第5章の結論
交番載荷試験と数値解析より次のことが明らかになった。鋼製エレメント合
成構造橋脚の非線形特性は、鋼製エレメントを鉄筋換算し、かつ、適切に横拘
束筋を評価することにより、鉄筋コンクリート橋脚と同様の方法で算出可能で
ある。また、鋼製エレメント内部のコンクリ―トは、本橋のような矩形中空断
面の場合においても、鋼製工レメントとタイプレートにより確実に拘束されて
いることが確認された。
これまで道路橋に関しては、ラーメン橋などの不静定構造物を対象とした地
震時の照査実施例は比較的少ない。特に山岳地を横断する高さが異なる高橋脚
を有するラーメン橋の耐震設計は高次振動モードの影響により動的解析によっ
て行われる必要がある。本章で採り上げた橋梁は、鋼製エレメントのリブプレ
ートの幅と厚さにより橋脚が断面変化していることから、各々の断面変化を考
慮した非線形特性を曲げモーメントと曲率の関係でモデル化した解析モデルを
用いて動的解析を実施した。照査手法として橋脚の各断面変化点での曲げモー
メントと曲率の許容値およびせん断耐力と非線形動的解析によるそれぞれの最
大応答値とを比較する手法を提案した。また、橋脚の幾何学的非線形性等の不
確定要因に対して曲げモーメントと曲率の許容値に1.5の安全係数を考慮するこ
とにより設計上の安全性を確保した。照査の結果、本橋は大規模地震時の耐震
安全性を充分に満足したといえる。また、本工法の経済的な優位性は鉄筋コン
クリート橋脚と比べて約2%の工費削減に寄与するものと算定された。また、施
工の機械化による労働力の合理化による優位性を考えると、今後、高橋脚が必
要な山岳橋梁の高橋脚のみならず、既設橋脚の耐震補強工事など様々な分野へ
の適用が期待される工法である。

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