Freund ―― 友 人 ―― 最近日本の学生同士で「友人、友だち」というのと「お友だち」とを 峻別しているのを聞いてなるほどと思います。ドイツ人が ein Freund、 eine Freundin というのは、日本でいうとまさにこの後者の「お友だち」 あるいはそれ以上のことを指します。 ドイツの若者たちは、17・8歳になると異性の「お友だち」がいない ということが、まずありません。必ず、英語でいうステディーな お友だちがいます。大学生ともなれば、ほとんど例外なくベッドをともに する「お友だち」がいます。 下宿、アパートなどの住宅事情が日本では考えられぬぐらいいいので、 約6万円程の奨学金を持ち寄って同居生活をする。3年〜5年は続きます。 いやになれば別れて、次のお友だちと一緒になるのはいとも簡単。 それがあらゆる意味で便利だし、結婚すると責任が重く、離婚はとても 難しいので、最終的に結婚を決断する決定的な人と出会うまでは 「お友だち」と zusammenleben「同居する」わけです。 避妊は?かの有名な「ピル」Pille[ピレ]を常用するのです。名目上 医者の処方箋がいりますが、医者は ohne weiteres 問題なく気軽に処方箋を 書いてくれます。 私の知っている、クラスでいつも一番の音楽学生ヨハンナは、 ずっとピルを常用していますが、いつのまにかソプラノの声がアルトに さがってきたそうです。担任の教授に「ピルを飲んでいるのだろうが、 声楽家はピルを止めろ」と叱られたと言っています。 完全に副作用がないとは言い切れないようですね。 私は若い女の子に会うと、「同居」は男が得するばかりだ、女は損するんだ からやめろ、と言ってやるのですが、彼らは笑って、やめようとはしません。 スウェーデンやアメリカやドイツのこのような状況を、私は少しも うらやましいと思わないどころか、Untergang des Abendlandes「西欧の没落」 だと言ってやります。 話が妙な方向に向かってしまいましたが、さてそれでは「お友だち」でない 普通の友人もmeine Freunde なのですけれども、社会生活の中や会話の中で、 mein Freund、 meine Freundin と言えば必ず上記のような「同居仲間」を指すので、 そうでない友人はmein Bekannter、 meine Bekannte と呼ぶほうが誤解をさける のによいでしょう。 たとえば第3者に男性が女性の友人を紹介するときには Darf ich lhnen meine Bekannte vorstellen? 「知人(友人)をご紹介いたします」、 と言って、Fraeulein‥・ と紹介します。 Haben Sie eine Freundin? 「お友だち(が―ルフレンド)がおありですか」。 Ja,ich habe eine Freundin. 「ええ,いますよ」。 Meine Schwester hat auch einen festen Freund. 「妹も,ステディーなお友だちがいます」。 ☆ ☆ ☆ 他の本で うっかり女の友だちを紹介するのに meine Freundin と言ったために、その女性に後から叱られた話を読んだことがある。 meine Bekannte と言えばよかったのに。