岩手県立大学盛岡短期大学部前学部長の高橋富士雄先生のお祝いの文章

  科学談話会60周年を祝して 岩手県立大学盛岡短期大学部前学部長  高橋富士雄  この度、科学談話会が60周年を迎えられましたことをお慶びを申し上げますと共に、長 年にわたりこの会の運営に携わってこられた幹事の皆様、並びに会員の皆様、そして多大 のご支援を頂いた盛岡市立図書館に対しまして心から感謝と敬意を表します。  これまで取り上げられた演題を通覧するだけでも、自然科学、社会科学、人文科学等、 関連する分野は多岐にわたり、正に科学談話会の名に相応しい内容であったと感じます。 確かにその中で占める自然科学系の話題の多いことは、地域の皆さんが環境、生命をはじ めその時々の多岐にわたる自然現象・事象に殊更敏感に興味、関心、疑問を感じ、その科 学的本質を捉えようとする気持ちの現れではないかと思いますし、それこそが「科学する 心」の表れではないでしょうか。同時に、それらに対し適切且つ平易に解説してくれる岩 手大学、岩手医科大学、岩手県立大学等の講師陣が揃っていることも大きな要因の一つで あると考えます。  かつて私が岩手県立大学の前身である岩手県立盛岡短期大学に努めていた頃、或る勉強 会で良く来校されていた科学談話会現幹事の岩手大学宮本裕先生から声を掛けられ初めて 科学談話会の講師依頼を受けたのが昭和63年、その縁で幹事の依頼を受けていたものの、 調度、県立大学構想が動き出したこともありお断りしておりました。その後、平成10年岩 手県立大学開学を機に幹事をお引き受けしました。毎月開催の例会は幹事の持ち回りによ る1年交替で世話役を努めることになっておりますが、それを経験して初めて幹事の談話 会運営における並々ならぬご苦労を知ると同時に、この談話会が研究者間の情報交換のみ ならず、地域の皆さんの知的欲求を満たす重要な場であることを実感した次第です。  私にとって幸いだったことは、岩手県立大学が新たに開学したことです。大学設置構想 検討の際、既存大学との共存共栄を推進するため、類似学部の設置を避けるよう充分配慮 されながら進められてきました。このことが結果として、既存分野以外の多くの優れた教 育研究者がこの地、岩手に招聘されることになったと言えるのではないでしょうか。科学 談話会の世話役にとって「講師依頼」が最も重要な業務となりますが、私の場合、岩手県 立大学に迎えられた教授陣を会員の皆さんに紹介するための絶好の機会ともなり、その意 味では殊更に楽しく努めさせて頂くことができ、良き思い出となっております。  今日では何処の大学においても地域貢献の一環として当然のことながら公開講座が開催 されており、大学以外でも多種多様な公開講座が開催されるようになってきております。 談話会のテーマの設定、講師依頼等は全て幹事のボランティアにより運営され、会員減少 に伴う講師謝礼のことも含め悩みは尽きないものと思います。  60年間、会員の皆さんの科学への飽くなき知的欲求とそれに触発されつつ真摯にご講演 された演者(科学者)によって継続してきた科学談話会は、今日ある多くの公開講座の先 駆的なモデルとしての役割を果たしてきたと言っても過言ではなく、科学談話会の更なる 発展に期待し、お祝いの言葉と致します。

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