Einladung ―― 招 待 ―― 家庭への招待がドイツではいちばん重要な人づきあいです。学生同志 でも親しくなると、たがいの両親の家なり、下宿なりへちゃんと 招待します。 「家庭に招かれるまでは、けっして気を許すな」とドイツ人は よく言います。 「ある人をほんとうに知るためには、その人の家庭に行かなければ ならぬ」ということをゲーテも言っています。 そして招待には、いちおうはっきりした形式があります。 午後の1時なら昼食。これはドイツ人の家庭の正餐(せいさん) ですから、家族の一員として親しく迎えられることになる。 4時から5時ですと、お茶(カフェー)によばれたことになるので、 6時から7時のあいだぐらいに失礼して帰ります。 7時から7時半の招待ですと夕食。8時以降で、夕食にお招きすると 言われない限りは、ワインです。 そして夜の招待のときはだいたい夜12時ごろまでゆかいに話し合う のが礼儀で、それより早く帰るのは失礼に当ります。やむをえぬ用が あって早く失礼しなくてはならぬときは、ちゃんとわけを言った方が よろしい。 さて、よその家に入ったらすすめられぬ限り自分から座っては いけません。主人側がスッと手ですすめた席に、まず女性から座ります。 すでに相客がある場合は、先客のそばに行き、女性から女性へ の順で挨拶をはじめ、男性同志の挨拶がいちばんおしまいです。 この際、座っている女性は、あとから来た人がどんなに偉い人でも 立つ必要はありません。これが日本人にはいちばん苦手ですね。 このレディーファーストの習慣、つまりドイツ語でいうDamen zuerst[ダーメン・ツエーアスト]は、室に入るときも出るときも、 乗り物のときも、あらゆる場合にあてはまりますが、レストランや カフェーに入るときだけは、男性が先です。それはレストランの なかに座っている人たちが、ドアを開けて入ってくる人を いっせいに見るからで、そういった視線に女性をさらさないため です。 食事であれカフェーであれ、招待された時にはつとめてお話を 楽しむこと。楽しいお話こそ礼儀なのです。会話は下手でいいの です。英語を混ぜても何でもよろしい。そうやって会話もうまく なります。とくに異性に話しかける自己訓練をしておきましょう。 異性との会話には、やはりキラメクものがありますからね。 Damen zuerst, bitte! 「レディー、どうぞお先に」。 Danke!―Bitte! 「ありがとう」。一一‐‐「どうぞ(どういたしまして)」。 ☆ ☆ ☆ ドイツにいた時いつだったか、ドイツ人を夜に招待したら 夜中までしゃべり続けて会話も疲れてしまった。 しかし、彼らとしては最大のサービスのつもりだったのであろう。