ドイツ語 コーヒー・ブレイク
ドイツ語 コーヒー・ブレイク その53
Rosenzeit
ドイツの初夏
初夏の太陽が新緑にまばゆく輝くころになると、歩道をゆく
金髪の娘たちがいっそう若々しく、新鮮で美しくなります。
ちょうどそれと同じように、窓辺の鉢や庭の垣根のバラが
一斉に咲き出します。
ドイツの初夏はバラのときだ、と言っていいでしょう。
バラはもともとドイツにはない花でした。昔ペルシアや古代
バビロニアにあったものが、古代エジプト・古代ギリシアに
伝わったのですが、キリスト教化されたゲルマン民族は、
長いこと異教の花だとしてバラを近づけませんでした。
中世初めに、薬草として修道院で栽培がはじまり、十字軍の
帰還兵たちが、バラの株を持ち帰ったところから、ヨーロッパ
でもバラが好まれはじめました。
ちょうどマリア崇拝が高まった中世中期に、真紅のバラが
聖母なる処女マリアの象徴とされるようになります。それまで
のマリアの絵にはせいぜいユリの花しか添えてなかったのに、
急に豊艶なバラが聖画にとり入れられるのは、宮廷恋愛歌
Minnesang の花咲くのと同じ時期にあたります。
白バラは純潔も象徴しますが、死や悲しみをもあらわします。
ですから、ドイツ人は大変バラが好きですけれども、真紅の
情熱的なバラと白いのとは、ドイツ人にあげてはいけません。
とくに恋人でないご婦人に紅いバラを贈ってはいけません。
なぜかはおわかりでしょう。ことに1本だけというのは
絶対にいけませんよ。