香港旅行記(3)

11回目から15回目まで

香港旅行記 その15

中国料理の中の香港料理
世界の料理の中で、西の横綱がフランス料理なら
東の横綱は中国料理。

中国料理を地方別に大きく分けると4つになる。
・黄河流域の北方系(北京・天津・山東・河南料理)
・長江上流の四川系(四川料理)
・長江中下流地域と東南沿岸地域の江蘇・浙江系(上海・
 蘇州・揚州・無錫・杭州・寧波料理)
・珠江流域と南部沿岸地域の南方系(広東・潮州・広西・福建料理)

その特徴となる味付けを簡単に言ってしまえば
南は淡 dan
北は咸 xian
東は酸 suan
西は辣 la
といわれている。

新鮮な魚介類も材料によく使う南方系の料理は
味付けがあっさりしていて、どちらかと言えは薄味の甘口で日本人向き。

対照的なのは北方系の料理。
肉料理が中心でこってりしていて全体に味が濃く、いわば辛口。

「東は酸」といっても、江蘇・浙江系の料理すべてに酸味があるわけでなく
あんかけなど甘酸っぱいメニューが比較的多い。
上海料理は甘みが強いのが特徴で、日本人向き。

「西は辣」の代表的なのが四川系の料理。
全般にぴりりと辛く、特に麻 ma しびれるような辛さは
他の地方の料理にはあまりない。

さて上に紹介したのは
あくまでも四大系統の料理の味付けのごく大まかな傾向である。
実際には、同じ系統に属する料理でも味付けがかなり違うし、
材料や調理方法もさまざまで、菜単(caidan メニュー)の読み方が
わからないと、どれを注文したらいいかわからない。

一般に料理名は、だいたい材料や包丁の入れ方・微妙な味付けや
調理法などを簡潔に表現している。

料理の材料
 ただ肉 rou とある場合は豚肉
 牛肉 niurou
 羊肉 yangrou
 鶏 ji
 アヒル(鴨の字を使う) ya
 魚介類は省略
  鶏>豚>牛 の順に値段が安くなっていく(日本と逆)

材料の切り方
 丁 ding さいの目切り
 快(土編の字) kuai ぶつ切り、角切り
 段 duan 長方形のぶつ切り、輪切り
 片 pian 薄切り、スライス
 絲 si 千切り 肉絲 rousi (青椒肉絲 チンジャオロースー)
 条 tiao タンザク形に切る
 末 mo みじん切り
 茸 rong 細かく切り刻んだもの
 泥 ni すりつぶしてどろどろの状態にしたもの

調理法
 蒸 zheng 蒸す
 拷(火編の字) 搾 kao 直火であぶり焼く。拷(火編の字)鴨 kaoya 北京ダック
 拌 ban 混ぜ合わせる、あえもの
 煎 jian 少ない油でこんがり焼く。 煎荷包蛋 jian hebaodan 卵の目玉焼き
 炒 chao たえずかきまわしながらいためる 炒飯 chaofan チャーハン
 炮 bao 材料を油の熱くなったなべの中に入れ、強火でさっといためる。
 爆 bao 主材料を煮えたぎった油の中に入れ、強火でさっといためてから
  副材料や水溶き片栗粉と調味料など入れて、手早くかきまわし
  いためる調理法
 炸 zha 油で揚げること。 清炸 qingzha 空揚げ
 煮 zhu 煮る、ゆでる。
     炮 bao と 爆 bao アクセントが違うが表現困難

日本料理は生の材料の味をできるだけそのまま生かすのに対して、
中国料理は材料にいろいろ手を加え、加工して材料の持ち味を最大限に
引き出す工夫がされている。

アワビもナマコも日本から乾燥物を輸入して
それを煮たり戻してから料理に使う。
北海道産のホタテや三陸産アワビ等、香港の乾物屋に並んでいた。
フカひれスープも材料は三陸産ですね。

料理名の決め方は
調理法と主材料の名称によるもの、調味料と主材料の名称による決め方、
できあがった料理の姿形による決め方、主材料と副材料の名称及び調理法
による決め方、地名による命名、人名による命名
など様々で、我々にしたら一つ一つ覚えていくしかないですね。
(中国人でもメニューの読み方がわからなくて、ウェイトレスに質問している)

北京料理、上海料理、四川料理を現地で食べた私としては
広東料理を現地で食べてみたいと思ったわけです。
(北京で北京ダックを何度も食べたし、上海で上海カニ料理を食べた)
(四川省成都で諸葛孔明の墓も見たし、元祖麻婆豆腐の店でマーボトウフ食べた)

広東料理には3つの種類があると言われています。
珠江下流地域の広州料理、東江流域の東江料理、福建省との境に
近い韓江下流地域の潮州料理の三系統です。
・広州料理 材料が豊かで調理法は変化に富み、味付けは比較的あっさり
 していて、南淡の代表。一般に「広東料理」といわれているのは
 この広州料理である。犬料理と蛇料理。粥 zhou おかゆ
 飲茶(ヤムチャ):お茶を飲みながら、点心つまり軽食を食べる。
・東江料理 客家料理とも呼ばれている。味付けは塩辛く、素朴な味わいがある。
 客家 hakka(北京語では kejia)とは東晋(4〜5世紀)の末まで黄河流域
  に住んでいたが、異民族の侵攻に抵抗して破れ、また戦乱を避けて集団で南へ
  大移動した落ち武者たちの子孫と考えられる。あとから移ってきたため、いい所は
 とっくに先住民に占拠されて、大部分の客家は自然条件の悪い山間僻地に
 定住するしかなかった。広東を中心に散居するが、さらに台湾、東南アジア
 そして欧米諸国に広がっている。客家の女性は昔から働き者で、漢民族の
 中でも纏足(てんそく)の習慣がなかったのは客家の女性だけ。
 客家の料理は味が比較的濃厚でやや塩辛く、北の料理の系統に属する。
 交通の不便な山間僻地に定住したので買物が不便であり、生活も貧しかったから
 塩味をきかせた少量のおかずで食事ができるよう工夫がされた。
 客家料理は脂肪分が多い。これは北方系の伝統を受け継いできたことと、
 重労働のもとで体をもたせるため脂肪分を多量に摂取する必要があったからだろう。
 客家人はいろいろな保存食品を作ることに長じている。塩漬けや乾燥保存食など。
・潮州料理 材料の持ち味を生かしたスープに特徴がある。
 ツバメの巣スープ フカひれスープ 海鮮料理にすぐれている。
 甘い料理が多い。ゆっくり時間をかけて料理を作る。
 功夫茶 gongfucha 濃いウーロン茶。いくつかの小さい茶碗についで客に出す。
 レストランでは食前と食後にかわいい茶碗(1人3杯以上)で出された。
 潮州人は千数百年以上も前に先祖が北の中原から移り住んできた民族。
 唐の高宗時代(650-683)にはさらに大量の移民が福建省の璋(サンズイの字)州・
 泉州一帯からここに移り定住した。昔からの漢民族の食習慣が受け継がれている。
 東南アジアの華僑の1/3以上が潮州人なので、潮州料理が東南アジア諸国の
 主な料理の一つになっている。
中国料理の調味料

国際会議でもDINNER RECEPTION があったので
それを紹介する。

      MENU 菜譜

BARBECUED SUCKLING PIG AND ROAST MEAT PLATTER
 乳豬大駢(手編)盆 子豚の焼肉(前菜)

SAUTEED SCALLOPS WITH SQUIDS AND VEGETABLES
 花姿翠帯子 ホタテ貝柱とイカと野菜のソテー

DEEP-FRIED MINCED SHRIMP BALLS AND CUSTARD MILK
 脆汲(女編)百花球 エビのミート(?)ボールとカスタードミルク

BRAISED VEGETABLES WITH CRAB MEAT SAUCE
 蟹肉払(手編に八)時蔬 カニ肉ソース野菜煮込み

SHARK'S FIN SOUP WITH SHREDDED CHICKEN AND FISH MAW
 雉(鶏の左)絲雙喜翅 千切り鶏肉と魚の腸(浮き袋?)入りフカひれスープ

BRAISED ABALONE SLICES WITH VEGETABLES
 碧緑鮮鮑片 アワビと野菜の煮込み(これは干したアワビを煮込んで
 味付けしたもので、皆さんわからずキノコかタケノコと言ったほど)

STEAMED FRESH MANGROVE SNAPPER
 清蒸大紅鮪 蒸しマダイ(あっさり蒸して美味しい)

ROAST CRISPY CHICKEN
 鴻運脆皮雉(鶏の左) 鶏皮焼 拷(火編の字)鴨→北京ダック
 ここでは北京ダックの中に入れる鶏皮みたいなもの。

 本当の北京ダックは薄い柔らかい煎餅のような皮に、焼いた鴨皮や
 ネギを入れて、そのギョーザの皮のような皮をくるんで食べる。

FRIED RICE WITH SHREDDED CHICKEN
 生炒雉(鶏の左)絲飯 鶏チャーハン

BRAISED E-FU NOODLES
 生檜(火編)伊麺 ゆでスパゲッティ

BAKED SAGO PUDDING
 西米跼(火編)布甸 サゴ(サゴヤシの澱粉)プディング

CHINESE PETITS FOURS
 美點雙輝 四点心

       正しい漢字のメニュー

国際会議のDINNER RECEPTION。これは格調高く豪華だった。

似たような料理の写真ですが

夜に市内の中華レストランを探して食べてみた。

Aレストラン
エビ 目の前でゆでてタレをつけて食べる。
魚空揚げ スープ付き
蛇スープ
もつ煮
牛肉 ホウレンソウ
コーラ ビール
 3人前477.5ドル(7176円)

Bレストラン
原盆(皿の上が中の字)菜膽鶏純(火編)翅
  Stewed Shark's Fin s/ Chicken & Vegetable
  フカひれスープ、中に柔らかく煮た鶏肉と野菜
珠菜川椒鶏 Fried Chicken-Balls w/ Chinjew (Chiu-Chow Style)
  鶏ミートボール
瑶柱鮮姑(草冠)払(手編に八)西蘭花 
  Fried Broccoli w/ Mushrooms & Dried Scallops
  ブロッコリー、茸、ホタテ貝柱
潮州炒飯 Fried Rice in Chiu Chow Style
  潮州チャーハン
  2人前398ドル(5975円)

いずれもカードで支払い帰国後、盛岡の銀行口座から差引かれた。

Aレストランは香港島の銅鑼灣(CAUSEWAY BAY)と灣仔(WAN CHAI)の
中間くらいの場所にあった。蛇料理の看板があったから入った。

入口でどうぞの声をかけられ2階に上がったら、まず麻雀の部屋が
続いて驚いたが、突き当たりの広間がレストラン。回りは中国人の客ばかり。

隣に座った若い男2人は魚が食べたいと言うと、ボーイが生きた魚を持ってきて
それを見ながら客が何か言っていた。

料理は美味かった。エビもあっさりしていたし自分で納得できるまでゆでられる。
蛇スープはどれがヘビ肉かわからぬほど細く切られていて味も淡泊だった。

このレストランの名前は榮華酒樓。外国人客が少ないせいか、カードの扱い
に慣れていない様子。クレジットの請求書も1カ月遅れて届いた。

Bレストランは九龍地区の泊まったホテルから歩いて行った。
油麻地(YAU MA TEI)のサイゴン通り。その名も潮正菜宗。潮州料理本家
という意味だろうか。ここも中国人の客ばかり。

隣の大テーブルには
親族パーティか老人を中心に20名近く座っていた。
子供が1人で、叔父さん叔母さんからこれ美味しいよとか声をかけられ、
その子供が一人ではしゃいでいた。

前にも書いたが中国では
牛肉、豚肉、鶏肉の順に値段が高くなっていく。

魚料理は高いのだが、香港では海産物が多いからどうだろうか。

人口密度の高い香港に日本などから観光客が大勢押し寄せるから
結局、中国本土(広州など)から食材を運んでくるのであろう。
日本の特産品も多いようだ。

香港が中国返還されても、グルメ観光客は歓迎されるだろう。
岩手産のホタテ、アワビ、フカ、ナマコなど中国では優良品とされているようです。

ということで中国の食文化にふれました。

中国旅行を3度した私は、たいてい一人で中華料理を注文する場面があるので
(ホテルの朝食)、なるべくメニューを読めるよう勉強しています。

中国人ガイドに案内されている時でも、なるべく料理の名前をメモして
覚えるようにしているのですが.....

 中華料理は奥が広い。

   参考文献 遠藤紹徳、グルメ中国語、国書刊行会

         

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