キルギスタン〜新疆ウイグル自治区、文化交流及び親善訪問の旅

7/19   キルギス−トルガルト峠−カシュガル

本日は、この旅行のハイライト。天山山脈のトルガルト峠を越えて中国カシュガルに入る。
後からわかったのだが、ほんとにこの日はいろいろなことがあって、はらはらどきどき。
まことにドラマチックな1日だったのである。

現地時間午前3時(日本時間6時)に起きて、荷造りをしてから
午前4時(日本時間7時)に出発した。まだ暗い。そして雨降りであった。

サナトリウムのすぐ外には、食べ物や飲物を売る店があった。その隣に包があり、
昨日はお茶を飲みに寄った。昨日のうちに、今朝の朝食と弁当の用意を頼んで
おいたのは、何事にもよく気のつくアリム氏であった。

こんな早朝と思う時間に、それでも約束通り我々の食事は用意されていた。
めったにない商売なので、この包の女主人はほくほくだったろう。従業員の黒髪の
タイツ姿もびしっときめていた大柄の女性は、日本に連れてくればなかなかの美人と
思われたが、彼女にも早朝手当が払われたのであろうか。
私は昨日の食べ過ぎのせいか全然食欲がなく、水筒に紅茶を入れてもらうだけだった。
     包の合理的な構造小画像

あいかわらず雨が降り続く中、車はナリンめざして走る。
アロレーンという一昨日来たことのあるT字路まできたら、ガソリンスタンドがあり、
我々の車にガソリン(軽油)を入れることができた。高地を走るから普通のガソリン
ではいけないという。ここもセルフサービスだった。世界でも日本だけ
セルフサービス店が少ない。
   ガソリンスタンド小画像ОПЕРАТОР OPERATOR

しだいに夜も明けてきて、いつのまにか雨もやんでいた。ゆっくり少しずつ道は
高くなっていって、オルトトコイ湖を過ぎてから、ある所でペットボトルがポンと
音を立てた。気圧がうすくなったらしい。

左手の山のふもとにはキルギス人の民家が見えた。おそらく冬にここで暮らすのだろう。
天山山脈の雪山が見える。日本時間10:40

それから道は峠を下ってしばらく走り、今度は上り道になり、別の峠にさしかかった。
右手には包があり、夏の住居とおぼしき家もあった。馬に乗る男、包の中から女や
子どもが出てきた。日本時間10:50

ここはいい、ここでしばらく休もうということになり、雄大な風景を楽しんだり、
腕を伸ばしたりして体を休めた。
子どもたちに取り囲まれ、ウイグル語やキルギス語を話している仲間が
英語の話せる娘がいると教えてくれた。日本時間11:20
   家と包小画像)    子どもたち小画像)    子どもたちと記念写真小画像)    子どもたちと記念写真小画像

包の中で休めと老人から誘われて、中に入ったら、母親とおぼしき女が寝具を
畳んでいるところだった。絨毯をくるくる巻いて、包のへりに積み重ねていた。
どうも我々がやってきたため、いつもより早く起こされたらしい。山なので外は
やや寒い。このときの気温は我々にも寒かったが、その後は時間がたつと
日もさしてきて、寒くはなくなった。
    包の中小画像

包の中で、期待していた馬乳酒を飲むことができた。馬乳を入れてある皮袋に
突き棒がついていて、その突き棒で何度か突いてから、中の乳を濾(こ)し布を
通して容器に注いだ。その馬乳をひしゃくで汲んで我々に飲ませてくれる。
しかし、まず自分の子どもたちにまず飲ませて(毒味をさせてから)客に出した。
     キルギスのおじいさんと馬の乳袋小画像
   馬乳酒を器にそそぐ小画像)(手前はおばあさん)      馬乳酒を毒味する子ども小画像
     みんなで記念写真小画像

酸っぱみが強いが、さわやかで飲みやすかった。しかし、最初の体験なので、
2口くらいしか飲まなかった。東京にあるモンゴル料理の店の馬乳酒より
新鮮で美味しいという人もいた。
(この旅行にそなえて、ものの本に書いてあるように、旅行の1ヶ月前から
毎日ヨーグルトを食べお腹の調子を整えたのだった)

   馬乳酒の科学知識

              

日本時間12:00 走る車から、草原に咲く黄色の花が続くのを見た。
あれは菜の花だろうか。なだらかな景色で、一望千里とはこのことだ。

日本時間12:20 やっとナリンの町に着いた。町の中でフィルムを買う。
ドイツのフィルムPERUTZ が1本しか売っていなかったそうだ。
アリム氏は、ナリンは産業がないから大変貧しい町だと話した。
     ナリンの町かど小画像)     キルギス人の墓地小画像)     キルギス人の墓地小画像
     ナリンか近くの町のキルギス人の家(ピンボケ写真)

日本時間12:45 つづら折りの上り坂、そして下り、前後に雄大な峠。
車を降りて、みんな写真を撮る。赤土。私には岩手県の種山高原や高森高原を
思わせた。

日本時間14:00 左側の天山山脈には氷河が見られる。30分以上同じ風景が
続く。暑くなったので、上着を脱ぐ。道は悪路なので、車が揺れる。
天井にぶつからないように、帽子をかぶっているのは正解だと思った。
雄大な天山山脈の景色を楽しんだ。

日本時間14:40 昼食をとる。この昼食は今朝あの包で作ってくれたもの。
ナンや羊肉の茹でたもの。トマトもあった。紅茶を飲む。
    昼食風景小画像
これから道は左にゆっくりと回り、天山山脈に回り込む。
つまり、天山山脈の低い所を通り抜けていくのだ。
局長の説明では、このあたりにリスが走り、エーデルワイスも咲くという。
    美しい峠道小画像)     美しい峠道小画像)     美しい峠道小画像)     美しい峠道小画像
    美しい峠道小画像)     美しい峠道小画像)     美しい峠道小画像
    美しい峠道小画像

日本時間15:20 いよいよ国境が近い。道の両側にはバラ線が張られている。
快晴の中、右手の山々の向こうはフェルガナ地方。
突然左手に兵舎が5棟見えた。迷彩服を着た若い兵士が現れた。
局長はアリム氏をともない、我々のパスポートと出国用紙、キルギス政府発行の
国境通過申請書を持って行った。

しばらくして、アリム氏が戻ってきて、なんと我々10名は申請書に名前が
書いてあるから認めるが、2名の運転手の名前が書かれていないから、通行を
認めないという。まさか歩いていくわけにはいかない。

青空、周りは雪の霊峰、あまりに美しいが我々はなかなか動けない。
北海道知床の羅臼岳あるいは岩手県早池峰(はやちね)山の山頂を連想する風景だった。
日本時間16:25 やっと通ることが許された。道はしだいに左へ左へと曲がる。
標高3574mの標識。しかし、平らな道が続く。右手は国境かバラ線が続く。

我々はなかなか通してくれないのに、脇の草原を羊の群や時には馬に乗ったキルギス
人が通る。右手に国境警備隊の建物らしいものが建っていた。

日本時間17:30 国境警備隊の本部に着く。警備隊は食事中とのことで、しばし
待たされる。ここはこの街道で一番高いところ。冬は気温がマイナス45度になり、
5月から10月までしか通行できない。こんな厳しいところで働くのだから、
大変な仕事だ。しかも、ソ連の崩壊で、ロシアからも給料は十分出ない。
キルギス政府も貧しいから、あまり払っていないのだろう。となれば、彼らは
通行人になんとか通行料をふっかけるしかないのだろう。

日本で、このトルガルト峠のことを書いた説明書はない。つまり、誰も日本人は通ったことが
ないのだろう。ここを通るのは、新疆ウイグルとキルギスの間の商人だけ。
おそらく彼らは、いくらかの通行料を払っているのだろう。

日本時間17:00 国境警備隊は通してくれた。しかし、今度は通関の職員が
現れず、またも待たされる。
すったもんだのあげく、日本時間19:36やっと我々の車が国境を出発する。
結局、我々の車の運転手はここに残り、現地の人間に金を払って運転手として
雇う。その運転手が最後の門の前に立つ(機関銃を携帯した)男に、なにがしかの
お金を払うのを見た。

特別許可の記念写真(お金を払った)
  税関の建物で記念写真小画像
  我々はキルギス側をむいている。この建物の右手廊下を通って外に出たら中国までの緩衝地帯
  後列のキルギス帽子をかぶっているのはキルギスの大学教授。彼は自宅に帰る。
  税関の建物で記念写真(同じ写真。どちらがよい?)

中国までの7kmの道を車はとばし、日本時間19:57に中国側の立派な門の前に
到着した。我々は車から飛び降り、強い風の中を、中国領土に入った。
そこには数時間前から、カシュガルの旅行社のバスが待っていた。
バスは雄大な景色を後に、猛烈なスピードで下っていった。
窓の外は、雄大とも壮絶ともいう、想像を絶した眺めであったが、カメラを
取り出す人は少なかった。中国の道はひどい道で、これからホテルまで
ひどい悪路を走ったことを、みんな何度も後で話したものだった。
    やっと中国領     中国領に入って小画像)     中国領に入って小画像
    峠の下り道小画像)     本にのっていない景色小画像)     恐ろしい岩山をぬける小画像
    岩の間をぬける小画像)     岩の間をぬける小画像)     岩の間をぬける小画像

この後、国境警備隊本部で大変な検査を受けて、最後に中国の税関で
丁寧な扱いを受けてからカシュガルへと向かった。
全員ホテルに行けば簡単だが、実は2人は本日中にウルムチに行き、翌日は
日本に帰国することになっていた。そこで、離陸時間がせまっていたが、いちおう
飛行場までバスは全速力で走った。だが、キャンセル時間がすぎて、結局座席がなく
2人はウルムチに行くことができなかった。

ひどいめにあった国境越え(メモ)    国境越え行程    中国側からぬけたある国境越え    キルギスの地図

  カシュガル色満(セメン)賓館
  喀什市色満路170
  TEL −86−991−282−2147
  FAX −86−991−282−2861

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