Reisepaβ ―― パスポート ―― パスポートは、旅行中いつでも身につけておかなくてはいけません。 ゆめゆめどこかへ置き忘れたり、紛失したりしないこと。 万が一、イタリアなどで盗られたら、すぐ在外公館(大使館)に連絡 して再発行してもらいませんと、国境を越えることができなくなります。 またドイツでは、身分を証明できぬ人は、ドイツ人であろうと 外国人であろうと、いや応なしに12時間身分拘束をする法律が あります。 赤軍のテロ事件以来、とてもうるさくなりました。 日本では、私たちはふつう身分証明書など持って歩きませんが、 その日本でも外国人がパスポートなしで歩いていると、すぐつかまえて いい法律がチャンとあるのです。 在日ドイツ人の中には、東京の新宿、神戸の夕方の散歩にパスポートを 携行していなかったために、手きびしい取調べを受けた人が、 かなりいるそうです。 さて、話をドイツにもどして、あの便利なEuropaβ「ユーレイル・パス」 で∃−ロッパの鉄道全線一等旅行をするときにも、パスポートを 携行していなくてはいけません。 T大学のI先生。この夏、ハンブルクからちょっと先のリューベック までユーレイル・パスを使って出かけました。検札のときに パスポートも見せろと言われた。「宿に置いてきた」と申しますと 「すぐ降りろ」と言う。 途中駅におろされ,駅長室ですごい訊問にあったそうです。 身分を証明せよ、というのだそうです。 カバンの中に論文のゲラ刷りが入っている。それを取り出して、 トーマス・マンの小説『トーニオ・クレーガー』の主人公がした ように、「ほら、ここに私の名前が書いてある」と申したてたけれども 駄目なのです。 ほとほと弱り切ってしまいました。 ふと思いついて、こう申しました。「イタリアならばともかく、 (美術の国イタリアよ、ごめんなさい)、ドイツはすばらしい国だ。 こんなに美しく、秩序正しく、法治国家であるドイツではそんな ものは要らぬと思ったのです。 何とみごとな,美しい国でありましよう、あなた方の国ドイツは!」 そんなふうに賞賛のことばを、思いつく限り並べたてると、駅長と 公安官の顔が急に和んできて、ニッコニコしてくるではありませんか。 そしてついに、日独万才!とかなんとか言って釈放してくれた、 といいます。 相手をほめるに限りますね。 Ihren Reisepaβ, bitte ! 「パスポートを拝見します」。 Deutschland ist ein schoenes Land. 「ドイツは美しい国です」。 Hier herrscht Ordnung. 「ここには秩序があります」。 ☆ ☆ ☆ ここに書いてあるユーレイル・パスを使うときでも、 トラベラーズチェックを使うときでも、郵便局で自分宛の郵便物を受け取るときでも みんなパスポートが必要。 日本の公務員系の宿泊所では本人であることを確認するため、 健康保険証の提示を求められます。 それを持って行かなかった私は、ちょうど持っていたパスポートとか 運転免許証とか、職場のIDカードなどを見せたのですが、 それらを総合的に判断してはくれませんでした。 それ以後、健康保険証のコピーを持参するようにしています。