香港旅行記(3)

11回目から15回目まで

香港旅行記 その14

国際会議

国際会議というものを研究者の立場で考えてみたい。
内容はやや堅くなりますが。

ここでいう国際会議とは、国内の学会の大会のようなものを
外国人も交えて国際交流をはかりながら
互いに研究発表と質疑応答をするものである。

大学生は定期試験があるが、大学の教官は論文を発表して

査読を受けて、よしとなったら専門誌に論文を登載されることになる。
この査読付論文を相当数発表しないと、昇格できないシステムになっている。

教授会に提出する業績資料には、工学部の場合は
著書、論文、国際会議、報告、口頭発表
という分野ごとに整理してリストを提出する。

著書は学問的に高いから売れるというわけではなく
商品としての価値観は別にあるのだが、ともかく内容がすぐれて
かつ売上がよいと出版社も次の企画をとりあげてくれる。

あの先生の本はさっぱり売れないとなると、およびがかからなくなる。
(幸い私の関係した本は、みな赤字にはなりませんでした)

普通は査読論文を投稿すると1年以上審査の期間があるから
(数カ月で結果が著者に届いても、査読意見にしたがって論文を書き直して
いると、あっというまに1年すぎてしまう)

査読論文を3編書いたということは、およそ5年くらい論文書きに
追われたということになる。

1年以上も査読、書き直しに時間がとられると
書き直しを再三した場合には3年かかることもある。

3年後に活字になったとき、内容はもはや古くなって誰も読まなかった
ということにもなりかねない。

いきおい速報的な査読論文に流れることになる。

だから
国際会議でとりあえず発表しておくと考える人もいる。

国際会議といっても、たいていは
1.アブストラクト審査
2.本論文審査
の2段階の審査はある。

不都合ならリジョクトされるし
また書き直して再提出を求められることもある。

当然英語で書かなくてはならず、英語をもっと勉強しておけば
よかったと反省することになる。

国際会議で英語で発表して、質問の英語に対して英語で
答えないといけないのだ。

大学によっては国際会議の論文を査読論文と同じ扱いをする大学も
あるようだが、岩手大学工学部の場合は、国際会議の論文は
査読論文の中には加えない。別枠としている。

早く世界に発表したいという学会では
インターネットで論文を投稿すると、世界統一の時計で記録されるから
確かに世界最初の論文なら、日時記録付きでインターネット保証となる。

しかも、査読作業も電子メールで行えば迅速だから
著者も焦らず、読者も編集印刷出版作業をカットして素早く読むことができる。

私が情報処理センターにインターネットを導入する前
そういう先進的学会のことを例に
岩手大学の若手研究者のために、早くインターネットを整備してほしいと
人文社会科学部のHa先生から頼まれたことがある。

(情報処理センター年報 シグマ4号
 コンピューターとのお付き合いで論文ができるまで)

あちこち関係者の間を走り、予算要求をして
なんとか岩手大学にインターネットを導入できてよかったと思っている。
(関係者の皆様ありがとうございます)

こういうわけで 大学院博士課程に進学した学生は
3年間の間に査読付論文を最低でも1編書き上げないといけない。

なかなか大変である。

できたら国際会議にも発表したほうがよい。

たとえ工学部の場合に査読論文とは別の扱いにされても
真面目に研究していることの傍証になる。

実際に、この香港の国際会議で、日本から来た他の大学の先生も
国際会議で発表した論文は博士課程の研究業績に加えるべきだ
と言っていた。

国内の学会で質疑応答するときには出てこない、専門的な質問が
世界中から同じような専門分野の研究者が集まった国際会議で
出てくることもある。

また、たびたび国際会議に顔を出していると、国際専門誌のエディター
と仲良くなり、良いテーマを教えられることもあるという話を聞いた。

国際専門誌に採用された論文は、工学部でも査読論文とみなされます。

こういうわけで、無理をしても国際会議に参加しているわけですが、
なかなかお金がかかるのです。

この香港の国際会議で北京の清華大学の教授と名刺交換をした。

この教授の下で助教授として研究しているF先生は
私が西安交通大学に講演に行った際、西安交通大学の教授に推薦され
私が最初に世話した岩手大学推薦の文部省奨学生でした。
(1991.1ー1993.3 岩手大学在学)

         

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