ドイツ留学前に数年間、この三修社の雑誌を購読していました。
ドイツ語の能力はさっぱり上達しませんでしたが、ドイツ語の文法の
知識はこの雑誌のおかげで高いレベルを知ることができました。
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ドイツ語に関する12章 ―2一 発普に.注意したい人名・地名 小塩 節 ある人がドイツに旅行しまして,西ドイツから列車でBerlinに符こうと思って, とある駅に行ったそうです。切符売場でベルリン1枚と言ったのですが, 駅員が”Bitte?“[ビッテ]とききかえすんだそうです。 Bitte? というのは相手の言ってることがわからないときに,問い返す 決まり文句というか決まった表現です。英語のPardon ?にあたります。 しかたがないから大声で「ベルリン」と何度も叫んだそうです。 そのうちに、スイスの首都Bern(ベルン)行きの切符を出されて、 違う違うと言ってつきかえしたりしました。 何度か言っても通じないので、とうとう最後に紙に書いたら、 Ach, Berlin ?(ベルリーン) と聞き返されたとか。 日本ではベルリン,ベルリンと言っていますが、現地ドイツではベルリーン と言わないといけなかったのです。 さて、ことほどさように、アクセント、発音の長短など、つまり発音は大切です。 地名で気をつけたい、ごく2、3の例を申し上げましょう。 Augsburg 南ドイツ,バイエルン州にある,かなり大きな町です。フッガー家が 世界で最初の福祉施設をつくったので歴史上知られており,ディーゼル・エンジン の大工場があります。この地名,アウグスブルクと言う人が多いけれども,いけません。 [アオクスブルク]でして,まんなかの-g-も,そして語末のーgも, そのあとに母音がなく,k[ク]の発音になるのです。むろんアウグスブルグ, なんていうのはいけない。モーツァルトの生地Salzburgも[ザルツブルク]であって, ザルツブルグはいけません。ましていわんや,ザルツバーグは,独・米語の混合した, 世にも奇妙な発音で,だれもわかってくれません。 Hamburg も[ハンブルク]でして,ハンバーグではありませんぞ。 Muenchen 日本の新聞は,ミュンヘン,と記すくせがありますが,ヘンですねえ。 [ミュンヒェン]ですよね。 -chen はMaedchenr[少女」,Maerchen[メールヒェン] 「童話」などでご存知のように,[ヒェン]なのです。 Nuernberg ニュールンベルク,とのばさないで,短く[二ュルンベルク]。 Weimar ワイマールと言いならわしていますが,実は[ヴァイマル]ですから, カナ書きでは,せめてワイマルと言いたい。 Tuebingen これを,チュービンゲンと言う人の、なんと多いことか。冗談じゃあない, [テュービンゲン]ですよ。 Duesseldorf この1は舌を上あごにつけ,rはのどひこより舌先をひびかせないと いけません。間違えると,全然通じません。 人名をひとつ。人の名前を間違えるのは失礼です。 Tonio Kroeger[トーニオ クレーガー]かの有名な Thomas Mann[トーマス・マン] (1875-1955)の作品です。斎藤宗吉氏はこの作品が好きでペンネームも 北杜夫(もりお)<ト(ニ)オとしています。 しかしですね、北杜夫氏が言ったり、書いたりしている「トニオ・クレーガー」 っていうのはいけません。Tonio は南方イタリア系のAntonio[アントーニオ] を短縮した名で、「トー」を長く言うのです。 北さんばかりか、みなさん「トニオ」とおっしゃるけど、間違いなく 「トーニオ クレーガー」です。 (6月号)