井上克弘(いのうえ かつひろ)先生のこと

岩手大学で国際的にも有名でかつ国際交流に貢献のあった井上克弘教授は、 留学生の生活指導から研究指導まで非常に熱心でした。 (岩手大学に来た留学生が最初の1年間入る留学生の寮、国際交流会館の館長も 勤められました) しかし、井上先生は1998年8月16日に神の元へ旅立ってしまわれました。 54歳という若さで。 ここでは井上先生の愛読していた聖書「詩篇23」を紹介したいと思います。

主は私の羊飼い 私は、乏しいことがありません。 主は私を緑の牧場に伏させ、 いこいの水のほとりに伴われます。 主は私のたましいを生き返らせ、 御名のために、私を義の道に導かれます。 たとい、死の陰の谷を歩くことがあっても、 私はわざわいを恐れません。 あなたが私とともにおられますから。 あなたのむちとあなたの杖、 それが私の慰めです。 私の敵の前で、あなたは私のために食事をととのえ、 私の頭に油をそそいでくださいます。 私の杯は、あふれています。 まことに、私のいのちの日の限り、いつくしみと 恵みとが、私を追つて来るでしよう。 私は、いつまでも、主の家に住まいましょう。 Psalm 23 The Lord is my shepherd,  I shall not want. He makes me lie down in green pastures, He leads me beside the still waters, He restoreth my soul . And guides my path in righteousness for His names sake. Surely goodness and loving kindness shall follow me all the days of my life, And I will dwell in the house of the Lord forever and ever and ever. Though l walk through the valley of the shadow of death,  I will not fear,thou art with me; Thy rod and thy staff they comfort me. Thou preparest a table before me in the presence of my enemies. Thou anointest my head with oil; my cup's overflowing. Surely goodness and loving‐kindness will follow me all the days of my life. And I will dwell in the house  of the Lord forever and  ever and ever. The Lord is my shepherd,   I shall not want.

井上先生はドイツ語も得意だったようなので、ドイツ語訳も紹介しましょう。

PSALM 23 Der HERR ist mein Hirte, mir wird nichts mangeln. Er weidet mich auf einer gruenen Aue und fuehret mich zum frischen Wasser. Er erquicket meine Seele. Er fuehret mich auf rechter Strasse um seines Namens willen. Und ob ich schon wanderte im finstern Tal, fuerchte ich kein Unglueck; denn du bist bei mir, dein Strecken und Stab troesten mich. Du bereitest vor mir einen Tisch im Angesicht meiner Feinde. Du salbest mein Haupt mit Oel und schenkest mir voll ein. Gutes und Barmherzigkeit werden mir folgen mein Leben lang, und ich werde bleiben im Hause des HERRN immerdar.

井上先生は研究室において宮沢賢治の岩石標本を発見し、 記念に書いた著書「石っこ賢さん」の話を科学談話会でしてくださいました。 (第470回 石っこ賢さんと盛岡高等農林、平成4年7月) 井上先生が助教授時代に、その上司の教授である 吉田 稔先生がやはり科学談話会で 講演をしたことがあります。八幡平の五色沼が季節によって色の変化することを調べて、 バクテリアの反応が活発になるかどうかによって沼の色が変わることを分析した 興味ある発表でした。冬にはバクテリアの活動がにぶくなり、夏や秋に活発になる からなのです。 後から井上先生にお聞きした話ですが、この五色沼の冬の調査で、道のない所を 大雪の中移動したのでかなり危険なめにあわれたそうです。 (第352回 岩手の湖沼 − 松尾五色沼の不思議 −、昭和57年10月)

井上先生の著書
  1. Ando Soils in Japan (九州大学出版会1986共著)
  2. 緑化技術用語事典(山海堂1990共著)
  3. 熱い白熱−サンゴ礁の環境誌−(古今書院1990共著)
  4. 1/100万 日本土壌図(内外地図1990共著)
  5. LOESS Geomorphologica1 Hazards and Processes(Catena Verlag, 1991共著)
  6. ブナ林の自然環境と保全(ソフトサイエンス社1991共著)
  7. 石っこ賢さんと盛岡高等農林(地方公論社1992)
  8. 粘土鉱物分析法(束京大学出版会1993共著)
  9. 土壌の事典(朝倉書店1993共著)
  10. 低pH土壌と植物(博友社1994共編著)
  11. 最新土壌学(朝倉書店1997共著)
  12. 日本の自然−東北−(岩波書店1997共著)
  13. 土の環境圈(フジ・テクノシステム1997共著)
  14. 粘土の世界(KDDクリエイティブ1997共編著)
  15. 次世代にひきつぐ食と土(朝倉書店1998共著)

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