Zollkontrolle ―― 税関で ―― ドイツヘの入国手続きは、いたって簡単です。 パスポートReisepaβ を見せるだけで、入国管理官はたいてい 黙って通してくれます。 続いて税関Zollkontrolle があります。 日本人だと、たいていトランクも開けず、「申告するものが ありますか」と聞くだけですから、Nichts.「何もありません」 と言えば、そのまま通してくれます。 ただし、2・3人のグループで、人相がよろしくないと、かの有名な 赤軍であろうということで、トランクのすみまで調べられることも あります。 ともあれ、ペラペラいらぬことまでしやべらないでいるほうが、 税関では得策です。 入国事務以外に、郵便物についても税関に呼び出されることが あります。どの町の郵便局にも税関があって、小包の内容に不審 な点があると呼び出しのはがきがくるのです。 もう十数年も前のことですが、ドイツに長目に滞在していた私 のもとへ、故国の母が粉末わさびとお茶を送ってくれました。 小包の表記に英語でGift「プレゼント」と書いてよこしたのです が、この単語は、昔のドイツ語では英語と同じ「贈物」の意味も ありましたが、現在では「毒(物)」ということです。 なかみはしかも青っぽい粉ときているんですから、税関の役人が 心配したのもむりからぬ話です。 これは刺身を食べるときの薬味「わさび」Meerrettichという ものであり、こちらはTeezeremonie用の粉のTee「お茶」なのだ、 と説明するのに苦労しました。 コーヒーやお茶には税金のかかるドイツで、2マルクだったか 3マルクの関税を払わされて、やっと渡してくれました。 それで母にはもう二度とGiftと書かず、Magenmedizin「胃薬」と 書いてくれと頼んだものでした。 Haben Sie etwas zu deklarieren? 「関税申告するものがありますか」。 Nein,ich habe nichts anzumelden, 「いえ,申告すべ`きものは何もありまん」。 ☆ ☆ ☆ 英語のGift はドイツ語では毒の意味がある。 日本からの郵便物も郵便局で検査するから、思いがけず 呼び出される場合もある。 税関では間違っても語学の練習をしないほうがよい。 流ちょうに話すほど、係官は疑ってくる。 ある先生がイスラエル空港で少しばかりイスラエルの言葉を話したから 大変。日本赤軍の仲間と思われたのか別室で尋問されたとか。