Besuch ―― 訪 問 ―― 友人や先輩、知人の家をたずねるときに、ドイツでは特別急用 でない限りは、電話や手紙で約束をしてから訪問します。 電話がなくて、しかもわりに近くに住んでいる人ならば、午前11時から 12時までとか、午後4時以降の訪問時間にちよっと寄ってアポイント メントをとっておく。 どんなに親しい友人・恋人といえども、招かれざる限りは昼から 3時のあいだは訪問してはならぬことになっています。 いつでもどんな時でも人の家を訪ねてかまわぬ日本とは、 大変な違いです。 約束した時間にはけっして遅れないのが、これまたドイツ人の 礼儀です。交通事故にひっかかったりした場合は別ですが、それ 以外は約束に15分以上は遅れないように、特に食事の招待のときは 時間をまもります。 これはひとの時間を貴重なものとして、大切にするからなのです。 しかしまた、逆に早く行き過ぎるのも失礼です。相手の準備 ができていないところに行ってしまうからです。早く着き過ぎたら、 そのへんを少し散歩してでも定刻を待つことです。 「日本のお客さんはよく定刻前にいらっしゃるので困る」と、 ドイツ人によく言われます。 人のうちに行ったら、外套は玄関に入ってから脱ぎます。ただし、 約束なしでほんの短時間寄るだけの場合は、マントをとらないで 室内まで入るのが、これまた礼儀なのです。「ごく短い時間 だけお邪魔して、ご面倒かけませんから」、という気持をそれで 相手にはっきり告げるのです。 午後の訪問時間(これがドイツでははっきりしているのですね) ですと、来客にコーヒーを出す習慣は、日本でのお茶に似ています。 しかしマントを着たままのお客さんにはコーヒーを出さなく てよい。人に来られた方も、安心してよいのです。 ドイツの道路はたいへんきれいですが、しかし長い冬のあいだ は雪がとけきれず、雪の上にまいた塩や灰が靴のうらにこびりついて いることがよくあります。人の家に入るときは、いや自分の 住まいでも、まず靴のうらをよくきれいにふいてから入るのも社会礼儀 の一節です。 Darf ich Ihnen eine Tasse Kaffee anbieten? 「コーヒー1杯いかがですか」。 Ja,gern. 「ええ,喜んでいただきます」。 ☆ ☆ ☆ 訪問時間をあらかじめ約束するというのは大変だけど、慣れたら 客を迎えるときは便利だ。 いつ何時訪れる客に対応するのはサービス業ならともかく、我々でも 仕事が中断され、わずらわしいと思うことがある。 ドイツの大学教授は1週間に数時間くらい学生の訪問のための時間をとってある。 ドアにその時間が明示されていて、それ以外は受け付けてくれないようだ。