日本工学教育協会
工学教育プログラム改革推進研究発表会
7月末に東北大学で行われた日本工学教育協会 第49回年次講演会の中から選ばれて
12月21日に東京の一橋記念講堂で発表することになりました。
さあ がんばって原稿を作りましょう。1頁2000字(50文字*40行)で2頁分
メモ 自分のため/ ゆっくりマイペースでしかし休まず作る、学生の意見には耳を傾ける/電子メールでこまめに対応/TAの活用
教員の自己評価のためのホームページの利用 ○宮本 裕(岩手大学)、岩崎正二(岩手大学)、出戸秀明(岩手大学)、 佐藤恒明(木更津高専)、永藤寿宮(木更津高専) miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき 数年来、ホームページ(HP)を利用して教育活動を行っている。まず講義や演習の補助資料としての利用が ある。毎回の講義の要点、課題提出と優秀な解答、試験結果の分析、学生のアンケート結果等をHPに載せてき た。もう一つは、手作り教科書の作成とその補足説明などにHPを利用してきた。これらのHPを見ると教育活 動の時系列的評価資料となり、自分のみならず全国の教育研究者との研究交流にも有用であることがわかった。 2.FD(Faculty Development ) 岩手大学では Faculty Development の一環として、大学教官の研究業績評価や教育業績の評価をするため、 かつ認識を深めるため講演会を開催してきた。この講演会には、学長、学生部長、学部長等も参加している。 たとえば、平成13年2月に行われた教育業績評価に関する講演会(講師は北大医学部阿部和厚教授)では 教育業績は次のような項目になっていた。 A.教育指導に関わる実績 A.1 教育経験年数 A.2 最近5年間の担当科目 A.3 教育指導の実績(科目、時間、単位数、受講学生数、講義資料など、卒業論文指導、単位数、直接面談 指導時間、指導人数) A. 4時間外学生指導(クラス担任、特別学習指導、工場見学、クラブ活動指導時間) A5 大学院教育(指導年数、修士課程科目、博士課程科目、担当大学院生数、論文審査数) B.教育改善への積極的行動 B.1 教科書、翻訳書、教育改善の論文、メディア教材 B.2 教育に関するFDへの積極的参加(教育活動に関する講演、発表、研修会担当、受賞) B.3 教育に関するFDへの受講参加 B.4 社会人学習への対応(一般社会人対象(公開講座)、高校生など啓蒙、大学紹介資料) B.5 専門性と関係した作品(文学作品、芸術作品、建築作品など) C.教育改善への積極的行動、努力の記録 3.HPを利用した教育業績の自己評価 自己評価の1つとしての教育業績については、上記のように様々な項目があるが、この研究発表においては、 筆者らのHPを利用した教育業績について報告したい。つまりここでは、講義に利用した例と教科書作りに利用 した例を報告する。 3.1 講義に利用した例 1年生に構造力学を教えている。その際に毎回の講義の要約や課題に対する模範解答などを載せている。 また電子メールで質問や感想を受付けているし、レンタルの掲示板も用意して、そこに講義の感想や質問などを 学生に書かせている。そして必要があれば、教官も回答やコメントを書いている。テストの予告や採点結果の講 評や答案の間違いの分析もHPに載せている。参考書や関連のHPのリンクも載せている。 3年生の構造設計の講義では、橋の写真をイメージスキャナーで取り込み、多数の画像データを載せて、視覚 的な情報も与えている。計算の課題に対する模範解答を載せている。 大学院の講義の場合も同様に、参考書の情報や課題を解くのに必要な資料や計算式なども載せるようにしてい る。利用する手作りのプログラムも紹介して、教材が学生たちにいきわたるように工夫している。また、毎週出 す課題の提出状況をHPに載せている。 こうして作られた講義資料を時系列的に数年間まとめたものを見てみると、講義がどのようになされてきたか、 年々工夫や新しいアイデアがどう加わってきたのかということが、教官にも認識され自己反省の材料となる。 この資料は同じ分野の全国の教官にとっても有用なものと信ずる。 3.2 教科書作りに利用した例 筆者たちは他の大学の教官らとともに、数冊の教科書を書いている。たとえば、構造工学(技報堂)では、い わゆる建設工学の基礎科目である構造力学について、古典的な力の釣り合いから、計算機向きの剛性マトリック ス法にいたるまで解説している。 また、構造設計のための教科書として、橋梁工学の教科書も書いている。こ の設計の教科書には最後にPC橋と合成桁橋の設計計算例をつけてあるが、教科書に載せきれない細部の解説や、 学生からの質問や改訂版に対する要望などをHPにまとめている。 これらのHPを見ることで、教室では聞けなかった必要な情報を学生は得ることができる。また、アクティブ な質問や建設的意見を電子メールや用意された掲示板に書き込むことで、学生から教官に対して、意志を伝える ことができる。 もう一つの教科書作りとして、情報リテラシーの教科書がある。この本を作ったときは他の教科書のように執 筆者が一同に集まって編集会議を開かなかった。あえて、インターネットで情報交換をしたのである。つまり、 各執筆者が自分の原稿を、宮本まで電子メールの添付ファイルで送り、宮本がそれらを用意したHPに載せて、 これを全員で見直しながら、原稿の推敲をしていったのである。最終的な原稿は、出版社の手でダウンロードさ れ、それから印刷原稿が組まれ、校正はファックスを利用して行われた。このようにして、執筆者たちが全国各 地にいたままでインターネットを利用して、情報処理に関する教科書を作ったのであった。 4.HP利用の教育の利点と問題点 紙面の都合で簡単に述べるが、教育のHP利用は、こまめに対応でき、電子化された資料の蓄積は教育思考活 動の集積となり、その価値が信じられないくらいに大きい。しかし、インターネット(不正アクセスからの)セ キュリティや学生のプライバシー保護や利用に当たっての倫理観、あるいはインターネットを維持管理するため の人的予算的対応の問題がある。HPを更新したり、学生からの質問に対応するには、教員がそれにさく膨大な 時間が必要となり問題点は少なくない。これらについては別の機会に整理して発表したいと考えている。 5.あとがき 教育業績としてのHP作りは、学生教育に成果をあげているが、こうして充実していく電子教材資料は編集し たり考察したりでき、なによりも教員の反省や自己実現のために有効である。これからもHP作りを続けて、教 育や研究の実績をあげていきたいと考えている。 この論文が全国の同様な教育関係者にとって参考になれば幸いである。 なお、筆者らの講義に関するホームページは下記のようである。 http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/education/lecture2001.htm