香港旅行記(5)

18回目から20回目まで

香港旅行記 その18

まとめ(上) 中国のことわざ

このシリーズ、あと3回でまとめようと思っていた。

最初に考えていたのは
1.香港と中国の関係
2.香港とイギリスの関係
3.香港から盛岡までの帰り道
という案だった。

ところが、ご覧のように
香港は中国でありながら、中国ではない
特殊な条件の地域である。

これをきちんと整理するのは私の力を越えるものである。

というわけで、あと2回で
できるだけ香港をだしに中国のことにふれ
中国と世界との関係を述べながら
結局、日本の中における中国や西欧の影響を考えて
終わることになりそうである。

つまり
 中国と日本の関係
 中国と欧米と日本の関係
というようなことになりそうである。
(あるいは、それも竜頭蛇尾に終わるかもしれない)

ともかく、今日はそんなところで
思いつきを書いてみる。 (今日は2月16日に行われるシンポジウム
の原稿を書いたり、3月発売予定の本の校正をしたりと多忙です)
(この橋梁工学の本は結局遅れて5月に発売されました)

日本語に使われる中国のことわざ

我々が何げなく使う日本語の中に
中国から来た「ことわざ」が多い。

アメリカの大統領や偉い人の演説には
聖書の引用が多い。的確に引用することで
話者の教養の高さを示している。

日本の場合は、その教養の高さを示すのに
中国のことわざや仏教からの用語が使われることが多い。

以下にいくつかのことわざを紹介する。

このような知識をもっている者こそ、中国4千年の誇る
中国料理を食べる資格があるといえるかもしれない。

(香港の人は堅いことは言いません。お金を払って美味しいと食べて
くれる人なら歓迎します)

1.太公望
 川で釣をしている人がいた。その人は呂尚(りょしょう)
 という人であったが、周の文王はなかなかの人物と認め
 あなたこそ祖父の太公が望んでいた人だと言って、呂尚
 を召しかかえた。はたして太公望のはたらきで周は慇を
 倒し、新しい王朝を築くことができた。今では単に釣の
 好きな人のことをさしますね。たとえばハマちゃん。
2.覆水盆に返らず
 一度こぼした水はもとの器に戻らない。一度別れた夫婦
 はもとには戻らない。一度してしまったことは、取り返
 しがつかない。
 上に書いた太公望は若いときは、本ばかり読んで少しも
 働かなかった。奥さんの馬氏はあきれて実家に帰ってし
 まった。しかし太公望(呂尚)は周の文王に認められ、
 大出世をしたので、それを知った馬氏は後悔して、呂尚
 のところに戻ってきた。そこで、呂尚は馬氏に向かって
 鉢に入った水を庭にこぼして、その水をもとの鉢に戻し
 たら妻として受け入れようと言った。馬氏は試みるが、
 わずかの水しかすくえなかった。逆反応はできない。
 今の人なら、エネルギーとかエントロピーの概念を持ち
 出して、ものごとは一方的にしか起こりえないのだと言
 うかもしれない。コンピュータゲームでリセットボタン
 を押して、もう一度やり直しをするのは実人生ではでき
 ないこと。バーチャルの世界だからできるのだ。
3.呉越同舟
 敵味方どうしでも、どうしようもないピンチになった時
 は、お互いに助け合うものである。仲が悪くても、共通
 の困難には協力しあうものである。
 春秋時代、呉の国と越の国は戦ってばかりいた。しかし
 呉の人と越の人が同じ船に乗り合わせ、嵐にあえば助け
 合うはずである。
4.背水の陣
 後ろが川などで、逃げ道がない場所をわざわざ選んで、
 必死に戦う陣の作戦。絶体絶命の立場で物事を行うこと
 。漢の劉邦の名将韓信が、趙の軍と戦ったとき、隊を2
 つに分け、1つは川を背に陣をはった。もう1つは趙の
 陣の裏山に配置した。背水の陣の漢軍は死にものぐるい
 で戦ったので趙の陣は驚いた。そしてからになった趙の
 陣に、裏山からもう1つの漢軍が入って占領したので、
 漢軍は勝つことができた。
5.国士無双
 国中にふたりといないすぐれた人。いちばん立派な人物
 。漢の劉邦が天下をとるため楚の項羽と戦っていた。自
 分の地位に不満をもつ韓信は劉邦の軍を逃げ出した。ま
 もなく大臣の蕭何(しょうか)が韓信の後を追っていっ
 た。頼りにしていた蕭何までいなくなったのでがっかり
 した劉邦のもとに、やがて韓信を連れて蕭何が戻ってき
 た。韓信は国中にふたりといないすぐれた者(国士無双
 )だから、韓信を大事にしてほしいという蕭何の提案に
 したがって、劉邦は韓信を将軍にした。
 国士無双というと別のものを連想するようですね。
6.四面楚歌
 楚の軍を囲む漢軍は、楚の国の故郷の歌を歌って、楚の
 兵士が漢軍に投降したと思わせた。楚の王項羽は、この
 楚の歌を聞いて、もはやこれまでかと戦意を失ったとい
 う。まわりをすべて敵に囲まれている状態。これから、
 まわりの人に反対されて、誰も味方がいない状態をいう
 。垓下(がいか)の歌

7.杞憂
 昔杞の国に、天がくずれて落ちてきたらどうしようかと
 心配して、夜も眠られない人がいた。とりこし苦労をす
 る人のこと。
 確かに天は空気しかない空間だから落ちてくるはずはな
 いのだが、隕石や人工衛星がたまに落ちてくるから、私
 も少しは心配だ。
8.風林火山
 風のようにすばやいと思うと林のように静か。火のよう
 に勢いよくせめると思うと山のようにどっしりと動かな
 い。状況にあわせて変化する。武田信玄の旗印に使われ
 た。
9.弱肉強食
 力の弱い者の肉は、強い者に食べられる。力の弱いもの
 は力の強いものの犠牲になる。
 関連する言葉で食物連鎖(中国のことわざではない)。
 ○肉○食 ○の中に適当な漢字を入れる問題で、焼肉定
 食と入れた子供がいたそうです。これでも正解(?)。
10.和をもって貴(とうと)しとなす
 世の中で暮らしていくのに、みんなが仲良くして、争わ
 ないことが大切である。聖徳太子の十七条憲法にもある
 言葉だが、もとは論語の學而編にあるという。

他にもたくさん、中国から日本に伝わって
日常我々が口にする言葉は多いが、ひとまずこのへんで。

簡単な英語を理解して、さらに中国4千年の文化を理解する日本人は たいしたもの。

でも、中にはメモリーオーバーで溢れだしている人がいるかもしれない