1995年6月に東京都立大学で全国の生協主催のPCカンファレンスがありました。

私は情報処理センター関係の委員会をML(メーリングリスト)で会議連絡を
しているので、このことを報告してきました。

全国でも、このように本格的に使われている例は少ないようで感心されました。

全員参加してもらうための秘訣は何かと質問されました。
いいことは皆さんわかっているのですが、実行するには
ハード・ソフトその他 色々問題がありそうです。

 だんだん大学でも事務連絡などに取り入れられていくのではないか
と考えています。一歩一歩が大事、それでよいと思います。

    大学の研究・会議連絡にネットワークを利用

   宮本 裕 阿部芳彦 鈴木正幸 西館数芽 庄野浩資 白旗 学 梶原昌五
 上野行秀
                                        岩手大学工学部

                            miyamoto@iwate-u.ac.jp


1.まえがき

 岩手大学において学内LANが構築され、学外にはインターネットに接続され、
コンピュータネットワーク環境が整えられた。現在ネットワークのユーザは増加し、
研究・教育・会議連絡・資料送付など多種多様に利用されている。
 ここではネットワークを管理運営する委員会活動、すなわち岩手大学情報処理
センターの運営委員会・情報システム委員会の活動のためのML(メーリングリスト)
および対ユーザの連絡広報のためのNG(ニュースグループ)について報告する。
 この論文の全体の構成は以下のようである。
 (1)MLとNGの長所と短所
 (2)教育利用の可能性

2.MLとNG

2.1 ML
 定例会議の補強として、メーリングリストにより、登録された一連のメンバーに
電子メールを送る方式で会議(以下に電子メール会議と呼ぶ)を行っている。
電子メール会議もコンピュータ通信の一種なので、コンピュータ通信の特徴
をそなえている。つまり書かれた記事を読んで、自分の意見をまとめる過程で、
自分でもあいまいに理解していたことをより的確に理解して進歩していくもので
ある。このように、情報の再現性、個人の能力を越える広範囲の大量情報を必要に
おうじて見直せるという特徴がある。当然コンピュータ通信は電話やFAXと違って、
デイジタル記録がとれ即ファイル化できることが利点である。
 ここで電子メール会議の長所は次のようである。ただし、ここで紹介する
長所と短所については、実際に観察されたものの他に宮本が推量して加えた
もの、将来他の電子メール会議でありそうなことを併記してある。
(1)定例の会議の制限時間を越えた、深い議論、多数の参加者による徹底的議論が
  行える。
(2)他人の書いた記事や意見を読んでいくうちに、自分自身の理解が深まり、疑問
  が解けてゆき、問題の本質が見えてくる。
(3)定例の会議の前に打ち合わせの電子メール会議を十分しておくと、本会議が
  短い時間で最大の成果が得られる。
(4)定例の会議の後にも、電子メール会議で理解不足の点を補ったり、後処理的
  問題処理活動ができる。
(5)自分の都合の良い時間に会議に参加できる。
(6)会議の日時の相談、議事録の確認など連絡事務が合理的に行える。過去の会議
  記録の参照や検索や引用なども容易にできる。
 しかし、電子メール会議は万能ではない、つまり次のような問題がある。
(1)会議メンバー全員が電子メールの送受信ができるよう、各自が端末や回線などの
  設備を用意する必要がある上に、通信ソフトの利用に慣れていないといけない。
  日本語を扱うため、文字化けの問題もある。
(2)相手の顔を見ながらの発言では出てこない、過激な発言もディスプレィを一人で
  見ているから、出てくることもある。相手の言葉じりをとらえる傾向も出てくる
  ので、注意する必要がある。
(3)対人コミュニケーションでなくコンピュータを使ったコミュニケーションに、
  とまどいを感じたり違和感をおぼえるメンバーもいる。
(4)会議の中でリーダ的立場のメンバーは自分の意見を書くことで、会議の方向を
  誘導することになるのを恐れて、故意に書こうとしない場合がある。
(5)書いたものが記録されるので、場合によっては相手に言質(げんち)を与える
  ことを恐れて、書こうとしない場合がある。
(6)世の中は理屈だけできまるものではなく、妥協の結果という場合がよくあるが、
  電子メールの会議になると、理屈やスジ論が先行すればなかなか現実的対処と
  いうものになりにくい。
 したがって、電子メール会議を最もよく活用するためには、議論の整理をするために
電子メール会議を使いながら、時として必要なメンバー同士で集まって話し合いで
意見の調整をすることも、全体の効果を上げるものと思われる。パソコン通信のオン
ラインがこの電子メール会議にあたり、パソコン通信のオフラインが定例会議に
あたるといえるかもしれない。また議題も電子メール会議向きのものと、そうで
ないものがあると思われる。

2.2 NG
 インターネットのNG(ニュースグループ)に相当するNGを岩手大学内にだけ
開放して、そこに情報処理センターの連絡記事を掲載したり、ユーザの意見を反映
させる試みを行っている。ネットワークの運用が進むにつれ必要な連絡情報が速やか
に流され、あるいは有用なソフト情報や使い方のノウハウなどの情報交換が有機的に
行われ、相当の効果を上げている。しかし、現状では利用するユーザがまだまだ
足りないためか、建設的意見を書き込むユーザは比較的少ない。いきおい委員会
主導のNGとなっていて今後のユーザの積極的参加が望まれる。

3.電子メール会議およびNGの教育利用

  ここでは、電子メール会議やNGを、教育利用に使う可能性を紹介する。
(1)情報処理教育などで、学生からPCの操作法や言語処理等でのトラブルや
  質問があったとき、Q&Aを列記しておくと、同様の症状を体験する他
  の学生の参考になる。
(2)複数発表者によるゼミ形式の講義に用いて、発表者グループと質問者
  グループとの討論形式を行う。発表者を1人としてもよいが、議論が続くため
  には、質問に受け答える発表者が複数の方がよいかもしれない。ただし、
  議論が発散しないように指導教官がコントロールする必要がある。
(3)ディベート教育の場に活用する。すなわち、ある状況を与えて、対立する
  2つの立場に学生を分けて、それぞれの立場に立った討論を行う。
(4)講義の評価に使う。通常はアンケートにより講義の評価を行っているが、
  誰か学生の感想を読んだほかの学生が、それにコメントを与えたり、内容を深め
  たりすることができる。

4.あとがき

 パソコン通信は”時と空間を越えるコミュニケーションシステム”と言われて
いる。離れた学部どうしを結ぶ手段だけでなく、自分の都合のよい時間に利用できる
コミュニケーションシステムでもある。
 著者らは、文部省補正予算による学内LANの構築と、岩手大学のインターネット化
の仕事を通じて、コンピュータ通信、電子メール等を体験的に学んできたので、
ここでは電子メール会議およびNGの将来の可能性を探るために発表する。この報告
の一部は参考文献1),2)ですでに発表ずみであるが、その後の日常の学内委員会
体験にもとづいて続報として報告するものである。

参考文献
1.宮本ほか:岩手大学における電子メールとBBSの現状と将来、文部省主催
 平成4年度情報処理教育研究集会講演論文集、1992.12
2.宮本ほか:電子メールを使った大学内の情報処理活動について、文部省主催
 平成6年度情報処理教育研究集会講演論文集、1994.12

PCカンファレンスを主催するCIECのホームページ

CIEC第4回研究会を聞いた私の感想はCIEC Newsletter No.7にもあります。

しかし、オリジナルの三宅先生の講演はCIEC Newsletter別冊
(6月15日)に載っていて、これはCIECのホームページにありません。
ということで、CIEC関係の私のページを作ってみました。

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