ニーベルンゲンの歌 Nibelungenlied

ドイツの英雄叙事詩。 1200〜05年ころ成立した。
ニーベルンゲンの宝の保持者ザンテンの王子ジーフリト(ジークフリート)
が、ブルグント国王グンターのイスランド女王ブリュンヒルトに対する
求婚を「隠れみの」の力で助けた。その功績により、グンター王の妹
クリームヒルトと結婚した。

つまりブルグント国王グンターはイスランド女王の美しいブリュンヒルトが
戦いで自分に勝たないと求婚者と結婚しないという話を聞いて、なんとしても
ブリュンヒルトに勝って彼女と結婚したくなりジークフリートに助けを求めたのであった。

その後に二人の王妃は夫の自慢をしたとき、クリームヒルトは
兄グンター王が自分の力でブリュンヒルトに勝ったのではなく、
クリームヒルトの夫ジーフリトの力を借りたということを
言ってしまう(ブリュンヒルトは自分に勝った男と結婚すると言っていた)。
侮辱されたと思ったブリュンヒルトは怒って、ジーフリトを殺そうと
決心する。

ジーフリトは実はニーベルンゲンの宝物を手にいれたとき、
宝物の番をしていた龍を戦って倒し、その龍の血を浴びたため不死身
になった。しかし、龍が死ぬときしっぽで菩提樹(リンデン・バウム)
の樹を一撃したため、その葉が一枚彼の背中に落ちて、その部分だけ
龍の血を浴びなかった。そこが彼の唯一の弱点であった。

ブリュンヒルトの重臣ハーゲンはそのジーフリトの秘密を聞くことができ
不死身と思われた彼をとうとう倒すことに成功した。

王妹クリームヒルトはのちにフン王エッツェルと結婚し、報復のため
ブルグント族を招き、そそのかして両族を戦わせ両族とも全滅させる。

悲劇のきっかけはそもそも
二人の王妃ブリュンヒルトとクリームヒルトがお互いに自分の夫くらべを したのだった。
どちらも自分の夫の方が強いと内心思っていた。

ブリュンヒルトは強い女だったので、約束どおり自分に勝った男と
結婚したのだから、自分の夫が世界一強いと思ったのだ。

だが、本当はクリームヒルトの夫であるジーフリト(ジークフリート)が
竜の血を浴びて鋼鉄の皮膚になったから、世界一強い男になったのであった。

自分より弱かった男に負けて、そうと知らずに結婚したということを
夫の妹から知らされてブリュンヒルトは怒ったこと、怒ったこと。
それは大変なもの。

竜の血を浴びなかった体の一カ所だけはジークフリートの唯一の弱点だった。
その夫の秘密を誰にも話さなければよかったのに。

伝説でジークフリートが死んだとされるオーデンヴァルト
(ただし必要におうじて文字コードをドイツ文字に切り替えてください)

この作品のもとになっているのは、ライン河畔ヴォルムスのブルグント
国王のグンターのフン族に対する敗退(437)などの歴史であろう。
 (このフン族とは中国を追われた北匈奴の子孫であろうといわれている)

この内容、形式は北ヨーロッパの「エッダ」におもかげを残している。
中世騎士道の精神と作法の底に、古代ゲルマンの英雄精神が根強く
流れている。けんらんたるキリスト教的儀典にもかかわらず、
登場人物の思想行動は異教徒的・ゲルマン的である。

エッダ Edda
「古代北欧の神話および英雄伝説の集大成」と定義されている。
その成立はだいたい9〜12世紀のものと考えられる。

これらの歌謡の発生地はノルウェーであったが、そこは完全に滅んで、
彼らの移住地であったアイスランドに保存されたものが今日に伝わった。

アイスランドにはキリスト教の伝来も渡来も比較的遅かった。
そのため彼らの異教的ゲルマン精神がエッダに残されたのであろう。

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