3. CADシステムの導入と構築
(1)目的に合ったCADソフトウェアの選択
2次元CAD,3次元CADソフトウェアのいずれを導入するにしても,どのような図面を作りたいのか,またその図面をどのように,活用していきたいのか,またどのような支援ソフトウェアがあれば有利かなど,それら目的により,CADソフトを選択する必要がある.下記にCADを大きく分類したので参考にしていただきたい.
(a)汎用CAD(汎用2次元CAD,汎用3次元CAD)系
(b)電気・電子用(電気回路設計など)系
(c)機械用系(機械設計,金型設計,機械部品解析など)
(d)プレゼンテーション・コンピュータグラフィック(以下CGと表する)系
(e)建設用(計画,意匠,設備,施工,構造,プレゼンテーション・CG,測量など)系
また(a)〜(e)を支援するソフトウェアとして図面管理,ファイル管理,機械・電気・土木・建築・設備などの部品集,法令などのデータ集,ラスター編集(スキャナーなどで取り込んだ図面の画像ファイルを修正したりできる)や各種ビューア(種々のCADで出来上がった図面でも,それらCADソフトウェアをインストールしなくても図面を表示・印刷できる),データ変換(あるCADでフォーマットされた図面を別なCADフォーマットに変えて,そのCADで編集できるようにする)などが揃っている.必要に応じて導入されたい.
(2)CADハードウェア
選択されたCADソフトウェアの動作環境に適したOSやハードウェア構成,周辺機器を揃えなければならない.ここでは,スタンドアロンで稼動するパソコンの2次元CADと3次元CADのハードウェア構成について述べていきたい.
(a) 2次元CAD
OS・・・
CADソフトウェアの動作環境に合ったOSをWindows 95/ 98, WindowsNT,
Windows2000,Mac OS,UNIX(Linux,BSD)などから選択する.
メモリ・・・
32MB以上,できれば64〜128MB位あれば良い.SIMMやSDRAMなどがあり適応するものを増設すること.
ハードディスク・・・
OSにもよるが,できれば3GB以上が望ましい.ATAPIとSCSI接続タイプがあるので注意されたい.
VGAカード(ビデオカード)・・・
VRAMが8MB以上が望ましい.AGPとPCI接続タイプがあるので注意されたい.OSとして95/ 98では,DirectX対応のカード,NTや2000を選択しているのであればOpenGL対応のカードを選択すること.MacではQuickDraw3D対応のカードを選ぶこと.またドライバーやそのアップデートのために,メーカのサポートがしっかりできているものが良い.
CPU・・・あまり高速でなくても良いが,WindowsパソコンではPentiumU266Mhz以上が望ましい.MacではPowerPC603e以上が欲しい.CPUは,ODP(Over Drive Processor・・・CPUアクセラレータとも呼ばれる)で高速化が図れる.ただしそれを行うとメーカーの保証外となるので注意されたい.
ディスプレイ・・・解像度
1600×1200dotで 17インチ以上でマルチスキャン型,ダイアトロンかトリニトロンが良い.PCノートならXGA対応でTFT14.1インチ以上の液晶パネルが望ましい.
プリンタ・・・モノクロ印刷なら,質の面からレーザープリンタ,カラー印刷ならカラーレーザープリンタかインクジェット方式で,できればA3対応が望ましい.600dpi以上で,できれば1200dpiあれば良い.
プロッタ・・・印刷図面の大きさとカラーかモノクロかによっても違う.インクジェット式が安価で良いようである.
(b) 3次元CAD
OS・・・
CADソフトウェアの動作環境に合ったOSをWindows 95/ 98, WindowsNT,
Windows2000,Mac OS,UNIX(SGI,HP,Sun,IBM,DEC,Linux,BSD)などから選択する.
メモリ・・・
128MB以上,できれば256MB位は欲しい.
ハードディスク・・・
OSにもよるが,できれば4GB以上が望ましい.
VGAカード(ビデオカード)・・・
VRAM+DRAMが16MBできれば32MB以上が望ましい. NTや2000では,使用するCADソフトウェアに対応したOpenGL,Direct3D,Directdraw,Heidiなどに対応のカードを選択すること.あとは2Dと同様.
CPU・・・出来る限り高速が良い.WindowsパソコンではPentiumU450Mhz以上が望ましい.MacではPowerPC
G3 MT 266Mhz以上が欲しい.あとは2Dと同様.
ディスプレイ・・・2Dと同様.
プリンタ・・・2Dと同様.
プロッタ・・・2Dと同様.
あとは,必要に応じてMO,DVD-RAM,CD-Rなどバックアップ装置やスキャナー,デジタルカメラなど必要なものを選択していけばよい.
4. CADデータとその標準化の動き
それぞれのCADにより作成された図面ファイルには,それぞれCAD特有の拡張子が付いている.主な拡張子をあげてみると
.dwg
AutoCAD
.mp
DRA-CAD
.mcd
MiniCAD
.dc
DynaCAD
.jwc JW_CAD
などがある.これらはそれぞれのCAD固有のデータであり他のCADでの互換性は全くない.そこで互換性を保つために各種CADでは,中間データファイルの入出力機能を持たせたものが多い.その主な中間データファイルの拡張子をあげてみると
.dxf AutoDesk社規格
.bmi Micro Cadam社規格
.iges ANSI規格
.step ISO規格
などがあるが,残念ながらdxfファイルに完全互換性がなく,データ落ちしてしまうのが現状である.データ規格の標準化がなされないまま,企業ごとに,汎用CADを導入している所あり,専用CADあり,そして自社開発したCADなど種々のCADソフトウェアが入り乱れて導入されてきた.様々な業種が入り組んで1つのプロジェクトを完成させる業種や,たとえ同一業種でも会社と取引先の会社間では,使用するCADの違いやデータ互換性が無い理由で,CADデータの受け渡しがされず,
CADで描かれた「紙の図面」を他に受け渡し,受け取った方はその「紙の図面」からまたCADにおこすというきわめて非効率な状態となっていた.
近年,データ規格の標準化を巡って,ISOが中心となって1984年からSTEP(Standard for the Exchange of Product Model
Data)としてISO 10303で標準化を目指している.また同様に1995年から,建設業界を中心に世界的にIAI(Industry Alliance for
Interoperability)が結成され「IFC」(Industry Foundation Classes)が提案され,標準化を目指している.
5. コンカレント・エンジニアリングとCADのCAM,CAEとの統合化
近年,製造業などの企業では,コンカレント・エンジニアリング(Concurrent Engineering・・・設計から生産,販売まですべての部門でのプロセスを一体化し,共同で作業を行っていく体制)の考え方が普及し,それにより特に3次元CADが注目を浴びてきている.
3次元CADにより,開発製品の仮想モデリングを行うことにより,設計から生産,販売まですべての部門プロジェクトのスタッフ全員に,ビジュアルに,且つ迅速にその製品に対しての共通認識を作り得ることを可能にした.
またCAE(Computer Aided Engineering・・・CADにより定義された部品や構造物のモデルをプリプロセッサでメッシュ分割し,応力などを有限要素法などを使って解析し,その結果をポストプロセッサーで設計者にわかりやすいようにビジュアル化する)と組み合わせることにより,シミュレーションツールとして,仮想試作や仮想試験を何回でも繰り返し行えるようになった.
またCAM(Computer Aided Manufacturing・・・CADで作られた形状モデルに対して,加工法や加工手順などを決定しNC工作機械の制御データの生成および稼動,広義では工作ロボット制御,自動試験装置の制御なども含む)と組み合わせることにより、CADのデータを用いて一貫した製造工程まで制御できることを可能にしたのである.
CAD/CAE/CAM
の統合したシステムのデータ管理は,製品の企画書からCADデータ,CAEデータ,CAMデータ,部品表などすべての製品の技術情報管理を行うというPDMシステム(Product
Data Management・・・製品に関するすべての情報を体系的に管理するシステム)により,可能となった.これによりコンカレント・エンジニアリングのデータ面での設計支援システムの構築といっていいであろう.