日本工学教育協会 第49回年次講演会
7月末に東北大学で行われます。
以下に原稿を示します。なお、図や表はデータ転送を考えて、縮小してあります。
大きくしたいときはクリックしてください。
自己評価のためのホームページの利用 ○宮本 裕(岩手大学)、岩崎正二(岩手大学)、出戸秀明(岩手大学) miyamoto@iwate-u.ac.jp 1.まえがき 数年来、ホームページ(HP)を利用して教育活動を行っている。 毎回の講義の要点、課題提出と優秀な解答、試験結果の分析、 学生のアンケート結果等をHPに載せてきた。 これらのHPを見ると教育活動の時系列的評価資料となり、 全国の教育研究者との研究交流にも有用であることがわかった。 2.FD(Faculty Development ) 岩手大学ではFaculty Development の一環 として、大学教官の研究業績評価や教育業績の評価をするため、 かつ認識を深めるため講演会を開催してきた。この講演会には、 学長、学生部長、学部長も参加している。 たとえば、平成13年2月に行われた教育 業績評価に関する講演会では次のような内容であった。 ・北大の点検評価の流れ ・ワークショップ型FDの設計・実施・効果 ・学生参加型授業 ・教員の総合評価 教育業績(+研究業績、 管理運営、社会貢献) ・進行中の教育改善 そして、教育業績は次のような項目になる。 A.教育指導に関わる実績 A.1教育経験年数 A.2最近5年間の担当科目 A.3教育指導の実績(科目、時間、単位数、 受講学生数、講義資料など、卒業論文 指導、単位数、直接面談指導時間、指導 人数) A.4時間外学生指導(クラス担任、特別学 習指導、工場見学、クラブ活動指導時間) A5大学院教育(指導年数、修士課程科目、 博士課程科目、担当大学院生数、論文 審査数) B.教育改善への積極的行動 B.1教科書、翻訳書、教育改善の論文、 メディア教材 B.2教育に関するFDへの積極的参加 教育活動に関する講演、発表、研修会 担当、受賞 B.3教育に関するFDへの受講参加 B.4社会人学習への対応 一般社会人対象 (公開講座)、高校生など啓蒙、大学紹介 資料 B.5専門性と関係した作品 文学作品、芸 術作品、建築作品など C.教育改善への積極的行動、努力の記録 3.HPを利用した教育業績の自己評価 自己評価の1つとしての教育業績については、 上記のように様々な項目があるが、この研究発表においては、 筆者らのHPを利用した教育業績について報告したい。 この論文では、ページ数の都合で、講義に利用した例と、 教科書作りに利用した例を報告する。 3.1 講義に利用した例 1年生に構造力学を教えている。その際に 毎回の講義の要約や課題に対する模範解答などを載せている。 またフリーソフトの掲示板も用意して、 そこに講義の感想や質問などを学生に書かせている。 そして必要があれば、教官も回答やコメントを書いている。 テストの予告や採点結果の講評や答案の間違いの分析も HPに載せている。参考書や関連のHPのリンクも載せている。 3年生の構造設計の講義では、橋の写真をイメージスキャナー で取り込み、多数の画像データを載せて、視覚的な情報も与えている。 計算の課題に対する模範解答を載せている。 大学院の講義の場合も同様に、参考書の情報や課題を解くのに 必要な資料や計算式なども載せるようにしている。 利用する手作りのプログラムも紹介して、教材が学生たちに いきわたるように工夫している。また、毎週出す課題の 提出状況をHPに載せている。 こうして作られた講義資料を時系列的に数年間まとめたものを 見てみると、講義がどのようになされてきたか、年々工夫や 新しいアイデアがどう加わってきたのかということが、 教官にも認識され自己反省の材料となる。 この資料は同じ分野の全国の教官にとっても有用なものと信ずる。 3.2 教科書作りに利用した例 すでに筆者らは全国の大学や高専の教官らとともに、 数冊の教科書を書いている。 たとえば、構造工学(技報堂)では、いわゆる建設工学の 基礎科目である構造力学について、力の釣り合いから、 剛性マトリックス法にいたるまで解説している。 また、構造設計のための教科書として、橋梁工学の教科書も 書いている。この設計の教 科書には最後にPC橋と合成桁橋の設計計算例を つけてあるが、教科書に載せきれない細部の解説や、 学生からの質問や改訂版に対する要望などをHPにまとめている。 これらのHPを見ることで、教室では聞けなかった 必要な情報を学生は得ることができる。また、アクティブな 質問や建設的意見を電子メールや用意された掲示板に 書き込むことで、学生から教官に対して、意志を伝えることができる。 もう一つの教科書作りとして、情報リテラシーの教科書がある。 この本を作ったときは他の教科書のように執筆者が一同に 集まって編集会議を開かなかった。あえて、インターネットで 情報交換をしたのである。つまり、各執筆者が自分の原稿を、 宮本まで電子メールの添付ファイルで送り、 宮本がそれらを用意したHPに載せて、これを全員で見直しながら、 原稿の推敲をしていったのである。 最終的な原稿は、出版社の手でダウンロードされ、 それから印刷原稿が組まれ、校正はファックスを利用して行われた。 このようにして、執筆者たちが全国各地にいたままで インターネットを利用して、情報処理に関する教科書を 作ったのであった。 4.あとがき 自己評価については、教育業績のほかに研究業績や社会貢献に ついても評価があるが、それらについては別の機会に発表したい。 この論文が全国の同様な教育関係者にとって参考になれば幸いである。 なお、筆者らの講義に関するホームページは下記のようである。 http://structure.cande.iwate-u.ac.jp/education/lecture2001.htm