茨城県東海村の核燃料加工会社で起きた放射能漏れ事故 
速増殖実験炉常陽の燃料を作っている工程で 
あやまってウランを大量に入れたらしく、 
臨界事故(核分裂の連鎖反応)が起こったようだ。 

ウランは質量で臨界管理をしており、沈殿槽に入れる制限値は2.4キロ
と定められている。
しかし、倒れた従業員は救助される際、
「ウランを(制限値の約6倍に当たる)16キロ入れてしまった」と言ったそうだ。
事故当時、臨界の特徴とされる青色の光を見たという証言もある。

この作業は9月29日から始められ、沈殿槽には29日に約11キロの
ウランが入っていて、30日にさらに5キロ入れたところで臨界に達した。
(10月3日 河北新報)
この作業を行った作業員は、軽水炉用の燃料を作る作業には慣れていたが、
常陽の燃料(高濃度)を作る仕事ははじめてだった。

テレビ報道と新聞で、ある専門家は分量を間違えたのではないかと推定した。

これまで、この会社は軽水炉用のウランをおもに扱っていた。
 濃縮度 3% これだと目標限界は16kgとされている。(ウラン0.48kg)
ところが、今回の場合、常陽用ウランは濃度が高い。
 濃縮度 18.8% 目標値2.4kg(ウラン2.4*0.188=0.45kg)
 これを軽水炉用ウランと勘違いして、16kg入れたものだから、
 (16*0.188≒)3kgのウランが貯まってしまって臨界状態になったのであろう。

10月3日の新聞やテレビでの報道では
この会社が社内で違法マニュアル作っていたことがわかった。
違法マニュアルにしたがえば、許可された溶解塔を使わず、
手作業でステンレス製のバケツを使ってよいことになっていた。
さらにウラン溶液を溶解塔に入れずに沈殿槽に入れて、
大量(危険な16キロ)のウランを貯めたから、臨界事故になってしまった。

10月4日のテレビ報道で
規定どおりに溶解塔(貯塔)に入れたら、塔は細いから、発生した中性子が
ウランに衝突しにくく、ウランが核分裂しにくいはず(中性子がウランに衝突しにくい)。

それが、作業のしやすい沈殿槽にウランを入れたから
発生した中性子がウランに衝突しやすくなり、核分裂がとまることなく
進行したとテレビで解説していた。

もちろん核分裂を起こすことは会社は考えていないが、
溶解塔という形は核分裂を押さえるために設計されていて
一種のガードであったが、それが使われなかった。

この会社には中性子測定器も置いていなかった。
壁も10センチの厚さで、原子力発電所の数メートルの厚さに
およばなかったと紹介されていた。
(核分裂も中性子発生も予測していなかった。意図してなかった)

被爆した職員を助けに来た救助隊員に、被爆したことを知らせていなかったから、
救急隊員が2次汚染(被爆)をしてしまった。救助隊もどこの病院に連れていけばいいか
被爆者を見てから判断したらしい。始めから知らせていれば、救急隊員も被爆を
防ぐ防護服を持ってくることもできたし、すみやかに適切な病院に連れて行けた。
わざと知らせなかったのではなく慣れていないから、こうした不手際をしたのだろうが、
今後の教訓になるだろう。

今回の教訓として、
臨界量を超えたウランが誤って集積した際も、警報で知らせるような装置
核分裂が続くと、それを停止する装置
などが必要。    週刊誌より