師の養成機関(理学部や工学部なし)。
ゲーリケの真空ポンプ(マクデブルクの半球)
実用になった真空ポンプはゲーリケとフックのものだけ。
フックはボイルの有能な助手として研究活動わ続ける。
ボイルの真空ポンプと呼ばれるものはフックが完成した。

王立協会はフックをグレシャム・カレッジの教授に就かせた。
フックは王立協会からカレッジ内に住むことを許された。
・毛細管現象の本
・天文観測機の本
・ミクログラフィア(顕微鏡観察集)
細胞の発見 コルクの細胞 ほかにも微細なものの顕微鏡写真
 化石 フックは過去の生物の遺骸であると述べた アンモナイト(遺稿集)
 1664王立協会やっと発行 フランス、ドイツでも評判。
フックは優秀な長大望遠鏡を作製する卓越した天文学者。
天文機械におけるユニバーサル・ジョイント(フック・ジョイント)。

1672 ニュートン 王立協会の会員に選ばれる。
ニュートン 光の粒子説 光の直進性
フック 光の波動説 光の干渉
二人の理論の対立はアインシュタインが波束の概念でまとめる。

ニュートンは反射式望遠鏡を提案した。
フックはそれを改良しながら、反射式望遠鏡は屈折式望遠鏡に
及ばないことを述べた。当時の技術ではやむをえなかった。
反射式が実用的になったのは1720年以降である。そして、そのころ
屈折式も虹の隅取り問題が解決され、反射式が屈折式をしのぐことは
歴史的に一度も実現されなかった。
おおいに傷ついたニュートン

名声と実力のフックは王立協会の実験主任、グレシャム・カレッジ教授
さらにカトラー教授も兼務。
新人のニュートンはケンブリッジ大ルーカス教授。
フランスのカセグランはニュートンより3ヶ月前に同じ方式の望遠鏡を発明したと批判。
光の波動論者ホイヘンスもニュートン批判。
疲れたニュートンは王立協会の会員を降りたいという。
オルデンバーグから王立協会の会費を免除すると説得され、会員はやめなかった。

1675年12月のニュートンの光学に関する論考を発表。
フックはこれに対して、主たる部分は自分のミクログラフィアに含まれていて、
ニュートンはいくつかの点を改良したにすぎないと主張。
フックは「ニュートンはフックの仮説を盗んだ」と日記に書いた。
ニュートンは、フックもデカルトたちの成果を使っているとオルデンバーグに書いた
いちおうフックとニュートンは仲直りした。
フックの死後にニュートン「光学」出版。

1677 オルデンバーグの死後、王立協会の幹事をフックが引き継ぐ。
惑星の運動に関するニュートンの仮説を催促するフックの手紙。
フックは惑星の運動が太陽の引力によるものであること、引力が天体を直線から
逸らすのだということを理解していた。
後にこの考え方がニュートン力学に影響与える。
ニュートンの書簡で厳しいフックは彼の誤りを指摘しながら、結果的に
ニュートン力学を完成させる手助けをしたことになる。
フックは手紙の中で引力が距離の逆二乗に比例して変化すると定式化している。
ニュートンはフックの文通の誘いに刺激され、約15年前の研究に立ち戻り
しっかりと数学的にまとめあげた。

1684年1月 王立協会中心人物レン、フック、若手天文学者ハリーらが
力学の話題をした。
引力が距離の逆二乗に比例の証明をフックはできなかった。
ハリーはニュートンがそれを理解していること証明もできていることを知った。
ニュートンにすすめたハリーはプリンキピアを王立協会に提出(1686年4月)。

ついに協会は出版の許可を与えた。しかし、費用はハリーが負担することとした。
プリンキピアに自分の権利を主張するフック、つまりニュートンはフックの
アイデアを一部借用したと書いてほしかった。
引力が距離の逆二乗に比例 ニュートンは数学的に証明できたがフックは
できなかった。

フックの死後半年にニュートンは王立協会の会長になる。
フックの死後、ニュートンは王立協会をグレシャム・カレッジから移転する
(かねてから老朽化していたので移転の話があった)。
王立協会にフックの肖像画は残っていない。
実験屋のフック  理論家のニュートン

英国の王政は科学の発展に影響を与えた当時の英国史

中島秀人 ロバート・フック ニュートンに消された男、朝日選書