平成10年12月中旬に東京都杉並区の女性が、札幌の男から送られてきた毒物を飲んで自殺しました。
インターネットで心の悩みの相談から毒物の売買にいたった経過は、
なにかインターネット社会に対して不安をいだかせるものです。
ここでは新聞記事から紹介します。
同じ日の新聞であるにもかかわらず、新聞記事の内容はまちまちであることがわかるでしょう。
したがって、いくつかの新聞を読み比べることも必要なのです。
岩手県の地元紙I新聞によると
東京都杉並区の女性が、宅配便で届いた青酸カリ入りの毒物を飲み自殺した。
この薬物送付に関与したとみられる自殺ほう助の容疑者の男は、女性の死亡した
12月15日に札幌市北区の自宅で死亡していたことが、25日警視庁捜査一課と
北海道警の調べでわかった。
男の葬儀はすでに終わっているが、おう吐やけいれんをしながら死亡していたこと
から服毒自殺した可能性が大きいとみられている。
自殺した女性が3万円を振り込んだ男の銀行口座には、6月以降、女性とは別の
5人から3〜5万円の入金があり、毒物が入手された恐れがあるから、捜査一課など
は入金者の身元の確認など急いでいる。
宅配便の送り状に「草壁」という名があったことを報道で知った女性から、
「『草壁』さんは自分の知り合いではないか」と警察に連絡があった。
調べたところ、高井戸署などにかかった簡易携帯電話(PHS)の名義人が男の父親
で、男が「草壁竜次」という名前を一時使っていたことが判明したが、男は既に
死亡していた。男は薬剤師の免許を持っていた。
これまでの調べでは、女性は3日に男の口座に3万円を振り込み、男は現金を
引き出した上で、10日午後5時ごろ、札幌市北区のコンビニエンス・ストアから
青酸入り薬物を宅配便で送った。
女性は12日午後3時ごろ宅配便を受け取り、すぐに薬物を飲んだ。
母親がけいれんしている女性を発見して、病院に収容したが、15日午前2時すぎに
死亡した。
宅配便の送り状に書かれていたPHSの番号にかけた電話で、
女性が収容された病院の医師や高井戸署の捜査員が男と会話したとき、男は
「ある人に頼まれ、シアン化カリウムを6錠送った」「その女性を含め7人に
薬物を送った」「自分もいつでも死ねるようにシアンを持っている」「草壁竜次は
偽名である」などと話していた。
宮城県の地元紙K新聞によると
東京都杉並区の無職女性が、宅配便で届いた青酸カリ入りの薬物を飲み自殺した。
警視庁捜査一課などの調べで、薬物送付に関与したとみられる自殺ほう助容疑の男が
15日に札幌市北区の自宅で死亡したことが25日わかった。
男の葬儀は既に終わっているが、嘔吐しけいれんしながら死亡したことで、
同課は男は服毒自殺した可能性が大きいとみている。
男は警察とPHSで通話し「女性が死んだら自分も自殺する」と話していたが、
女性と男は15日未明のほぼ同じころに死亡した。
女性が3万円を振り込んだ男の銀行口座には、6月以降ほかの5人から3〜5万円の
入金があり、警察は薬物の宅配を男に依頼して入手している恐れが強いとみて、
入金者の身元の確認を急いでいる。
今後、男の青酸カリの入手経路や男と女性の接点にインターネットが利用されたか
どうかも調べる。
宅配便の送り主が「草壁」という名前を使ったことが24日夜から報道され、
札幌市に住む男の知人の女性から「草壁は私の知り合いではないか。彼は薬剤師免許
も持っている」と警察に連絡があった。
調べたところ、高井戸署にかかったPHSと、口座のある銀行に届けられた電話番号
の名義人が男の父親で、男が一時「草壁竜次」という名前を使っていたことも判明した。
男は大学の理工学部を卒業していた。
女性は3日、男の口座に3万円を振り込み、男は現金を引き出した上で、10日
午後5時ごろ、札幌市北区のコンビニエンス・ストアから青酸入りのカプセル6錠
を封筒に入れ、宅配便で発送した。
女性は12日午後3時ごろ、母親から宅配便を受け取り、「ヨウコからだ」と言って
自室で薬物を飲んだ。病院に収容されたが、15日午前2時すぎに死亡した。
男は宅配便にPHSの番号を記載していたので、担当の医師からの電話で女性が
薬物を飲み危険な状態にあることを知らされ、高井戸署員に「ある人に頼まれ
シアン化カリウム(青酸カリ)を送った。」「女性を含め7人に薬物を送った」
「いつでも死ねるようにシアンを持っている」と話していたという。
この男から睡眠薬を送られた東京都足立区の別の女性が7月に死亡していたことが、
25日警視庁の調べでわかった。
死亡していた足立区の女性は21歳で、今年6月に青酸宅配時件の男の口座現金を
振り込んでいた。
警視庁によると、青酸宅配時件の男の口座には計7人からの現金の振り込みがあり、
うち杉並区と足立区の女性が死亡し、東京、埼玉、愛知の3人の存在は確認された。
残る2人は所在不明。
全国紙のM新聞によると
東京都杉並区の無職女性が、宅配便で届いた青酸化合物とみられる毒物を飲み自殺した。
警視庁捜査一課と高井戸署は25日までに、自殺ほう助容疑で送り主の捜査を始めた。
これまでの調べで、12月15日に札幌市北区の自宅で死亡したこ27歳の男性が、
宅配便に書かれていた送り主の携帯電話の所有者の家族だったことが判明して、
警察はこの男性が女性に青酸化合物入りの宅配便を送った疑いが強いとみている。
12日午後3時ごろ、女性宅に宅配便で封筒が届き母親が受け取った。女性は
「これは私のよ。薬よ」と言って、中に入っていたカプセル6錠を飲んだ後に意識を
失い、病院に運ばれたが、15日午前2時ごろ死亡した。女性の体内から致死量の
約15倍もの青酸化合物が検出された。
宅配便は10日午後2時ごろ、札幌市北区のコンビニエンス・ストアから送られた。
送り主として「札幌市豊平区 草壁竜次」と書かれてあったが、架空だった。
携帯電話の番号も書かれていた。
女性の担当医が電話をかけたところ、男は「あれ、飲んじゃったの?飲むとは思わ
なかった。あれは毒物であることは相手に知らせてあります」「自分は取り扱い資格
を持っている」などと話したという。
高井戸署員には、男は「シアン化カリウムを6錠送った。6錠を一気に飲むと即死
する」「カプセル6錠は普通5万円だが、女性が無職でお金がないから3万円に
してやった」「ほかにも5人に送った」などと話していたという。
女性は3日、札幌市内の銀行にある偽名口座に3万円を振り込み、7日に同銀行の
CDコーナーから男性が金を引き出していた。防犯カメラに映っていた男性は20〜
40歳くらいであった。口座には女性以外の5人からの代金が入金されていた。
女性は精神的に不安定な状態で、2年前から入退院を繰り返していた。
最近も家族に「死にたい」と漏らしていた。これまでに数回、薬物による自殺未遂を
図っているという。
女性の自宅からノート型パソコンが見つかり、インターネットに接続した形跡があった。
警察は女性がインターネットを通じて差出人の男と接触したとみて調べている。
全国紙のA新聞によると
東京都杉並区の女性が、宅配便で送られた毒物を飲み自殺した。
毒物はシアン化カリウム(青酸カリ)とみられる。
女性に毒物を送ったことを認めていた男性は、女性が死亡した15日に死亡していた。
代金の支払先としていた銀行口座の入金状況から、毒物はこの女性のほかに5人に
送ったとみられ、警視庁が送り先の特定を急いでいる。
調べによると、男性は札幌市北区に住む27歳で、薬剤師の資格を持っているという。
25日午後、札幌市の女性から北海道警に「以前交際していた『草壁竜次』という
偽名の男ではないか。死んでいるかもしれない」という連絡があった。
調べたところ、この男性は15日にで自宅二階で死んで、すでに火葬されていた。
これまでの調べでは、男性は10日に札幌市内のコンビニエンス・ストアから
青酸カリの入ったカプセル6錠を宅配便で女性に送ったとされている。
その際、送り状の送り主の欄に「草壁竜次」と書かれてあった。
このコンビニエンス・ストア関係者によると、男性が荷物の品名欄に「EC」と自ら
記入したという。男性の住所が店から10キロほど離れた豊平区だったので
「ずいぶん遠くから来た客だ」と記憶に残っていたという。
送り状に書かれてあった携帯電話が男性の父名義であったほか、代金の受け入れ先
の銀行口座の名義人の住所が送り状のものと似ていたことがわかった。
宅配便は12日に女性の家に届いた。女性は間もなくそのカプセル6錠をすべて
飲んで具合が悪くなり、三鷹市内の病院に運ばれたが、15日未明に死亡した。
毒物の代金3万円は、女性により3日に指定された銀行口座に振り込まれた。
男性は7日に全額を引き出し、その姿が銀行支店の防犯ビデオに撮影されていた。
携帯電話番号が宅配便の送付状に書かれてあったので、男性は警視庁と計4回話を
していた。「女性から頼まれて青酸カリを送った。普通は5万円だが、あの女性は
無職で金がないということだったので3万円にしてやった」と話していたという。
女性は両親ら家族と同居していた。約2年前から精神的に不安定な状態が続いて
いたといい、外部の人と接する機会はほとんどなかったという。過去に数回自殺を
図ったことがあったという。自宅にはパソコンがあり、インターネットに接続した形跡があった。
警視庁は、インターネットを通じて男性と知り合い、毒物を入手した可能性がある
とみて、女性が接続したホームページなどを調べている。
全国紙のS新聞によると
12月12日に、札幌市内北区のコンビニエンス・ストアから宅配便で送られてきた
カプセル6個を、東京杉並区の24歳の女性は飲んで病院に運ばれ、15日に毒物
中毒で死亡した。
死因を鑑定したところ、青酸カリであることがわかった。飲んですぐ脳死状態に
陥ったことから、カプセル6個を1度に飲んだとみられている。
女性は男が指定した銀行口座に3万円を振り込んでいたが、
毒物が送付される数日前に、この口座から金を引き出す20から30歳代の男の姿が
札幌市内の銀行の防犯カメラに映っていた。
送られてきた封筒には「草壁」という男の名前と住所が書かれていたが、いずれも
架空のものだった。
また携帯電話の番号が記載されてあったので、捜査員が電話すると、
その男は「ある人に頼まれて送った。薬物はシアン化カリウムで、女性以外にも
5人に送った」などと話したが、その後は連絡がとれなかった。
25日午後に、北海道在住の女性から「自分の知っている人に、以前『草壁』と
名乗っていた人がいて、薬剤師の免許を持っていた」との通報があった。
捜査の結果、札幌に住む27歳の男性が浮上したが、この男性は12月15日に
自宅で死亡していたことがわかった。
警視庁捜査一課などが調べたところ、男の携帯電話の名義が死亡した男性の父親の
ものだったことが判明した。さらに、男が指定した銀行口座を開設した際の住所が、
毒物を送付した封筒に書かれていた住所と同じ建物の室番号違いだったことがわかった。
こうしたことから捜査一課などでは、毒物を送った男と死亡した男性が同一人物で
ある可能性が高いとみて、残された録音テープの音声や防犯ビデオに映っている
ビデオテープを分析して確認を急いでいる。
また、金が振り込まれた銀行口座には、今年6月から11月末ごろまでの間、
5人が3万円から5万円を振り込んでいたことがわかっており、捜査一課などでは
毒物の送付を依頼した人の特定と回収を急いでいる。
今回の事件では、死亡した女性と送り主とみられる男性との関係など不明な点が多く、
女性の自宅からノート型パソコンが見つかっていることから、インターネットを利用
して送付の依頼をした可能性があるとみて、毒物が送付されたとみられる別の5人も
含め、入手経路の確認を急いでいる。
すべての新聞は平成10年12月26日のものです