Das verlorene Notizbuch ―― なくしたメモ帳 ―― これは今年のことでなく、2年前19フ6年9月のことです。 フランクフルト・アム・マインの空港で地下の国鉄駅に降りて 行く手前のTelefonzelle 電話ボックスに入り、知人に電話を かけました。飛行機から降りたところで両手にいっぱい荷物を持 っているので、内ポケットからメモ帳をとり出し、電話の上に置 きました。もう夜も遅く、さらに先へ行く終列車に間に合わなく なりそうで、慌てた電話を急いで切りました。 汽車に飛び乗って、さてポケットをさぐると、メモ帳がない! 毎日毎日の、そして9月半ば帰国してから年末までの予定が全部 書いてあるメモ帳。 それはまた友人知人の住所録でもあり、おしまいの折込みのところ には高額の切手とお札も折りたたんで入れてある。 しまった。あのメモ帳なしでは2日後の帰国後、生活がメチャクチャです。 がく然としました。 目的地に着くとホテルからすぐフランクフルトの空港に電話を 入れました。電話帳で番号調べ係Auskunftsbueroを見つけ、空港 の遺失物係Fundbueroの番号を聞いてかけたのです。届け出 はなかった由。そりゃそうでしょう、日本語の書きこんである小 さなメモ帳など、拾う人もないでしょう。 翌朝もう一度電話を入れましたが、見つかっていません。掃除 夫が捨ててしまったにちがいありません。その日のうちにボンに 回り、外務省関係の仕事を済ませ、方々にさようならの挨拶をし ました。 ドイツ国内の知人・友人たちへの電話や手紙用の住所は 郵便局に置いてある全国電話帳で簡単に調べがつきました。 ボン大学のある研究室で、メモ帳をなくした話をしました。助手の M.アーレンス嬢が、どういう色・形、何が入っているかと 聞くのでありのまま話しました。ボンから電話してみます、という。 どうせ出てきっこありません、いいんです、と私はもうあきらめて いました。 翌日ボンからハンブルク経由で帰国して3日日。 Express航空 速達便で、なんと無くなったあのメモ帳が東京の拙宅に送られて きたのです。なんというスピード!なかみは切手1枚無くなって いない。 ボンからアーレンス嬢がフランクフルトに電話を入れ per Nachnahme 「送料後払い」で送ってもらい、さらにボンから 日本へ送ってくれたのです。 Das ist Deutschland! これぞドイツ だ、と私は歓びの声をあげました。 Ich habe mein Notizbuch verloren. 「私は私のメモ帳を無くしました」。 Wie ist die Telefonnummer des Fuendbueros am Flughafen? 「空港の遺失物係の電話番号は何番でしょう」。 ☆ ☆ ☆ ドイツの博物館の売店でカメラをうっかり置いて買い物をしたときも、 デパートで商品を探すとき手に持っていた物を脇に置いて、 後から置き忘れたことに気がついたら、係員がすばやく見つけて保管しておくので、 紛失したと気がついたら、すぐ話をしたらいい。