ドイツ語 コーヒー・ブレイク
ドイツ語 コーヒー・ブレイク その25
Betrunken
酔っぱらって
ドイツの町マールブルクの聖エリザベート教会の中央正面に、黒ずんだ
ブロンズの十字架がかかっています。
このキリスト像は、疲れた農民のような平べったい顔をした、小さな十字架です。
作者バルラハはドイツ表現主義の彫刻を代表する人物ですが、いつも社会の
底辺で苦しみ耐え、悲しむものの姿を木やブロンズで刻んでいました。それが
ナチスには気に入られず、退廃芸術だとされ、すべての作品を美術館や教会など
から没収され廃棄処分にされました。
このマールブルクの教会のキリスト像も、ユダヤ人というより、ロシアの農民
のようだ、けしからんではないか、という人も教会の中にはいたそうです。
そしてナチの高級将校がベルリンから撤去命令を持ってやってきました。主任
牧師立ち会いのもとに、市の建設課長がとりはずしました。こもに包んで
ベルリンに運ぶはずでしたが、仕事が終わると牧師さんと課長は、ナチの
将校を招いて、したたかに飲みました。そして、ぐてんぐてんに酔っぱらって
(betrunken)、バルラハの十字架をラーン川にほうりこんでしまって、哄笑し、
これでいいやと引きあげてしまいました。
ナチの将校が帰った後、寒い夜中に、二人は川にもぐり十字架を川底のどろの
なかから取り出し、荒い清めると、藁に包んで市庁舎の屋根裏にかくしました。
ドイツがやぶれ、二人は市庁舎の屋根裏から藁づとにくるんだ十字架を運び出し、
もう一度、この教会の正面にかけたのです。
一般にドイツ人はアルコールに強くて、酔っぱらうことはまずありません。
ひょっとすると、酔っぱらった牧師さんたちが、川にザブンと十字架をほうり
こむのをそばで見ていて、笑って「これでいい」と言ったナチの将校も、実は
酔ったふりをしていたのではないでしょうか。
☆ ☆ ☆
ドイツ人は確かに酒に強い。
ドイツ人と一緒に調子に乗ってワインを飲むと翌朝が大変。
頭ががんがんして昼にやっと起きたことがある。
彼らは元気に仕事にでかけたのに。