岩手医科大学長小野 繁先生のお祝いの文章

「科学談話会50周年を祝して」                             岩手医科大学長 小野 繁  この度、科学談話会が発足して50年を迎えられるとのこと、誠に喜ばしい限りであり、 心からお祝いを申し上げます。また、半世紀の間連綿と途切れることなく続けてこられた この会、そしてお世話いただいた歴代の幹事の皆様に感謝と敬意を表する次第であります。  この会が発足した昭和23年当時は敗戦の後遺症がまだ収まっておらず、ましてや相次 ぐ台風の襲来で岩手県土は荒廃しきっておりました。このような時期に「科学を探求する 勉強会」を作った方々がいたということは大変な驚異であります。  岩手県は多くの偉人を輩出する風土にあります。例えば国際的に有名な新渡戸稲造は日 本で最初の農学博士であり、政治家後藤新平は医師でもあります。田中舘愛橘先生は日本 を代表する物理学者であります。三田定則先生は日本における血清学、法医学の泰斗であ ります。まだまだ多数おりますが、このような偉大な先人を輩出した岩手県は、自然が豊 富であり、山があり川があり当然治山治水の問題等があり、自然に考えるための風土が培 われていたのではないかと思うのであります。  戦後の復興はめざましく、遅れていた産業は世界に追いつき、そして追い抜いた日本は、 やがて経済高度成長期(バブル)を迎えました。戦後日本の技術は発展し、技術革新は生 活に便利さをもたらしました。特に情報分野の発達は目を見張るものがあります。  しかし、真理探求に対する熱意が低下しはじめています。その弊害かどうか中・高生が 難しい理科系を敬遠し始めました。我々教える側にも責任があると思います。21世紀を 担う若者に、科学をわかりやすく親しみやすく説明し、生活と密着した科学から取り組ん で行かなければならないと考えます。 「科学談話会」発足当時のように身近な勉強会が 発端となり、それが各分野に波及して科学全般の勉強会となったように、進展して行った らよいのではないでしょうか。岩手の地からアカデミズムを大いに発揮して、科学振興を 図っていかなければならないと考えている次第であります。  “21世紀は人である”教育者としては、科学の細分化、専門性が進む中で、学術研究 の著しい進展や社会・経済の変化に対応できる幅の広い視野と総合的な判断力を備えたバ ランスのとれた人材を育成しなければならないと考えます。その面であらゆる話題提供の 場である「科学談話会」は、一助となっていくものと確信いたし、重ねて半世紀の活躍に 敬意を表するものであります。

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