ドイツ留学前に数年間、この三修社の雑誌を購読していました。
ドイツ語の能力はさっぱり上達しませんでしたが、ドイツ語の文法の
知識はこの雑誌のおかげで高いレベルを知ることができました。
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ドイツ語と英語 有田 潤 ドイツ語をはじめると英語との類似点がいろいろと目につきますね。 der Bruder 兄弟 ←→ 英: brother ブルーダー die Sonne 太陽 ←→ 英: sun ゾンネ kommen 来る ←→ 英: come コンメン kalt 寒い,冷たい ←→ 英:cold カルト むろんつづりや発音が全く同じというわけではありませんが, こうした実例が多数見られることは偶然ではありえません。 それは次のような事情によるのです。紀元5世紀中葉,ヨーロツパ大陸の北部 ー ユトランド半島とそのつけ根のあたり ー にいた「西ゲルマン族」の一部 が海を渡ってブリテン島に侵入を開始しました。 彼らの建設したいわゆる「アングロ・サクソン七王国」(英:Anglo Saxon Heptarchy) が後のイギリスとなるわけですが,言語の方ではこの移住が「古英語」(5〜12世紀) のはじまりです。 かつてはほぼ同一の言語を話していた民族が大陸とブリテン島に分れて生活する うちに,その言語は時代とともにそれぞれ独自の発達を遂げ,とりわけフランス語 の圧倒的な影響を受けた英語は今日ではドイツ語とかなりへだだりのあるものと なりました。 けれども元来が同一起原の両語のことですから当然いろいろの共通点・類似点を 含むわけです。上記の語は本来の単語ですから,日本語の場合でいえば 「和語、やまとことば」に当り,(1)「継承語」Erbwort とも呼ばれています。 なお英:Dutch「オランダ(人、語)の←→ deutsch 「ドイツ(人,語)の」、 英:German「ドイツ人」←→Germane「ゲルマン人」という意味のズレも 注目すべきでしょう。 しかし英独両語に類似の語があるからといって,ただちに上述の場合と同じ事情 によるとはかぎりません。 die Nation 国民 ←→ nation der Philosoph 哲学者 ←→ philosopher ナツィオーン フィロゾーフ der Doktor ドクター ←→ doctor die Symphonie 交響曲 ←→ symphony ドクトア ズュンフォニー studieren研究する←→ study organisieren組織する ←→ organize シュトゥディーレン オルガニズィーレン direkt 直接的 ←→ direct elektrisch 電気の ←→ electric ディレクト エレクトリッシュ などはたいへん似ていますが, これらは英独両語がともに他の言語から取り入れたものなのです。 左側がラテン(羅)語,右側がギリシア(希)語起原です。 このような(2)「外来語」Fremdwortは発音,つづり,変化などの点で特徴が ありますから,ドイツ人は本来の語(1)とはすぐ区別できます。 しかし外来語のなかには die Kirche 教会 ←→ 英:church、英方言:kirk キルヒェ der Wein ぶどう酒 ←→ 英:wine ヴァイン のように十分ドイツ語らしい形になっていて,一般のドイツ人には他の言語に 由来することが必ずしも意識されない語もあります。 Kirche,英:churchは「主の家」を意味する希:kyriakonが, またWein,英:wineは羅:vinum「ぶどう酒」がそれぞれ起原です。 こういう外来語を(2)の場合と区別してとくに(3)「借用語」Lehnwort ということもあります。 これと逆に外来語のなかにはもとの形をそのまま保存して,水と油のように ドイツ語になじまないものもあります。英語からはいったものをいくつか挙げましよう。 das Baby 赤ん坊 der Computer コンピューター ベービ コンピューター der Slang スラング der Gangster ギャング スラング ゲングスター die Party パーティー der Bluff おどし、はったり パールティ ブルフ などがその例で,der,die,dasと性の区別をしなければならないのは ご苦労様なことです。なお英:weekend「週末」はdas Wochenende として ドイツ語に定着しました。 最後にドイツ語から英語にはいったものをいくつかならべておきます。 kinchin 子供 < das Kindchen 赤ん坊 seminar 演習 < das Seminar 演習 キントヒェン ゼミナール plunder 略奪する < pluendern 略奪する hiterland 背後地 < das hinterland 背後地 プリュンダーン ヒンターラント quartz 石英 < der Quarz 石英 strafe 猛攻,猛爆 < strafen罰する クヴァールツ シュトラーフェン waltz ワルツ < der Walzer ワルツ blitzkrieg 電撃戦 < der Blitzkrieg 電撃戦 ヴァルツァー ブリッツ・クリーク kindergarten 幼稚園 < der Kindergarten 幼稚園 キンダー・ガルテン (7月号)
早稲田大学名誉教授 有田 潤先生のご厚意で、新しく書き直した原稿が送られてきましたので、
それを画像ファイルとして掲載します。
ドイツ語と英語その1 ドイツ語と英語その2 ドイツ語と英語その3 ドイツ語と英語その4