応力法と剛性マトリックス法(変位法)


この大学で30年間ずっと構造力学を教えてきました。

応力法剛性マトリックス法(変位法)、欲張って両方教えています。
もっとも、本格的に教えるのは研究室の学生にだけ。
あと大学院の講義では教えています。

応力法は古典的解法です。
計算の量が少なくなるよう、未知の力(不静定力)を仮定して
変位の連続条件式(いわゆる仕事方程式、人によっては弾性方程式と呼ぶ)
から不静定力を求めるわけです。

これに対して、剛性マトリックス法では、各節点の変位を求めるために
力の釣り合い式(つまり剛性マトリックスを重ね合わせしたもの)を
作って、支承条件などを考慮してから、それを解くわけです。

私が博士課程の学生だった時、斜張橋を解析したものでした。
当時は、応力法で解きました。ケーブルを切断して、不静定力としてケーブル張力
を仮定して、仕事方程式をたてて解くわけです。

ちょうどその頃、ぼつぼつ剛性マトリックス法の解説書が日本にも出てきました。
連続桁を剛性マトリックス法で解くときは、梁の両端に、曲げモーメントとせん断力
を仮定して、剛性マトリックスを作って、全体の剛性マトリックスを重ね合わせ
それを支点条件を与えて解くわけです。

斜張橋を剛性マトリックスを使って解くなら、ケーブルをトラス部材と考えれば
よいから、斜めのトラス部材の剛性マトリックス、つまり、両端に鉛直力と水平力
を仮定すればよいわけです。

そこで、斜張橋を剛性マトリックスを使って検算してみようと思って、
梁の剛性マトリックス(4元)とトラス部材の剛性マトリックス(4元)
を作り、重ね合わせて解いてみたところ、全然答が合いません。

どうやら、力の釣り合い条件式の適用がまずかったみたい。
つまり、斜張橋の桁の剛性マトリックスを考えるときに、軸方向の力(軸力)も
考えないと、トラス部材の水平成分との力の釣り合いが成り立たないようです。

ぼんやりとそういうことを考えて、そのときは剛性マトリックス法で正解は
得られなかったのです。

平成13年3月13日の土木学会東北支部の発表会に、そうだこの斜張橋の
簡単な計算例も作って時間があったら発表してみようと思いました。
事前に作った計算例は、しかし時間の都合で学会では発表できませんでした。
学会では、門形ラーメンの解析解を発表したから、その資料だけで
時間が過ぎてしまったのです。

簡単な斜張橋の計算例
 まず応力法による解法
 剛性マトリックス法による解法 その1 その2 その3
 私が昔考えて、正解の得られなかった不完全な剛性マトリックスを使った解法