岩手大学長岩渕明先生のお祝いの文章

祝辞        科学談話会の70年の歩みに大いなる敬意を                       岩手大学長 岩渕明  科学談話会が昭和23年にスタートし、70年経つことに驚くとともに関係者に敬意を表します。 開始当時はまだ戦後の混乱期であり、自身の生活を確保するのに精一杯の時ですから、立上げ に関わった諸先輩の科学に対する思い入れを改めて想像しております。湯川秀樹が昭和24年に ノーベル賞を受賞し、国民に大きな希望を与えたことを鑑みると、まさに同時期に、岩手に おいても科学の力で夢を与えようと始められたということではないかと思います。  さて、現在社会では人生100年構想が議論されておりますが、大学においても社会人(市民)の 学び直しのシステム化が叫ばれています。岩手大学でも、市民講座やアグリフロンティア、 ものづくり岩手マイスター、防災リーダーなど、学び直し事業を展開しているところですが、 科学談話会については、有志が事務局を運営していること、また毎月講座を開催し、それが 900回にもなろうとしていることは、驚くべきことであります。自然科学、工学、芸術文化、 あるいは社会科学と幅広い分野において、専門家をお呼びし講義していることは、市民への 「科学」の啓蒙という意味で大きな役割を果たしています。  AIやIoT(Internet of Things)の活用により、第4次産業革命が起こると言われていますが、 ICT(Information Communication Technology)やAIは、私たちの生活様式そのものを大きく変え ようとしています。また岩手では、ILC(国際リニアコライダー)誘致に全力を挙げており、 物質の起源を探ることを通じて宇宙の誕生を知ることもできると科学的興味への期待が大きく なっております。また、巨大装置産業という側面においては、技術的波及効果も高いと言われて います。その一方で、科学技術の発展は、新製品がもたらす利便性などのプラス面だけでなく、 マイナス面の影響も危惧されており、東日本大震災による福島原発の事故は、国民の科学信奉を 打ち砕きました。科学技術の進展の受け入れには、市民の理解が必要で、そのためには社会科学的 考察や人文科学的な考察が不可欠です。  このような点で、科学懇話会の活動は、将来に渡って色失せることはなく、益々重要性を増す と考えております。これからも10年、20年と継続し、30年後には100年の歩みが出せることを祈念 しております。組織としての岩手大学も、応援していきたいと思います。

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