地震に備える その2
[第8回]
職場の中を点検する
(参考文献ではオフィスの中の点検、となっていましたが大学向けに
アレンジします)
OA機器と通信設備はこうして守る
(1)OA機器や通信設備を災害から守る
コンピュータやPBX、パソコンを始め、ファクシミリ、コピー機など
が大地震で倒壊したり、火災で燃えたり、水浸しにならないよう
あらかじめ設置しておく。
電源、メインコンピュータ、PBXなどの設備はあらかじめ次のような場所に設置す
る。
・設備自体の重さに耐えられるような床設備の所に置く。
・浸水のおそれのないフロアにセットする。
・外部から火が入らないよう窓の少ない部屋に設置して、いざというときは窓に
シャッターを下ろす。
OA設備を転倒から防ぐ。
・転倒しないよう、機器と机、床などの間にストッパーをつける。
(2)バックアップを考えておく
データのバックアップ 通信回線のバックアップ
これらは大事なテーマである。
・非常用電源(蓄電池、非常用発電装置など)
・コンピュータネットワークの分散化を進める。
・データのバックアップシステムを完備する。
・通信回線のバックアップ、または危険分散を図っておく。
加入電話を異なった2つの市内交換局に分散して収容する。
市内交換局との間を光ケーブルにより2ルート化する。
市内交換局との間をマイクロ無線により2ルート化する。
市外回線を、公衆回線と専用回線などに分散する。
(3)災害に強い通信サービスを確保する
阪神大震災においては、一般通話は最高時には、通常の4〜500倍に達したという。
なかなか電話がかからなくなると覚悟した方がよい。
その反面 比較的利用できたのは次のようなサービスである。
・公衆電話
・携帯電話、自動車電話
・ポケベル
・専用線
(4)時差通信の可能な通信サービスを利用する
災害で避難した場合、次のような時差通信が可能な通信サービスが
威力を発揮する。
・伝言ダイヤル、メッセージイン
・Fネット(ファクシミリ通信網サービス)
・パソコン通信(電子掲示板、電子メール)
☆ ☆ ☆
データのバックアップも
普段から まめに とっておくべきです。
今は会議資料、講義資料、研究データ、手紙等
すべてFDの中
もし、FDの中身が消えてしまったら、あるいはPCが調子が悪くなって
読み出せなくなったら
さあ大変
コンピュータ時代でも紙に出力しておくことが
やっぱり大事なんてこともあります。
ワープロ作業中に突然の停電とか
ソフトの操作ミスで せっかく作った文章が保存されず
消えてしまった
ということも再三しでかしています。
まったく自分ながら情けなくなる。
同じ名前の文書ファィルで保存しようとすると
以前のファイルが消されてしまう
ついうっかりと同じ名前の文書ファイルを登録して、別の大事なファイルを
この世から消してしまうミスを繰り返しています。
多少システムの知識がある方はテクニックで復元できるようですが。
回線のバックアップということも あんがい大事
インターネットが使えなくても、パソコン通信で情報交換できる
こともあります。
電話だと その時相手がいないとコミュニケーションが成り立たないが
FAXなら不在でも送られる。
先週の金曜日の夜9時から本日月曜日の昼12時まで
農学部の改修工事に関係して
情報処理センターの電源が使えなくて
ネットワークが使えなかったわけですが
パソコン通信は大丈夫でした。
(あたりまえですが)
[第9回]
○こんなオフィスビルは要注意
ビルの倒壊の注意点です。 やや専門的
阪神大震災で破壊したビルを観察したら
次のようなことが報告されました。
7〜8階建てのビルの中間階(3〜4階)が押しつぶされるケース
が目立った。
中間階がつぶれたビルの多くは1981年以前の旧建築基準法に基づいて
建てられたもので、「上の階にいくほど建物の強度が弱くなる構造」に
なっており、上部の重みに中間階部分が耐えられなくなったことが原因と
推測されている。
(1981年以前の基準では、
いわゆる片持ち梁を垂直に立てたモデルなので、水平地震力が
建物に作用すると、下の階ほど根元に近いから、曲げモーメントなども
大きくなるわけで、建物の下の階には大きな力が働くが、上の階には
小さな力が働くという古典的理論)
(これでは地震に建物が揺れて、いわゆる地震応答の影響が
考えていないから、1981年より後の建築基準法で、建物の地震応答
を考慮した基準に改正された)
なお、新建築基準法によって建てられたビルでも階によって利用用途が
異なる雑居ビルは、要注意である。というのもオフィス階と住宅階、
そのほか倉庫など複合的な目的で造られている雑居ビルの構造は、柱や梁
などの太さ、強度がフロアにより変更され、まちまちになっているので、
振動の衝撃が弱い階層、部分に凝縮した形で現われるからだ。
(たとえばビルの床は、その部屋の使用目的によって強度が決められて
いる。必要以上に丈夫にしすぎたり弱すぎたりしないよう設計されている)
(同様に柱の間隔や柱の強さも、それぞれ空間の使用目的で適宜決められて
いるので、見ようによっては強度がまちまちの構成要素から成り立っている
ことになる。また、構造が違う部分、たとえば鉄筋コンクリート造りと
鉄骨鉄筋コンクリート造りが結合され建物を構成しているような時
互いに性質が違うため振動のしかたが異なり、変位のずれを生じたり、
継手部分に力のしわよせが来て破壊するといった例が見られた)
(またまた脱線した例えですが、性格の不一致による離婚みたいなもの
互いに一緒に揺れたら被害が小さいが、一方がゆっくり揺れるのに
他方が小刻みに揺れたり、反対の動きをしたら、食い違いが大きくなり
二人の生活に亀裂が入ります)
(また例えですが、強度が強い構成要素と弱い構成要素から成り立っていると
どうしても被害は弱いところに集まります。強いところは何とか耐えられるが
その動きについていけない弱い所は脱落するからです。夫婦喧嘩で
子供が犠牲になったり、主人が職場で面白くないことがあると、奥さんに
当り、奥さんもつい子供に当たり散らし、子供はそばに猫や小犬がいたら
そのペットに当たる、という具合でペットこそいい迷惑。
最近のいじめも、結局そういう力の流れのしわよせが、弱いところに
きているのかもしれません)
こうしたことから、まずは建物の構造や建造プロセスについても点検して
おく必要があり、脆弱な箇所があれば、そこを補強し、避難ルートについても
再検討しておかなければならないだろう。
(こういうことは、やはり専門家のチェックを受けたほうがいいでしょうね)
☆ ☆ ☆
建築学会と土木学会の耐震設計基準の見直しは
だいたい大きな地震の後に行われています。
ごくおおざっぱに紹介すると以下のようになります。
*1968 十勝沖地震
1970 せん断耐力の強化(建築)
1971 道路橋耐震設計指針(土木)
*1978 宮城沖地震
1980 道路橋示方書耐震設計編(土木)
1981 抜本的に内容を一新した耐震設計(建築)
1990 新道路橋示方書(土木)
[第10回]
地域の地盤状況を知る
○液状化現象地域の情報を得る
液状化現象は新潟地震(1964)のとき発見された
砂地が水を含んだ状態で激しく揺すられると、地盤崩壊を起こして
中から砂が吹き上がってくる現象である。
日本海中部地震の時も、八郎潟干拓地帯に、この現象が見られ
道路の上に下から強い力で浮き上がってきた砂の後を見たことがあった。
こうなると、もう砂地盤は地盤でなくなるので、その上に建てた構造物は
基礎部の崩壊を起こすから、傾斜したり転倒するおそれがある。
今回の阪神大震災でも大規模な液状化現象が発生し、平坦地においては
地盤沈下、沿岸地域では地盤の水平移動にともなう港湾の被害、
ライフライン等の埋設物被害が発生した。
阪神大震災では、地震の揺れが大きかったせいか、今までは
液状化が起こりにくいとされていた礫やシルトが混じった砂(平均粒径
20ー50mm)に液状化現象が起こったのは関係者の認識を改めさせた。
いちおう大きさによる分類
礫(粒径2mm以上) 砂(2ー1/16mm) シルト(1/16mmー1/256mm) 粘土(5μ以下)
自分の関係のある建物が、こうした液状化現象の影響を受けそうな地域にある
かどうか知りたいですね。
すでに東京、神奈川、千葉などの首都圏や、静岡、愛知などの中部地方の
各都県では「液状化地図」が作られており、自治体の窓口で閲覧できる
ようになっているという。
○地盤特性を理解する
建物の立地場所の地盤が地震に対してどのような特性をもっているかを
知るとともに、もう1つ重要なことは、地盤の形成過程を把握しておく
ことである。その調査データによって建造物の耐震性、強度を推測する
ことができるし、新築や増築する場合でも地盤特性に配慮した設計ができる。
たとえば、東京の地盤は、比較的固い洪積層からなる山の手台地、洪積層の
上に軟弱な沖積層が厚く積もった下町低地、そして台地をきざむ谷から
形成されている。このうち脆弱な地盤といわれているのが、下町低地や
海浜埋立地、東京湾沿岸地域、多摩丘陵地帯などである。
☆ ☆ ☆
土木学会の道路橋設計示方書では
設計水平震度(地震のときに構造物に水平に働く力の構造物自重に対する割合)
kh=CZ・CG・CI・CT・kh0
詳しくは私の講義などで説明していますから、ここでは省略
CG:地盤別補正係数
だけ紹介します。
従来の耐震設計(昭和55年)では4種類の地盤に分類していたが、
その後の被害調査により、新しい規定では3種類に分類している。
I種地盤 岩盤
II種地盤 I種地盤とIII種地盤の中間の、洪積地盤と沖積地盤
III種地盤 軟弱地盤
そして、地盤の区別は下記の式で判別します。
I種地盤 TG<0.2
II種地盤 0.2≦TG<0.6
III種地盤 0.6≦TG
ここで TG(s)は地盤の特性値というが計算方法は省略
さて、こうやって地盤の種別がわかったら
上に紹介した水平震度の式において
CGは次のように計算式に与えるわけです。
I種地盤 のとき CG=0.8
II種地盤 のとき CG=1.0
III種地盤 のとき CG=1.2
すなわち、地盤が岩盤の時は、少ない地震力が働くと考え
軟弱地盤の時は、割り増しした地震力が働くと考えるわけです。
これはあくまでも目安なので、大きな重要な構造物の場合は
地震応答計算などして地震の影響を推定します
次の回へ