第4章の結論
塑性ヒンジの考え方を導入したM−θモデルと、塑性ヒンジを用いず橋脚全てを
弾塑性梁要素でモデル化したM−φモデルについて、全体系解析モデルを用いたプ
ッシュオーバー解析を行った結果、両モデルの降伏順序や終局時の水平震度と
水平変位に差異が生じた。これは、両モデルの降伏点の定義と終局時の判定位
置の違い等によるものである。
ラーメン橋のような不静定構造物は、地震応答が複数の固有振動モードによ
って決定されるため、応答加速度分布や固有振動モードに基づいた地震荷重の
載荷方法が望まれる。本章では、上部構造のみに慣性力を載荷した場合と、上
部構造と下部構造の両方の質点に水平震度として慣性力を載荷した場合の2ケー
スについて解析を行った。その結果、2種類の載荷方法の間には、両モデル局所
系の降伏順序あるいは最初に終局に至る水平震度と水平変位に差異が生じた。
比較的橋脚高さが低い等橋脚ラーメン橋では、橋脚の自重による高次の固有振
動モードの影響は小さく載荷方法の違いによる差異が生じなかったことを考え
ると、不等の高橋脚を有するラーメン橋に対する地震荷重の載荷方法は、全体
系における固有振動特性や地震時の加速度分布等を考慮して決定する必要があ
る。
非線形動的解析の結果によれば、最大変位を生じる時刻の加速度分布は橋脚
の上部から下部に向けて小さく、本章で想定した橋脚の上部から下部まで一様
とした震度分布とは異なっている。また、動的解析における最大応答加速度を
重力加速度で除しただけでは、動的な地震荷重をプッシュオーバー解析におけ
る静的な水平震度に換算することはできない。これは変位や曲げモーメントの
最大応答値が発生する時刻とは異なった時刻で最大応答加速度が発生している
ためである。対象橋の上部構造重量Wuは6,623tであり、橋脚4基の躯体重量の合
計ΣWpは6,620tと上部構造の重量にほぼ等しい。このように高橋脚を有する橋梁
では、橋脚躯体の慣性力の影響も大きいため、耐震設計においては非線形動的
解析を用いる必要がある。
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