Blumen ―― お 花 ―― ドイツ人をたずねるとき、なにを手土産にしたらよいか。答え は簡単です。その家の主婦にお花を持っていらっしゃい。お菓子 を持っていくのは、家族同然に親しい間柄に限ります。お花が よろしい。 真赤な花だけは避けて。赤い花は恋人か、夫から妻への 花ですから、悪く誤解されます。誤解してほしければ別ですが。 花は奇数がよろしい。学生の身分で女子学生を訪ねていくとき など、カーネーションのピンク(赤ではないが、白でもない、と いうところがミソです)を3輪でもよい。5本ならたいへん喜こぶ でしよう。9本以上になればもう偶数・奇数は問題でなくなりま す。 赤いバラをたった1輪―――、これは愛の告白です。 花の値段のたいへん高いドイツです。貧乏学生の身で無理して 買うことはありません。春には郊外の野の花を摘んで持って行っても よいのです。そして、かならず女性にあげるものなのです。 まず握手し、相手の日を見てから、包み紙をとった花束を差し あげます。 フランスではどこのお店で買ったかが大切なので包み紙をつけたまま 差し出しますが、ドイツでは包み紙をとって差しあげます。 その紙をまるめて相手の家の玄関にポイというわけには参りません。 片手で持っていれば、「その紙はこちらへ」と相手が受けとって くれます。たいていはご主人が受けとってくれます。 男性への挨拶はそのあとなのです。主婦のいない家庭だと、 花は遠慮して持って行きません。 また、子どものいる家なら、花とは別に子ども用にチョコレートを 2枚ほどあげると喜こばれます。それ以上のお土産は、よっぽど 親しくなってからのことです。 こちらが主人側でお花をいただいたら、さっそく花ビンに活けて お客から見えるところに置く。 Schoene Blumen! 「きれいなお花 ですね」と一言いえば、それで十分です。 話題が花からそれますが、私ども日本の家庭では外国人を招待 するのは苦手ですね。 Unsere Wohnung ist so eng! 日本の住宅は 貧しく狭い。そのうえ、人をもてなすのに私たちは無理にご馳走を しなくてはならぬと考え、全力投球をして疲れてしまう。 だから日本の男性はお客を外でもてなして済ませてしまう。 こうして奥さん孝行をしているのだ、という説があります。 ほんとうにそうかなあ。 Das ist fuer lhre Kinder. 「これはお子さんたちへ」。 Oh,vielen herzlichen Dank! 「おお,ほんとうにありがとうございます」。 ☆ ☆ ☆ ドイツでは花は高価なものだと思う。 しかし、どの家の窓辺にも美しい花が置かれてあった。