Sparsamkeit ―― 倹 約 ―― どんなに物資が豊富になっても、倹約、節約の美徳を失ってはなりますまい。 ドイツ人はその点、いいお手本です。節約ということは geizig「けち」とは ちがいます。 いや、良い意味の「けち」なのかもしれません。 物価が安く、実質収入が日本の数倍あるドイツ人でも、水、電気など ほんとうに節約して使います。部屋から出るときには必ずいらない電灯は 消します。 Neonlampe「蛍光灯」を好まぬのは倹約よりもgemuetlich でない からかもしれません。廊下や階段の電気も、1分なり2分なり、一定時間が たつと自動的に消える設備になっています。途中で消えたら?そしたら、 次の階のスウィッチをまた押せばいい、というわけです。 リンゴやイチゴなど、日本では果物もベラボウに高いのですが これは消費者にも責任があります。カツコウのいい、見てくれのいいものを、 いくら高くても買う。キュウリやトマトでもそうです。 皮をむいてお皿にのせれば、キュウリなど真っすぐでも曲っていても同じなのに、 1本15円の曲ったキュウリは売れない。1本50円の真っ直ぐなのしか売れない ――、拙宅の(日本の)近くの八百屋さんがこぼしていましたっけ。 ドイツのリンゴは見てくれは悪いです。でもおいしさは、けっして悪くなく、 安い。一事が万事こうです。 そう、リンゴといえば、かつて文相をつとめた哲学者安倍能成先生がドイツに 留学していた頃、リンゴの皮をむき、芯を残したら、下宿のおばさんに叱られて しまった。皮はむろん食べなくちゃいけない。芯もしゃぶっておしまい。 種子はストーブの上で焼いて食べるのよ、と言われたというのです。 この根性ですね。戦争を何度も経験した生活の姿勢なのでしょう。 Es ist schade um das Essen. 「(残した)食事が,もったいない」。 Spare in der Zeit, so hast du in der Not! 「備えあれば憂いなし」(諺)。 ☆ ☆ ☆ ドイツ人がりんごの芯も種も食べるのを見た。 この本を読んでからドイツに行ったので、驚かなかったけど。