博士課程の報告資料

土田貴之氏の単位報告

平成8年12月24日
岩手大学 工学研究科
生産開発工学専攻
土 田  貴 之

東京湾横断道路川崎人工島の現場見学について

 東京湾横断道路は川崎市と木更津市を約10kmの海底トンネル・人工島・約5kmの橋
梁で結ぶ全長15.1kmの海洋幹線道路である。トンネル部分に使用されるセグメントの外
径は13.9mであり、片側2車線のトンネルが2本掘削されている。この東京湾横断道路
よる物流の円滑化、また、これに伴う周辺地域の波及効果は21世紀の日本にとっては計
り知れないものになるであろう。まさに巨大プロジェクトと呼ぶにふさわしいものである。
プロジェクト推進にあたっては、測量、設計から施工まで全てに渡って高度な技術が導入
されているのはもちろんのことである。

 今回の研修は川崎側から船で渡り川崎人工島を見学するものであった。船で東京湾を進
むとそこに突如巨大なクレーン船とともにコンクリートの島が現れるといった感じだっ
た。島というより、むしろ大きな壁といった方が適当かもしれない。その壁を昇ると島の
全景が見渡せる。島は円形で多くの作業員が働いていた。島を取り囲むように大型クレー
ン船、コンクリートプラント船、資材船などが停留していた。川崎人工島は東京湾に建設
された人工島ではあるが、あの大きさを観ると何となく海の中に居ても安心感があった。

 プロジェクトの要となる川崎人工島のワークステーションは工事の円滑な進展を図るた
め、高度なコンピュータ発信基地としての機能を発揮している。たとえば、シールド掘進
管理システム、セグメント輸送管理システム、画像伝達システム、環境保全システム、人
員管理システムなどの重要なシステム管理はセグメントメーカー、各工区、資材メーカー、
発送センターなどともコンピューターでオン・ライン化され、合理的で安全性を重視した
施工を目指したものであった。

 川崎人工島では水面から約60mのトンネルまでエレベータで降りて川崎側のトンネル
を見学した。トンネルでのシールド掘進は見学できなかったが、トンネルの中にいると、
ここが海底であることに改めて感動してしまう。全長9.5kmのトンネル海底トンネル工は
まさに土圧と水圧との闘いであり、そのために開発された安全性・耐久性に優れたゼグメ
ントが大いに威力を発揮していた。また、世界最大級のシールド工法の採用、一次覆工や
二次覆工での工事の自動化、掘進管理、セグメントの組立、坑内運搬など、最先端の技術
とノウハウが随所に生かされていたということも実感できた。シールド掘進と一次覆工の
自動化は模型で見学できたのだが本当にこんなことができたのかと驚いてしまう。土木の
世界では自動化ということが他の分野に比べて遅れているという感じが今まで強かったが
海底トンネルの建設では自動化が充分に威力を発揮していたようであった。

 21世紀というと、まさに新しい時代という気になってしまう。東京湾横断道路などの
巨大プロジェクトを観ると21世紀には不可能ということがなくなってしまうのではない
かという気までもしてくる。そのような時代はもう間近であり、そのような時代に対応で
きる高度な技術と柔軟な思考を常に心がけて習得していきたいと思う。

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