Sauberkeit ―― 清 潔 ―― ドイツ人の清潔好きは定評があります。 日本人も清潔で知られる民族です。ただ、清潔の主眼点が日独間では 多少ちがっているようです。 たとえば窓ガラス。私たちは少々の汚れは我慢しておれます。 ドイツ人は窓ガラスの汚れにはじっとしておれないらしい。 窓に一点でも汚れがあると、まるでそこから悪魔・サタンの目が覗いて いるとでもいうかのように、全力で戦いを挑みます。 ふつう6時に起きる人なら、1時間早起きして、窓という窓を キュツキュツと磨きあげてしまう。かわいい娘さんだな、と思って 見ているようなそんな少女が、たいへんな力を発揮して、 それこそ朝食前にFenster putzen 「窓ガラスふき」をやり終えて しまう。その戦いの姿勢はすさまじいものがあります。 どうやら私たち日本人は、回りがどんなにきたなくよごれていようと、 それは眼中に入れず、床の間の一輪の花の美しさに全身全霊ともどもに すがすがしい思いになることができるという、世界に稀な美点特質を 備えているようです。 もっともそれが高じると、自分の家の中さえきれいならよくて、 外はどうでもよい、「福は内、鬼は外」というわけで、ゴミを路上に捨てたり、 タバコの吸がらどころか、タンやツバを平気で路上や駅のホームに吐いたり する。 ドイツ人は不幸にもそれができない人種です。一点に精神を集中して、 その一点の美しさにひたることができない。生活環境全体が秩序だって いないといけない。つまり、ことばを変えて言えばドイツ人にとっての美とは、 全体の調和、一貫した秩序にあると申せましょう。 ついでながら、洗面台や Badewanne「風呂桶」は、使用後きれいに洗って、 乾いた布で拭いておくこと。下宿でもホテルでもそうなさってください。 近頃の若い日本女性は髪を洗ったあと、平気で風呂桶や洗面台に髪の毛を 落としておくようです。黒髪は頭にあるときは美しいけれど、落ちて しまったものはみにくいものです。日本女性の美的感覚地に落ちたりと、 よくドイツのおばさまたちから聞かされます。どうか、よろしく。 もうひとつ。旅先でも靴下は小まめに取りかえること。むれた 靴下のにおいはいただけません。そしてもうひとつ(小声で)お願い。 チュッとするチャンスがありそうなときはタマネギなど食べないで くださいね。百年の恋もさめてしまいます。 Er ist sauber gekleidet. 「彼は身なりがきちんとしている」。 Die Japaner sind auch wegen ihrer Sauberkeit bekannt. 「日本人もその清潔さが有名です」。 ☆ ☆ ☆ ドイツ人はきれい好きだが、そのため 調理器具も油まみれになるのを嫌うため、美味しい料理を作るより 調理器具の美観の方に気持ちがいくのではないかと思う。