日本学術振興会 日独研究者特別招聘事業によるSCHADE教授の招聘

 合成桁の論文で有名なシュツットガルト大学SCHADE(シャーデ)教授は
レオンハルト・アンドラー設計事務所にも勤務し、理論と実務にあかるい学者である。

 平成6年1月23日から4週間招聘し、最初3週間は盛岡で滞在し、最後の週は
関西・東京方面の講演旅行など果たして帰国した。

 日本では5つの講演をした。
1. Warping Torsion of Thinwalled Reinforced Concrete Section
2. Theory of Second Order for Horizontally 
 Load Bearing Elements of High Buildings
3. Increased Punching Shear Resistance of 
 Flat Slabs with Stud Rails
4. Shear Connectors with High Fatigue 
 Strength
5. On Some Problems of Large Reinforced 
 Concrete Structures without Expansion Joints

 テーマ1は、薄肉梁のそりねじりの基本的理論を鉄筋コンクリートに適用した
もので、引張側コンクリートを無視し、応力歪曲線は弾性域と塑性域からなり、
必要な断面係数などが数値計算される。

 テーマ2はテーマ1の薄肉梁そりねじり理論を高層建築柱の座屈などの
有限変位問題に拡張したものである。

 テーマ3と4は合成構造や鉄筋コンクリート構造の板と桁・柱との接合部の
力学的力の伝達を合理的にする設計の工夫を説明したものである。

 テーマ5は地下駐車場などの大構造物が水密性を持ちながら、継手の力学的弱点
をさける工夫を実例をあげて説明したものである。

 岩手大学ではテーマ1と2を講演し、秋田大学ではテーマ5を講演した。

 大阪工業大学の八幡工学実験場を見学した後、関西道路研究会橋梁委員会主催の
講演でテーマ1と4を講演した。

 帰国の前日には、横浜国立大学・池田尚治教授の研究室を訪問し実験室を見学した。
その後首都高速道路公団の鶴見航路橋の建設現場見学をした。

 なおシャーデ教授には、土木学会創立80周年記念の土木用語大辞典の、橋梁工学
関係の重要な用語の日本語と英語に対するドイツ語とフランス語訳の指導を
してもらった。

 シャーデ教授の勤務するレオンハルト・アンドラー設計事務所は、大成建設と
技術提携の歴史が深く、大成建設でもテーマ3と4を講演をした。今回の来日で
日本の合成構造の設計・施工会社との技術交流を深めた。この関係を大事にして、
今後のヨーロッパのユーロコードなど重要な情報が速やかに伝わることが期待される。

  この場を借りて、秋田大学・川上洵教授、大阪市立大学・中井博教授と大阪工業
大学・栗田章光助教授、横浜国立大学・池田尚治教授ほか関係者に感謝する。
(岩手大学教授 工学部建設環境工学科 宮本 裕)

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