地震に備える
[第3回]
○ガラス、照明家具の破損を防ぐには
窓ガラス、食器棚などのスライド扉、額縁、人形ケースなど、室内には
たくさんのガラスがある。これらが破損して床に散乱すると、素足では
歩けなくなり、避難できない。
(底の厚いスリッパが役に立つので、スリッパをいつも用意しておいた
ほうがよい、と被災した人の感想がありました。いつか用意しておいた
ほうがよい必需品リストを紹介しましょう)
したがって、避難の時に通路となる場所にガラス類がある場合は、
「ガラス飛散防止フィルム」を貼る。
ガラス飛散防止フィルムは、シートとガラスの間をヘラなどで空気を抜き
ながら貼るもので、素人でも簡単に貼れる。
ペンダントなどの照明機具も激しい揺れで天井と衝突し、電球やガラスの
かさが破損して、ガラスが頭上に降りかかったり、床に散乱して大変
危険である。
ひもかチェーンを使って、天井の3点から固定するようにする。
また、天井に固定されている蛍光灯でも、むき出しのものは、揺れによって、
破損し、飛び散るので、カバーつきのものに替えたほうが安心である。
(カバーつきは、古くなった蛍光灯を取り替えるとき、いちいち
カバーをとりはずさなければならず面倒であるが)
○ガラス対策でより万全を期すために
「ガラス飛散防止フィルム」は、デパートなどの防災コーナーで売っており、
価格は92cmx180cm で、3300円くらい。
ガラスの表面に薄いフィルムが貼りつく「飛散防止スプレー」も販売されて
いる。
もっと手軽な方法としては、窓ガラスなどにセロハンテープを十字に貼る
方法もある。
強力なガラス強化フィルムとしては、「アーマーシールド」という製品が
ある。特殊プラスチック製で、1m離れたところで手榴弾が爆発しても
ガラスに細かいヒビがはいるだけで飛散しないという代物だ。
1平方メートルあたり8,500円(工事費別)と値が張るが、裸になって
いるためガラスの飛散の被害を受けやすい浴室の窓などにはぜひ使いたい。
○ビン類に注意
サイドボードなどに入れられた洋酒のビン、キッチンにあるビン類も
地震の際には凶器となる。
キッチンのビン類には、まとめて、バンドなどをかけ、倒れないようにする。
○ガラスのそばには軍手が必需品
いざというとき、ガラスが飛散したらそれを取り除いてから避難することに
なる。そこで、ガラスのあるところには、軍手をあらかじめ用意して
おいておくのがよい。
[第4回]
○家の補強対策
筋交いを入れたり、構造用合板をはって壁を強化する。
(筋交いは地震被害ですっかり有名になりましたね。
柱とはりでできる長方形に加える対角線の構造部材です)
土台、柱、梁(はり)、筋交いなどを点検し、接合部を金物などで補強する。
(伝統的な木造構造は、柱と梁の接合部はクギを使わず巧みにはめこむ
いわゆる、ホゾ繼手なのですが、この技術は難しいから一般にはクギ使用
ですね。これを橋のように接合部に金物を使って完全に近い結合状態を
作ってやるわけです。橋ではこの金物のことをガセットといいます)
外壁に亀裂があれば、専門家に補強を依頼する。
土台などがシロアリに食われていないか点検し、被害があれば、専門家に
補強を依頼する。
柱や、窓の開け閉めの具合、外見などから、建物に傾きがないか点検し、
傾きがあれば、専門家に補強を依頼する。
(地面が均等に沈下しないで、変則的な沈下、つまり不等沈下:土木の場合
不同沈下:建築の場合 のときに色々な力や変位が生じて面倒になります。
沼や田圃を埋立て作った宅地というのは、この問題がつきものです)
1階部分を店舗やガレージにしているために道路に面した部分が広く
開いている構造になっている場合は、専門家に依頼して、鉄骨で補強
してもらう。
(建築用語では、1階の柱だけ立ち並ぶ、広い空間の使える部分を
ピロティといいますが、阪神大震災ではピロティ被害が目立ちました)
(柱と柱の間にある壁の役目が見直されたわけです。もっとも
こうして壁だらけにしたら、空間が少なくなりガレージ向きではなくなります)
2階のベランダを柱で支えていない構造になっている場合は、専門家に
補強を依頼する。
(ロミオとジュリエットの場面を連想してください。バルコニーは
先端が伸びていて、力学的には自由になっている、いわゆる片持ち構造
です。したがって重い物が載ったら危険、多数がベランダに集まったら
アブナイ。かっこうが悪くても、下から柱で支えたいものです)
☆ ☆ ☆
梁(はり)と桁(けた)
どこが違うのと聞かれますが、実は私にもよくわかりません。
柱と梁で構成されるラーメン構造でも、垂直に配置されるのが柱で
水平に配置され曲げモーメントを受けるのが梁としか説明されません。
梁でも桁でも、水平に配置され上に載った荷重を支え、そして曲げモーメント
を受けるわけです。
私の理解では、山から切り出した大きな丸太から四角に整形して作ったのが
梁で(1本もの)、いくつかの材木や部材を組み合わせて作ったのが桁
(複数要素から構成されたもの)だと思っているのですが、
いろんな本を読むと逆の説明をしている本もありますから
わからなくなります。
梁 beam der Balken
桁 girder der Traeger
ただし英語でも、beam と girder をそれぞれ混用しています。
ドイツ語でも同じように混用しています。
[第5回]
マンション住居編です
○マンションの地盤は安全か
一応、鉄筋コンクリートづくりのマンションは丈夫ということに
なっているが、低湿地や水田、川、海の埋立地や、液状化の可能性のある
場所、敷地が異なる地盤にまたがっているところは、安心とはいえない。
(建築会社にどういう施工をしたか聞いてみることは必要)
○マンションの構造はしっかりしているか
建物の自重がもっともかかる1階が、柱が少なく開口部が大きい店舗や
広いピロティになっているマンションは、構造的に弱く、つぶれる
可能性がある。
(神戸でピロティの地震被害はたくさん観測された)
また、下層が鉄骨鉄筋コンクリートになっており、上層が鉄筋コンクリート
づくりのマンションは、そのつなぎ目のところで折れる心配がある。
自分が住んでいるフロアがそのつなぎ目になっていないか建築会社に
確認する必要がある。
平面が、L字型、T字型、コの字型の建物も、構造的に弱い。
(ロの字型は強いわけです。開き断面より閉じ断面の方が強い)
○マンションの耐震診断チェック
外壁のコンクリートやタイルにヒビが入っていたり剥落しているところ
はないか
廊下、階段、建物の接合部に亀裂が入っていないか
扉や窓はきしまずに開閉するか
マンションの入口のコンクリート部分が隆起したり、陥没していないか
配水管や地下駐車場に、つらら状のものが下がっていないか
<このつららは「酸性雨つらら」といい、コンクリート中のカルシウムが
酸性雨に溶けて流れ出したものである。これが見られると、鉄骨が錆びて
脆くなっている可能性がある>
(人工鍾乳洞の原理ですね)
以上の兆候が見られたら、専門家による総合的な耐震診断を受ける
必要がある。
○マンションの自室の強化・安全対策
押入れなどをシェルターヘのように強化して、天井や床が崩れても
生存できる安全地帯を室内に確保する。
いざというときにベランダから下りられるように、縄ばしごを
取り付けておく。
類焼を避けるためにベランダには、灯油などの燃えやすいものを
置かない。
家具はすべて固定し、家具が、天井の崩れを支え、崩れ落ちたときに
少しでも生存のためのスキマができるようにする。
☆ ☆ ☆
兵庫県南部地震(阪神大震災の正式名称)でも、
一般に戦前の古い木造住宅は弱くて破壊したが
マンション特に最新の建築基準の下で作られたのは丈夫だった
といわれています。
古いものほど痛みも激しく、そもそも基準がゆるいのだから、
古いものほど弱い。 新しいものほど強い。
これは原則論で、中には建てたばかりのマンションが壊れて
隣のそれより古い木造住宅が残っている場合もあり、
ケースバイケースです。
壊れる原因はいくつかあって、どれに該当するか調べてみないと
わかりません。
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