the story girl

「可愛いエミリー」も小説としての筋に乏しかったのだが、「ストーリー・ガール」
はもっとひどく、小説として話が進んでいく展開はなく、お話好きの魅力的な少女
セアラ・スタンリーが、彼女の回りの人々の話や、何代か前の先祖の逸話、
あるいは彼女の創作した昔話などを、男の子たちに聞かせるという章が
何度も繰り返されている。

これは本来は詩にしたほうがよかったかもしれない。
いくつかの話を読んでいると、あのヘルマン・ヘッセの作品を連想してしまった。
もしかすると、彼女はヘッセの系統につながる存在になれたかもしれない。

こういうわけで、「可愛いエミリー」と「ストーリー・ガール」を読んだのだが、
私の独断では、やはりモンゴメリーにとって、アンのシリーズが代表作。

読者は、話の筋においてアンが成長する過程を読みたいから、
出版社が作者にそれを要求したというのは妥当なことだと思われる。
そして、作者は想像や夢想の世界もすてきれず、自己満足のため、このような作品を
書いたのではないかと考えるのである。
作者モンゴメリーは小説家というよりは詩人になるべきであった。

(ストーリー・ガールはむかし本で読んだという話をみんなに聞かせる)
むかし、この世で一番美しいお姫様がいた。あらゆる国から王様たちが求婚に来た。
しかし、姫はだれか一人を花婿に選ばなかった。姫は、王という王を従える王が
来るまでは、結婚しないという。そういう王が現れたならば、王の中の王として
世界を従える王の花嫁になれるからというのだ。そこでどの王も、他の王をすべて
従えられるところを見せようと、戦争に出かけた。多くの血が流され、悲しみが
生まれた。
一人の王が自分こそみんなを従えたと思うと、とたんに別の王が現れて、その王を
従えてしまうのだった。何度もそういうことが続いて、とうとう高慢な姫君の花婿
はもうずっと出て来ないように思われた。それでも姫はまだ誇り高く、自分の望みを
すてなかった。

ある日のこと、お城の門に角笛が高く吹きならされ、よろいに固く身を包み、かぶと
を深くかぶった、白馬に乗った背の高い男が現れた。男には家来一人ついていず、
みんなが笑ったが、男は言った。「私こそ、すべての王を従える王だ」
(姫はそれを証明してほしいと言った。が、男の声には姫を恐れさせる何かがあった。
男は姫と父親と宮廷の家来たちに、結婚式の後自分と一緒についてくるように言った)
男の言うとおりにして結婚式がすむと、花婿は花嫁を抱きかかえ、白馬に乗せた。
みんなが二人の後をついて行くと、黄昏の中の小暗い谷間に下りて行った。
そこは墓石でいっぱいだった。男は言った。「ここは私の国だ。ここにあるのは、
皆、私が従えた王たちの墓だ。私は死なのだ」
はじめて男がみんなに、その恐ろしい顔を見せたとき、高慢な姫は悲鳴をあげて
気絶した。死神は気絶した姫を抱いて、白馬に乗り、墓石の中に駆けて行った。
姫は二度とこの世に姿を現さなかった。年老いた王も家来もあきらめて城に帰ってきた。

(高慢な望みをもつ姫の結末、それはぞっとするものであった。
何か教訓的な話である。でも、こんな話ばかりでもない)

(キャンベル氏の曽祖母ベティー・シャーマンがどうして夫をつかまえたか。
モンゴメリーの解説書にはよく出てくるエピソード。当時の娘の常識からいささか
逸脱していた行為。しかし、読んでみるとなかなか味のある行いである)
美しいナンシー・シャーマンに好意を寄せる2人の男がいた。ドナルド・フレイザー
とニール・キャンベルであった。ドナルドは彼女が自分に好意を寄せていることを
確信していたが、ニールは自分より金持ちで、彼女の父親に気に入られていたので、
自分の不利なことはうすうす知っていた。雪の中、ドナルドの家に寄ったニールに、
暖かい暖炉のそばでウィスキーを飲むようにドナルドは勧める。ニールは、これから彼女に
求婚に行くということまでしゃべりだしてしまった。そこで、これは大変と計略を
めぐらすドナルドは、ニールにウィスキーを勧めて彼を酔いつぶし眠らせてしまった。
翌朝先回りして彼女の元に飛んでいったドナルドは彼女に求婚して、承諾の返事を
もらうと、すぐ彼女をせきたてて新しい土地に連れていってしまった。
眠りから覚めて気がついたニールが、急いでそりをとばして彼女の家に駆けつけたが遅かった。
そこにはナンシーの妹ベティーしかいなかった。彼女も美しかった。彼女は以前から
ニールが好きだった。彼女はニールに、二度と会えないナンシーなど追わず、
新しい娘を捜すべきだと言った。彼になら喜んで「イエス」という娘がたくさんいる。
そして、たとえばここに一人いると、大胆な自己宣伝をしたわけである。
ニールは冷静に考えて、姉と同じくらいに美しい妹ベティーを選んだのだった。

(この選択は正しいと私も思う。自己主張すべきときは自己主張するのが正しいと
する、現代ならあたりまえの行為だが、モンゴメリーより更に前の時代の女性
としては、やはり当時の人々を驚かせることだったのだろう)

「だから言ったでしょう」が口癖の頑固な女の話。
そのおばあさんは結婚して間もなく、だんなさんと、果樹園に植え付けたりんごの木
のことでけんかをした。付けていた名札がなくなっていたのだった。
夫はフェイムユース種だといい、彼女はイエロウ・トランスペアレント種だと
言い張った。近所の人が野次馬に来ても、二人は言い合いをやめなかった。
ついに怒った夫は「黙れ」とどなった。妻は、夫に行儀というものを教えてやろう
と思ったのか、それから5年間本当に黙ってしまった。
5年後に、そのりんごの木に実がなった。イエロウ・トランスペアレント種だった。
そこで彼女はやっと口をきいた。「だから言ったでしょう」
(そのあと普通にしゃべったのと質問した女の子に、ストーリー・ガールは答える。
むかしと同じように話すようになった。しかし、お話としては、やっと口をきいた
ところで終わるのがいいのだと言う。そして、あなたは、話の終わりを、終わりに
したいところでやめさせてくれない、と女の子を非難するのであった)

(この話は赤毛のアンにも似た話があった。こんな女性がいたら大変。
それにしても5年間とは驚くべき意志の強さ)

インディアンの若者の話
そのインディアンの若者は狩りが上手だった。大鹿を何頭もいとめ、その美しい
毛皮を恋人に贈った。若者は美しい恋人と仲良しだった。二人は川の流れる限り
愛し合うことを誓っていた。ある黄昏どき、彼は大鹿をしとめた。
そして、その毛皮をはいで、身にまとった。星明かりの下、森を抜けて、
幸せな気分で、本物の大鹿のようにとびはねたりした。
ところが、これを偶然に彼の恋人が見て、本物の大鹿だと思った。
娘はこっそり足音を忍ばせ森を抜けて、獲物をしとめやすい崖の上に立った。
そして、弓を引きしぼり、その獲物に命中させたのだった。彼女は技にたけすぎて
いたため、大鹿の皮をかぶった若者は心臓に矢を受けて、死んでしまった。
悲しんだ娘は、彼のあとを追うように亡くなった。二人は川の畔に並んで埋められた。

(かわいそうな話。もっと推敲したら、名作ができるかもしれない)

こわい実を食べた少年の話
「こわい実」と呼ばれる、赤い房になる小粒の果実。それは毒だから、食べたら
いけないと大人たちから言われていた。でも、少年ダン食べるなと言われたため、
食べてしまった。食べるなと言われなかったら、食べなかったかもしれない。
うまいうまいと、彼は3房も食べてしまった。1時間たっても彼は何ともなかった。
ところが、暗くなる頃に家に戻った彼は、気分が悪くなった。お腹が痛くなった。
セシリーは「家庭医学」に出ている解毒剤のできる限りのものを彼に飲ませた。
それがきいたのか、10時になって彼は回復してきた。10時半にお医者さんが来た。
翌日なんとか回復した彼に、フェリシティが「今度のことでこりたでしょう。
この次はいけないと言われたら、こわい実など食べないでしょう」と言ったもの
だから、彼の反抗心がまた頭をもたげてしまった。
なんとあれほど苦しんだのに、彼はまたあのこわい実を食べるのだった。
みんながあきれるやら、腹痛に備えてお湯を沸かす用意をした。
結局、彼は何もなかった。

(こんなことってあるのだろうか。彼は元気な少年で、たまたまあのときは
体調が弱っていたのだろうか)

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