地震に備える その4

[第18回] ビルで被災したら ○建築基準法ではビルの安全は保障されているのか   阪神大震災で倒壊したビルの多くは中高層ビルで、ほとんどが1981 年以前の旧建築基準法で建設されたものであった。   旧基準法では、上の階に行くにしたがって柱の太さが細くなっても許可  されていた。また、階ごとに柱の素材が違うこともある。その場合、柱の  強度も変わってくるはずで、階によって揺れによる影響も変わってくる。  そのため、ビル内の特定の柱に揺れの影響が集中するという事態が起きる。  その上、阪神大震災以前の建築業界では、横揺れに対する研究は十分行わ  れてきたが、今回のような直下型地震では横揺れを上回る激しい縦揺れが  建物を襲い、超高層ビルのように揺れに対応できる柔構造でない中高層  ビルでは地震の揺れの影響を受けやすくなっている。   被害にあったビルの中間部分が押しつぶされ、つぶされた階ではすべて  の柱が崩れ、下の階に陥没した。これは瞬時に起こった縦横の揺れに柱が  ついてゆけず、いくつかの柱が折れ、残りの柱にその分の重量がかかって  しまい、上の階を支えることができなくなったためと考えられる。   また、いろいろな店舗が入った雑居ビルというものも危険である。用途  によって内装や柱の数が異なっているため、揺れに対する強度が弱まって  いる。 ○超高層ビルは地上にいるより安全か   「超高層ビル」は一般的に高いビルの名称であって、何m以上という規  定は特になされていない。だいたい100m級のビルを「超高層ビル」と  仮定すると、そのようなビルは全国に現在233棟も存在し、そのうち  半数以上が首都圏に集中している。柔構造という耐震設計がなされている  超高層ビルでは、地震が起こったとき、風を受け柳のように揺れ、地震に  よる影響を吸収し、ビルの倒壊を逃れる設計になっている。これにより他  の建物のようい崩れ落ちるとか倒れるという心配はない。このため、  超高層ビルにいるからといってパニックになる必要はない。   超高層ビルは耐震性にすぐれているが、共振という現象が危険である。 周期の長い地震波に超高層ビルが襲われたときに起こるもので、ビル本体  の柔構造による揺れと地震波が同調して、揺れがしだいに増幅されたもの  である。  (通常の地震波は周期が1秒以下であるが、軟弱地盤の場合は地震の周期  が1秒以上のことがある。超高層ビルは数秒という固有周期なので、地震  の周期と超高層ビルの周期が一致する場合がある。このとき共振になる) [第19回] 卒業生が何人かお世話になっている関係で 鴻池組から技術レポートが送られてきます。 その中に地震関係の新刊書がありましたので紹介します。 松田時彦:活断層、岩波新書、岩波書店  日本の活断層研究の第一人者である著者が日本各地の活断層の  地震危険度を評価している。 金子史朗:活断層と地震、中公文庫、中央公論社  古代史の謎の著書も多い著者の書き下ろし  地震と地球物理学を要領よくまとめたもの。 佃為成:大地震の前兆と予知、朝日新聞社  東大地震研究所助教授であるが、この本で取り上げている  前兆現象と地震予知の関係は、まだ学会では正当に  あつかわれていないみたいです。 木村政昭:大地震期 第三の予知、青春出版社  琉球大学の先生で、過去の火山噴火とその後の同じ地質構造線上に  地震が発生するまでの期間と、その震源の距離が一定の関係式で  表されるという学説をたてて、新聞などで紹介されたことがある。  この著者の予知を、従来の地震周期説、観測データによる予知  などの次の第3の予知として提唱している。

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